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トレードシステムの落とし穴

 少し考えた後、テレサに向かって今回のトラブルについて聞いてみた。


「テレサは高性能なアビリティの付いた武器が欲しかったと。でもトレード後、実際に手に入れた武器には違うアビリティが付いていた。そういうことか?」

「そうよ……というかよくそこまで分かったわね。自分でも説明しきれてなかったと思ってたのに」

「まぁな」


 やっぱりそうか。

 これはトレードシステムを過信してしまったが故のトラブルのようだ。


「ということは……お前が悪いんじゃねーのか? えーと……」

「ワイはバンバっちゅーもんや。前からよんでも後ろからよんでも一緒やで!」

「それはどうでもいい。バンバとやら。お前がすり替えたんじゃないのか?」

「せやからちゃうで。ワイがそんなことした証拠はどこにあるねん。そんな詐欺みたいなことするわけないやろ」


 ニヤつきながら言い放つバンバ。

 ぶっちゃけすげー胡散臭い。


「仮にワイがすり替えたとしよか。しっかり確認してなかった相手が悪いんちゃうか? なんでワイだけ攻められなければあかんねん」


 いやいや。それ認めてるようなもんだろ。


「~~~! こいつムカつくわ! やっぱりすり替えてたんじゃないの!」

「何度も言わすな。証拠はどこにあるんや?」

「…………!」


 つまりはこうだ。

 バンバはトレード画面に相手に売る予定の武器を表示させていた。それをテレサも確認したから買う気になったんだろう。

 しかしトレードボタンを押す前に、何らかの方法でテレサの気を反らしたんだろう。その隙に別の武器と入れ替えた。だからトレード後にはテレサには別の武器が渡ってしまった。

 というのが今回のトラブルみたいだ。


 じゃあなぜトレードする直前になってもテレサは気づかなかったのか。

 それはアビリティシステムに原因がある。


 恐らく間違っていないはずだ。


「テレサはどんなアビリティのついた武器を受け取ったんだ?」

「これよ! こんなのあたしは欲しくないわよ!」


 テレサが表示してくれた武器はこうなっていた。


 ――――――――――――――――

【武器】ラッキーダガー

 ATK:50


 ・STR+5


 制作者:アル

 ――――――――――――――――


「ふ~ん。普通の武器だな。確かにこの程度ならよくありそうだ」

「でしょ? でもさっき見た時はもっとすごいアビリティがついていたのよ!」

「そんなにか?」

「だってレアドロップ率が上がるアビリティが付いてたのよ! 絶対欲しいわよ!」

「へぇ。確かにそれは手に入れたいな」


 昨日もテレサとトレードシステムを利用したことがあった。

 その時は深く考えていなかったが、トレード画面ではアイテムの詳細を表示していなかったのだ。

 それが今回のトラブルを生んでしまったんだろう。


 つまりだ。

 最初にバンバはテレサが欲しがっていた武器を提示していたんだろう。しかし表示上では『ラッキーダガー』としか確認できない。だからテレサは詳細を確認して本物であると安心してしまったんだ。

 しかし別のアビリティが付与された物とすり替えても表示上は『ラッキーダガー』のままである。


 同じ武器名だったからこそ、違うアビリティの物と変わっていたことに気づかなかった。

 それで言い争いなってしまったんだ。


 これが今回の全てだろう。


「はぁ~……アホらし。もう時間無駄やで。いい加減諦めろや」

「だったらせめてお金返しなさいよ! あたしもこんな物返すからさ!」

「もう交渉は成立した後や。今さら返せって言われても困るわ」

「だから! あたしは納得してないっての! そっちこそいい加減諦めなさいよ!」


 これは平行線だな。

 仮にバンバが悪いとしても、それを証明する術がない。確認不足と言われたらそれまでだしな。

 さすがにテレサに分が悪いか……


「だったらこうしよか。〝決闘モード〟でケリをつけるっちゅーのはどうや?」

「望むところよ! その腐った根性を叩きなおしてやるわ!」

「ほう。ええ度胸や。決まりやな!」


 また新しいワードが出てきたな。


「決闘モード? 何それ?」

「ああそっか。ガイっちはまだ知らないんだっけ。えとね……」


 テレサは決闘モードについて詳しく説明してくれた。

 要約すると、物を賭けることが出来る決闘システムみたいなもんだ。


 普通にPKしただけは相手を倒しても何も得られない。せいぜい嫌がせぐらいだ。

 しかし決闘モードの場合、始める前にお互いにアイテムや金を提示して賭けることができる。

 そして勝ったプレイヤーが賭けた物を全て受け取れる……というシステムらしい。


「そっちが勝てば全額返金。それでええか?」

「それだけじゃないわ。あたしが欲しかったやつも賭けて貰おうじゃないの!」

「…………だったらそっちは何を賭けるんや? 仮にワイが勝っても何も無しとかアホらしくてやってられへんで」

「な、何言ってるのよ! 元々はあんたが騙したのが悪いんじゃないの! あたしが賭ける物なんて無いわ!」

「ええ加減にせーや。そっちの我がままに付き合うこっちの身になってみろや。ワイはこのまま帰ってもええんやで? それをわざわざこうやって相手してやってるんや。こんな何の得にもならんことに時間を割きたくないのは分かるやろ? ならせめて勝った時ぐらい得になることがあってもええやんか」

「うぐっ……」


 微妙に論点ずらされた気がするが、一概に間違っているとは言えない。

 やはり現状はテレサが不利なのは変わりないのだ。それならある程度のリスクを負うのはやむを得ない。


「だ、だったら……購入金額分……20万を賭けてやるわ! それでいいでしょ?」

「もう少し足して欲しかったが……まぁええやろ。それで受けてやるわ」

「決まりね! 覚悟しなさい! その腐った根性叩きなおしてやるわ!!」

「フンッ。返り討ちにしてやるわ。威勢だけでワイに勝てると思うなよ?」


 まさかこうなるとはな。

 さてどうなることやら……

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