ビッグホーン狩り2
「やぁ!」
サクラがトドメを刺し、ビッグホーンが倒れる。
もう慣れてきたみたいで、3体目ともなると戦闘時間も短くなっていた。
「あっ。レベルが上がったみたい」
「おめでとう。これでまた強くなったな」
「ありがとー」
まだ3体目なのにもうレベルアップするとはな。
ビッグホーンはそれなり経験値が美味いらしい。
「でも、角落とさなかったねー」
「しゃーない。こればかりは運が必要だからな」
そうなんだよな。ビッグホーンの角は確率でドロップするアイテムだしな。
だから5個集めるにはそれなりの討伐が必要になる。
これがこのクエストのいやらしいところ。
目的の収集アイテムを手に入れるには運が必要なのだ。
運が良ければ最低限倒せば揃うし、運が悪ければ100体倒しても揃わないかもしれない。
けどまだ3体目だ。そこまで悲観することはないはず。
「次のやつ探すか」
「あ、向こうにいるよ」
「お、ついてるな。んじゃ頼む」
「任せて!」
サクラが呼びせ、俺がデバフをかける。こうしたやり方で次々と狩りを続けた。
が、5体目を倒しても目的のアイテムはドロップしなかった。
「んー。またドロップ無しか」
「出ないねー」
「まーこればかりは数こなすしかない」
幸いなことにもビッグホーン自体は簡単に見つけられるし、時間を掛けずに次の目標にいくことができた。
その後もビッグホーンを狩り続け、なんとかビッグホーンの角を5個ゲットすることができた。
「よしこれで5個目ゲット」
「やったー! これで達成だね!」
「うん。これもサクラのお陰だよ」
「そ、そうかな? えへへ……」
まんざらでもない様子。割とこういうのには弱いのかもしれない。
「マジだって。俺一人では達成するのは厳しかっただろうしな。ここまですんなり達成できたのはサクラが居たからだよ」
「私もガイ君が居なかったら倒せなかったと思うよ。だからお互い様だね!」
「そうだな」
自分の苦手な部分を仲間に任せて協力しあう。これこそPTプレイって感じだな。
MMOの醍醐味でもある。
「とありえず目標の数まで集まったし。ギルドに戻ろうか」
「うん!」
その後は街に戻り、冒険者ギルドへと足を運んだ。
受付カウンターに移動して、NPCの女性職員に報告した。
「依頼のアイテム集めてきましたよ」
「ありがとうございます。では確認しますね」
俺がアイテムを渡すと、職員はそれらを見定め始めた。
「…………確かに依頼のアイテムが5個で間違いないですね。これで依頼達成です。報酬の13000Gお渡しますね。どうぞお受け取り下さい」
「どうも」
こんな感じで依頼をこなしていけば金策になるな。しばらくはこれで稼ごうかな。
あとはこれを……
「んじゃサクラにも渡すね。13000G貰えたから半分の6500でいいかな?」
「え? 貰っていいの?」
「当たり前だろう。2人で一緒にクリアしたんだから、報酬を山分けするのは当然だと思うんだが」
「私はガイ君のお手伝いしただけなんだけど……」
「だから手伝ってくれたから達成できたわけだし。報酬を渡すぐらいするよ。さすがに独り占めするほど外道じゃないって」
「そ、そうなのかな……?」
どうもサクラは自己評価が低い傾向にあるな。
これも最初に遭遇してしまったレンジって野郎の影響もあるだろうな。あいつみたいなプレイヤーのせいで真っ当な人が辞めていくんだろうな。
こればかりは時間を掛けて直していくしかない。
「とりあえず受け取っておけって。サクラも色々と買いたい物があるだろうし。今のうちに貯めておけって」
「……そ、そうだね。じゃあ貰うね。ありがとう!」
サクラは笑顔になって受け取ってくれた。
「よし。んじゃあ次はまた別の依頼を受けてみるか? この調子なら討伐系もいけそうだしな」
「私でも倒せそうな依頼はあるかな~?」
「そうだな……」
クエスト掲示板がある場所に移動して眺めている時だった。
サクラが何かを思い出したかのような声を出したのだ。
「……あっ! いけない! 買い物するの忘れてた!」
「ん? どうした急に?」
「冷蔵庫の中が少なくなってて買い物しようと思ってたのにすっかり忘れてたの! そういえば今夜のごはんもまだ用意してなかった!」
「そ、そうか。それは大変だな」
「ご、ごめんね! 今日はここで終わるね! 本当にごめんね!」
「いやいや。リアル優先でいいよ。そういう事情なら仕方ない」
申し訳なさそうに頭を下げてくるサクラ。
そこまでしなくてもいいのに。
「じゃあまたね! 今日はありがと!」
「おう。またな!」
そしてサクラはログアウトして姿が消えていった。
残された俺はクエスト掲示板を眺めつつ、俺一人でもこなせそうな依頼を探すことにした。




