決闘モード②
剣を構えたバンバが俺達を睨む。
さっきまであった余裕そうな雰囲気が消えている。全力でやってくる気だろう。
「言っておくが、ワイには混乱は通用せぇへんで。その程度は対策済みや」
さすがに慣れてるだけあってそのくらいは耐性つけてくるか。
どれどれ……
「《コンフューズ》!」
バンバに向けてスキルを放ってみるが、効いた様子が無い。
「アホか! 通用しないと言ったばかりやろが! 甘く見過ぎやで!」
本当に耐性を付けているようだ。ハッタリじゃなかったんだな。
さてどうしようかな……
「ほんなら行くで! ソッコーでカタつけたる! 覚悟せえ!」
「……ッ!?」
バンバがテレサに向かってダッシュ。まずはテレサから倒す気か。
なら俺も手を尽くしてみるしかない。
頼む効いてくれ――
「《アースバインド》!」
「なっ――」
バンバの足がピタリと止まる。
よかった成功した。
「おお! ガイっちはそういうスキルもあったのね! やるじゃない!」
「これは初期スキルなんだけどね。習得しといてよかった」
もしかしたらこれも対策してたんじゃないかと心配してたが、普通に効いたみたいでよかった。
「ア……アースバインドやと……!? そんなスキルも習得してたんかい!」
「まぁな。これでお前は動けまい」
「……フン! 甘いで! アースバインドはあくまで移動のみ封じるスキル。行動まで封じることは出来んのや! この程度でワイに勝った気になったつもりか?」
するとバンバの手から剣が消える。
そしてすぐに現れたのは弓だった。
「遠距離攻撃手段なんていくらでもあるんや! ワイを舐めるなよ!」
なるほど。
どの様な状況にも対応できるように、様々な武器を備えているってわけか。
慣れてるだけあって用意周到なんだな。
「バカ女から仕留めようかと思ってたが止めや。お前のようなウザったい奴から先に潰したる! 食らえや!」
俺に矢を向けてくるバンバ。
だが甘い――
「なら……《ディスウェポン》!」
「!?」
バンバの手から弓が消えて素手状態になる。
「……ど、どういうこっちゃ!? 装備してた武器が消えたやと!? なぜ武器が装備できないんや!?」
「これで弓も使えなくなったな。さぁどうする?」
「い、今のスキルは何や!? 武器を解除させるスキルなんて聞いたことないで!」
ほう。バンバでも知らないスキルだったのか。
これは良いことを聞いた。
「くそっ……さっきからデバフばかり使いやがって……! おのれ……一体いくつデバフスキルあるんや……!?」
「さぁな。教える義理も無い」
さすがにバンバも全てのデバフ対策できなかったみたいだな。
まぁそういう相手に対処する為に、俺も複数のデバフを習得しているわけなんだけどな。
「すごいわねあんた……。デバフだけでここまで戦況変えるなんて……」
「こういうことが出来るからデバッファーは止められないんだよ。悪くないだろ?」
「そうね。ある意味斬新で面白そうに思えてきたわ。こういう戦い方もあるのね」
「でも攻撃スキルは無いし。ダメージを与えることは出来ないんだよ。そういうスタイルだからな。だから後は任せた」
「おっけー! あたしの出番ね!」
テレサが剣を構えなおし、バンバの元へと向かう。
「くっ……まさか武器すら封じられるとは予想外や……」
「ふふふ。随分と余裕が無さそうじゃない。これで形勢逆転ね」
「…………フンッ! 例え素手になってもやれることはある! 楽に倒せると思うなよ!」
「いいえ。もう終わりよ。次で終わらせてあげる」
「なんやと……!?」
テレサはそのまま歩き、バンバのすぐ近くまでやってきた。
そしてバンバに剣を向ける。
「あんたは勝算があったからこそ決闘モードの提案をしてきたんでしょ? 自信が相当ないと対人なんて挑まないだろうしね」
「だからどうしたんや!? 仮に一対一だったとしても、勝っていたのはワイに違いないで! あのデバフ野郎が居なかったらとっくに勝負付いてたはずなんや! デバフ野郎の存在が誤算だっただけや!」
「……やっぱりムカつくわ。最初から勝った気でいるのね。どうして決闘モードの提案をあっさり引き受けたのか不思議に思わなかったの?」
「なに……?」
てっきり感情に任せて勢いで引き受けたのかと思ってた。
まさかテレサは最初から……
「実はね。あんたが言わなかったら、あたしから決闘モードの提案をするつもりだったのよ。生産メインだけど戦えないとは言った覚えはないわよ」
「そ、それはどういう……」
「まだ分からないの? 勝算があったからこそ対人を引き受けたのよ。無謀な勝負を挑むほど馬鹿じゃないってことよ」
「……ッ!?」
へぇ。テレサなりにも考えがあったわけなんだな。
「あたしの誤算はメンバーが増えたことよ。さすがに複数相手に戦えるほど器用じゃないしね。でも今は違う。ガイっちが数を減らしてくれたお陰であんたに集中できる」
「だ、だが武器が無くても戦える! ワイを見くびるなよ!!」
「でも移動を封じられて攻撃を避けることは出来ない。ならとっておきのスキルで終わりにしてあげる」
そういって剣を構えてバンバに向ける。
そして――
「食らいなさい……《デッドリークラッシュ》!!」
剣がバンバの体に勢いよく突き刺さる。
その瞬間…………刺した剣が砕け散った。
「ぐはっ……」
バンバはその勢いで後ろに傾き、そのまま地面に倒れた。
「……!? ア、アホな……!? 一撃やと!?」
どうやらHPが0になって戦闘不能になったようだ。
「あ、ありえん……! ワイが一撃でやられるなんて……! 何をしたんや!?」
「ふふん。言ったでしょ? 勝算あるって。あんた1人だけだったらあたしだけでも勝てるのよ。甘く見たことを後悔しなさい!」
「く、くそぉ……このワイが……ワイが負けるなんて……! ちくしょう!」
こうしてテレサが無事に勝利を収め、決闘モードは終了した。




