決闘モード①
バンバは仲間の2人に振り向いて叫んだ。
「お前らはその雑魚を頼んだ。ワイはこのアホ女を仕留めたる!」
「おっけー。任せな」
「今回は楽に終わりそうだな」
バンバの側にいた男2人は離れ、俺の対面に移動した。
「お前まだ始めたばかりなんだってな? 運が悪いな。こんなことに巻き込まれたりして」
「安心しろよ。速攻で終わらせてやるからな。悪く思うなよ?」
「…………」
2人は剣を取り出して構えた。
俺も杖を取り出して攻撃に備える。
だが2人が仕掛ける前にバンバが動いてテレサに向かっていく。
「ほないくで! 覚悟しいや!」
「!」
バンバが剣がテレサを襲うが、直前でガード。
「くっ……」
「ほぉ。なかなかええ反応やないか! ならこれはどうや?」
そういって少し離れてた後、剣を構えなおす。
すると――
「《クロススラッシュ》!!」
「きゃっ……」
テレサは攻撃をいなし切れずにダメージを貰う。
奴は決闘モードを提案しただけあって、対人慣れしているな。動きに迷いがない。さすがにテレサが不利か……?
そんな光景を見ていた2人の男も笑っていた。
「ははっ。あの様子だとすぐに終わりそうだな」
「バンバはそれなり対人経験あるからな。素人とは動きが違ぇわ」
さて……俺も出来る限り頑張ってみるか……
「んじゃこっちも終わらせるか。どっちから行く?」
「おれにやらせろよ。この武器買ったばかりで試し切りしてみたいんだ」
「おっけー。なら頼んだ」
「おう……じゃあ行くぜ!」
片方の男が俺に向かって突っ込んでくる。
ならば――
「食らえ――」
「《コンフューズ》!!」
「なっ……!」
よしよし。混乱状態になったみたいだ。
「く……くそっ……! 混乱だと……!」
そしてもちろん混乱状態になったということは――
「隣に居る奴を攻撃しろ!」
「は? 一体何を……う、うわぁ! 体が勝手に動く!?」
男は向きを変えてもう1人の男の元へと歩いていく。
「お、おい! 何やってるんだ! こっちくんなよ!」
「ち、違う……体が勝手に動くんだ……! うわぁ!」
2人が近づくと同時に攻撃を開始。
「ば、馬鹿野郎! なんでおれを攻撃するんだよ!?」
「おれが操作してるんじゃない! 勝手に動くんだよ……! うわっ!」
「ぐっ……何だと……!?」
ほうほう。このスキルは対人でもしっかり効果があるみたいだ。
ならばもう1人もやっておくか。
「ほれ《コンフューズ》!」
「な……」
これで2人とも混乱状態になったわけだ。
こうなればやることは1つ。
「2人ともバンバを攻撃しろ」
「ふ、ふざけんな……! そんなことするわけが……うおっ!?」
「また体が勝手に……!」
2人はバンバに向かって歩き始めた。
「!? ア、アホか! 何しとるんや!? どうして混乱状態になってるんや!? 対人において厄介なデバフは対策するのが基本やろ!!」
「だ、だって……あんな奴がコンフューズを習得してるとは思って無くて……」
「それに混乱対策とかあまりしたことないし……うわぁ!」
「くっ……!」
2人ともバンバに近寄ると同時に攻撃。バンバは防いだ後にその場から離れた。
そんな光景にテレサも困惑しているようだ。
「え? え? 何が起きたの? どうして仲間同士で攻撃し合ってるの!?」
「スキルで混乱状態にしたんだよ。どうやらプレイヤーに使うと自由に動けなくるみたいだな」
「へ? ま、まさかガイっちがやったの!? あれを!?」
「まぁな」
「おー! ガイっちやるぅ!!」
しかし2人はバンバを攻撃しているが、バンバ自身にはダメージが通ってないみたいだ。
「くそっ……ウザったい! ワイの邪魔すんなや!」
「ぐあっ……」
「ひぃ……」
バンバは迷うことなく仲間を攻撃してるな。仲間のHPがどんどん削れていく。
しかも手加減してる様子もない。一応は味方に対してよくあんなこと出来るもんだ。
「チッ……役立たず共が! もうええ! ワイ1人で十分や! お前らは眠っとけ!」
「な、何ッ!?」
「お、おい……まさか……」
バンバは剣を構えて2人に狙いを定める。
そして……
「《インパクトスラッシャー》!!」
「「!? ぎゃああああ!」」
2人に激しい衝撃が走り勢いよく吹っ飛んでしまった。地面に倒れた2人は起き上がることなく、HPが0になったみたいだ。
同士討ちである程度HPが削れていたとはいえ、2人まとめて倒すとはな……
「フンッ……ボケが。対人を甘く見るからこうなるんや。ほんま役に立たん奴らやで」
相手は自由に動けなかったとはいえ、こうもあっさり倒すとは……
「まぁええわ。ここからはワイだけでやったる」
バンバが鋭い目つきで俺達を睨んでくる。
「元からワイ1人でも十分だったんや。あいつらを呼んだのは少しでも早く終わらせたかっただけや。格下相手にいちいちまともに戦ってたら疲れるだけやからな。でもこうなった以上は本気で相手したる。茶番は終わりや」
そしてバンバは持っている剣を俺達に向けてきた。




