不人気なデバッファー
さて。どうしようか。
武器は手に入ったが、その他の装備が乏しい。
それに金も無いしな。そろそろ金策せねば。
そんなことを考えつつ、街中を散策することに。
しばらく歩いていると広場に出た。人通りが多く、様々なプレイヤーが行き交っている。
辺りを見回してみると、とある場所で人だかりが出来ているのを見つけた。
なんとくなく近づいてみると、皆はとある巨大な掲示板の前に立っているようだった。
掲示板には色々な紙が張り付けてある。
「んーと……なになに」
紙には指定のアイテムを集めろとか、モンスターの討伐依頼とかが乗っていた。
なるほど。ここで色々なクエストが受けられるみたいだ。
どうりで色んなプレイヤーがPT募集を叫んでいるはずだ。
「ヒーラーの方募集! 一緒に北のダンジョン行きませんかー?」
「火力に自信のある人! アイアンゴーレム討伐しないかー!?」
「北の町まで護衛してくれる人いませんかー?」
こんな感じで、PT募集をしている人達が沢山見かける。
クエストを受けれる場所で人が集まりやすいからか、こういう所で人集めをするんだろう。
ふーむ。俺もどこかのPTに参加してみようかな。
正直言って、今の俺はソロがきついんだよな。
まぁ、完全にデバフ特化してるわけだし。仕方ないんだけどね。
けどPTならそれなり活躍できる……はず。
とりあえず、どこか良さそうなところに入ってみようかな。
「西の森に行く人募集ー。レベル10ぐらいの人でレベル上げしようぜー!」
おっ。よさそうな募集があったな。
俺はレベル8だから、条件には合うはずだ。
あそこのPTに入ってみることにしょう。
「すいませーん。今はレベル8なんだけど、俺でも入れるかな?」
「ん? おっけーだぜ。レベル10ってのはあくまで目安だからな。PTなら少し低くてもなんとかなるよ」
「よかった」
「んで、あんたはどんな戦闘スタイルなんだ? 事前に知ったほうが連携とりやすいから知っておきたいんだ」
「えっと、俺はデバッファーを目指しているんだけど」
「……何?」
相手がキョトンとした表情で固まった。
「んーと……それって、デバフをメインに使うってことでいいのかな?」
「そんな感じ」
「じゃあ攻撃スキルはどんなのがあるの?」
「いや。攻撃スキルは全く取ってないんだ」
「……えっ」
さらに困惑した表情になっていく。
「ってことは……通常攻撃だけで戦うってこと?」
「STRもほぼ初期値だし。攻撃してもダメージはほとんど無いと思う。というかダメージを与える手段は無いかな。だからデバフしか使わないつもり」
「…………」
さすがに予想外だったのか、相手は考え込んで黙ってしまった。
「う、うーん。悪いけど、うちらのPTだと合わないと思うんだよな……」
「やっぱり厳しいかな?」
「このPTはレベリング目的で募集してるからね。雑魚モンスターを多くかって経験値稼ぐことが目的なんだよ」
「なるほど」
「ボスクラスの相手ならともかく、雑魚モンスターにデバフかけてる暇は無いと思うよ。そんなことしなくてもすぐ倒せるし」
まだ序盤だし。そういうやり方のが効率いいのは間違いない。
デバフかけるぐらいなら、バフして殴ったほうが早いだろうしな。
「だから……その、なんというか、他のPTに行った方がいいと思う」
「そうか。希望にそえなくてすまなかった」
「い、いやいや。こっちこそ悪いな。他にも募集してるPTもあるし、一つぐらいは入れるPTがあると思うよ」
「そうしてみるよ」
やはり『お祈り』されてしまったか。
仕方ない。なんとなく予想できたことだ。
この後に他の募集に参加しようとしてみたが、さっきと似たような反応をされて『お祈り』されてしまった。
やっぱりというか、今はまだデバッファーの需要が無いらしいな。
まぁ、こうなることが分かってて選んだ道だ。今さらプレイスタイルを変える気は無い。
仕方ない。俺でも出来そうなクエストでも探すことにしよう。




