トラブルに遭遇
あれからクエスト掲示板を眺め続け、結局収集系の依頼を請け負うことにした。
討伐系も出来ないことは無いと思うが、ここは安全にいきたかった。それに色々なクエストをこなすのも楽しいしね。
というわけで街から出て外に出ようかと歩いていると、門の外から何やら声が聞こえてきた。
「だから! アンタが取り替えたんでしょ!? 最初に確認したもん!」
「そないなことしてへんわ。それとも証拠でもあるんか?」
「だったら何で違う武器になってるのよ!? そっちがすり替えたに違いないわ!」
「アホらし。ワイがそんなことするわけないやろ。妄想も大概にしとけや」
何だろう。2人が何かを言い争っているようだ。
気になって声がする方向に向かって近づいてみることに。
「じゃあどうして違う武器になってるのよ! すり替えたとしか思えないわ!」
「そっちの確認不足やないか。そんなことワイに聞かれても困るわ」
「こんなのあたしが欲しいわけないじゃない! この程度のアビリティしかないのに20万で買うわけないわ!」
「知らんがな。今さらそんなこと言われてもワイには関係あらへんわ」
「うー……こんなの詐欺だわ!!」
どっかで聞いた声だと思ってたら……
片方に居る女の子はテレサじゃないか。昨日出会ったばかりだからよく覚えてる。
だがもう片方に居る男は知らない奴だ。
テレサは男に向かってやたら怒っている様子。一体何があったんだろう。
気になるし見てみるか。
「よっ。そんなに怒鳴ってどうしたんだ?」
「……! あっ! ガイっち!」
「なんや? 知り合いか?」
「丁度良かったわ! こいつ詐欺師よ! 注意して!」
「おいおい。自分のミスを棚に上げて詐欺師扱いは酷いで。傷つくわ」
「白々しいわよ! やってることは完全に詐欺じゃない!」
うーん。イマイチ話が見えてこない。
テレサは相手の事をやたら詐欺師扱いしてるし。あの男が何かやらかしたんだろうか。
「とりあえず説明してくれないか。俺は今来たばかりで事情を知らないんだ」
「そ、そうだったわね。一から説明するわね」
一呼吸おいてからテレサは続けて話す。
「あたしはとある武器が安く売ってくれる人を見つけたのよ。それで実際に見てみたら本当に欲しい性能してたから買おうとしたの。でもトレードした後に確認してみたら違う武器だったのよ!」
「だったらテレサの見間違えなんじゃないのか? トレード画面でトレードしたんだろ?」
このゲームのトレードシステムは他でもあるよくある仕様だ。
まず『トレード画面』を出してそこにお互いがトレードするアイテム、もしくは金を選んで乗せる。
この状態ならトレードしたい物がお互いが確認できるようになっている。それでお互いに納得したらトレードボタンを押す。これでトレード成立というわけだ。
これなら不正とかし難いし、安全に交換できる。
だからこそテレサがなぜ納得していないのかが不思議なのだ。
「いいや! トレード前にちゃんと確認したもん! 間違いなくあたしが欲しいやつだった!」
「でも実際は違っていたと? ありえないだろ。バグでも無い限り、アイテムが急に変化するなんて無いはずだ」
「きっとこいつがトレード直前ですり替えたのよ! そうとしか考えられないわ!」
テレサがビシッっと目の前の男を指さす。
「カンニンしてや。せやからワイがいつそんなことしたんや? 証拠でもあるんか?」
「じゃあ何でアビリティが全然違ってるのよ! こんなしょぼい武器だったら最初から買わないわよ!!」
「そんなの知らんわ。自分で選んだんやろ。ワイの責任やないで」
「だから! こんなアビリティの武器なんて最初から欲しくないんだってば!!」
…………
あー、何となーくだけど事情が読めてきたぞ。
昨日テレサに教えて貰ったアビリティシステムが鍵のようだ。
これはもしかして……




