デイリークエスト
次の日。俺は今日もGoFにログインしていた。
昨日はまた対人戦するなんて予想外だったな。そのせいか妙に疲れて続ける気にならずにログアウトしたんだよな。
「さてと……」
今日はどうするかな。特に予定は無いし、普通に金策かレベルリングでもするか。俺1人でもできそうな依頼があるかチェックでもするかな。
そう思い冒険者ギルドへと足を運んだ。
クエスト掲示板の前に数人の人だかりできていた。よさそうなクエストが無いかチェックするために近づいていく。
クエストを確認しようと近づいた時だった。
「……あ! ガイ君!」
「ん?」
声がした方向を見ると、こっち向かって小走りしてくるサクラの姿があった。
「お。サクラか。奇遇だな」
「だね。私もさっきログインしたところなの! ガイ君が見えたからつい声かけちゃった」
近づいてきたサクラは俺のすぐ側で立ち止まった。
「ガイ君は何かしてたの?」
「いんや。俺もさっきログインしたばかりだ。特にやること無かったし、クエストでもやろうかなと思ってたところ」
「そうなんだ……昨日はごめんね。すぐに居なくなっちゃって……」
申し訳なさそうに頭を下げるサクラ。
だが目の前で前屈みになるもんだから、ついサクラの胸元に視線移ってしまう。
「い、いやいや! 気にしてないよ! リアル優先で構わないさ!」
「でも今日は用事全部済ませてきたし。昨日より長く居られると思うよ!」
「そ、そうか……」
いかんいかん。セクハラオヤジか俺は。
サクラの胸元は結構膨らんでいるからな。ゲーム内のアバターだと分かっていてもつい見てしまう。
男の悲しい性だな……
「と、とりあえずサクラは何かする予定はあるのか?」
「う、う~ん……。私はあまりこのゲームに詳しくないから何をしたらいいか分かんないかも……」
「ああそっか。サクラは新規だもんな。とは言っても俺も新規なんだけど」
ゲーマーとしてのノウハウはある程度あるつもりではあるが、このゲームの知識はほとんどない。純粋に楽しみたいから攻略サイトなどは見てないしな。
とはいえ、序盤のやることはだいたい決まっている。
「俺はクリアできそうなクエストを探していたんだが、サクラも一緒にくるか?」
「! うん! 私もガイ君と一緒にやりたい!」
「なら今日もパーティ組むか。俺としても助かるし、効率もいいだろうし捗るよ」
「一緒にがんばろうね!」
「おう」
そしてサクラとPTを組むことになった。
「とりあえずどのクエストやろうかな。何か希望はあるか? クエスト掲示板の中から選ぶといいよ」
「う~ん……」
クエスト掲示板を眺めてみるが、どれも似たような内容だった。サクラも一通り見回して悩んでいるが、なかなか決まらないようだった。
しかしサクラがある方向を指差して動きが止まった。
「ね、ねぇ。あれって昨日やったクエストじゃないかな?」
「へ? 昨日の? ビッグホーンの角集めるやつか?」
「そうそう。昨日と内容が一緒みたいだよ」
「マジで?」
俺も指差している方向を見ると、そこには確かにビッグホーンの角の収集と表記されていた。
間違いない。昨日俺達がクリアしたはずのクエストだ。
「本当だ。内容も全く一緒だ」
「ね? 一緒でしょ? もしかして何回もできるのかな?」
「ああそうか。もしかしたらデイリークエストかもしれん」
「でいりーくえすと? 何それ?」
「デイリーってのは――」
これはネトゲにはよくある仕様だ。
一日に受注できる回数が決まっているが、日付が変わると回数がリセットされる形式のクエストだ。
報酬がおいしいクエストだと何度もクリアされたら簡単に稼げてしまう。なので一日にクリアできる回数を設定しておく必要がある。
こうすることでバランス調整しやすくなるし、プレイヤーも稼ぎやすくなるのでモチベーションも保ちやすくなる。理想的な環境になると考えたんだろう。
まぁ本音を言えば、毎日ログインさせて人口を増やそうというのが運営の狙いなんだろうけどな。
これらの説明を掻い摘んでサクラに説明した。
「ってわけだ」
「へ~。そういうクエストがあるのね~」
「丁度いいや。またビッグホーン狩りに行かないか? 一度戦った相手だし、次は安定して狩れるかも」
「ガイ君がそういうならやってみようかな。少し自信が付いてきたし。もっと強くなりたいもん」
「んじゃ決まりだな。さっそくクエスト受けに行こうぜ」
「うん!」
クエストを受けるべく、サクラと共に冒険者ギルドへと入ろうとした時だった。
「……あれ? もしかしてガイっち?」
「え?」
声が聞こえた方向に向くと、離れた所にテレサが居るのを発見した。




