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不人気と言われようともデバッファーを極める ~攻撃スキルが無くても戦えます~  作者: 功刀


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設定ミス

 声がした方を見ると、ポニーテールの少女が頭を抱えていた。


「うわあああああん! 既に買われちゃってるぅぅぅぅぅ!」


 何なんだあの子は。

 やたら叫んでいるけど……


「うう……あのバスターソードは渾身の出来だったのにぃ……。もっとよく見てから設定すればよかったよぉ……」


 バスターソード?

 俺が今買った武器じゃないか。


 …………


 ……なんとなーく読めてきたぞ。

 予想が正しければあの子は多分……


「あの、ちょっといいか?」

「……?」


 悲しそうにうなだれているポニテ少女に近づく。


「ここでバスターソードを0G(ゴルド)で出品してたんだけど、もしかして君が販売してたの?」

「!! ま、まさか……バスターソードを買った人って……!?」

「うん。俺が買った」


 0G(ゴルド)だったから〝買った〟という表現は違うかもしれないけど。


「そ、そうなんだ……」

「やっぱり君が販売してたのね」

「あ、あのさ。ちょーっと頼みがあるんだけど……いいかな?」

「頼み?」


 何を言いたいのかは予想できるけど。


「出来ればでいいんだけどさ……その……バスターソードをさ……か、返して欲しいなーって……」

「いいよ」

「すごーく無茶な頼みごとをしているってのは分かるんだけどさ……今のあたしは金欠気味でさ……あれが売れたらかなり助かるというか――って、えっ?」

「ん?」


 キョトンとした顔をこっちを見つめている。


「い、今なんて言ったの?」

「だから。いいよって」

「…………ほ、本当に?」

「うん」

「本当の本当に?」

「本当だってば」

「…………」

「…………」


 今度どうしたんだ。

 固まったぞ。


「う、ううう……」

「お、おい?」

「あ、ありがとぉぉぉぉぉ!」

「うおっ」


 いきなり泣き出した。

 表情がコロコロ変わる子だなぁ。


「と、とりあえず返すからさ。トレード画面出してよ」

「う、うん。分かった」


 メニューからトレードを選び、そこでさっき買ったバスターソードを選択。

 これで無事に返却することが出来た。


「……うん。間違いなくあたしの作ったやつだ」

「作った? 君が?」

「そだよー」


 たしか製作者のところに〝テレサ〟って表示してあったな。

 ってことはつまり……


「もしかして、君がテレサ?」

「うん。あたしはテレサっていうの。よければそっちの名前も教えてくれない?」

「俺はガイってんだ」

「ガイ……ね。改めてお礼言うね。本当にありがとう!」


 そういってペコリと頭を下げた。


「いやいや。気にしなくてもいいよ」

「最初に見つけたのが貴方じゃなかったら、二度と戻ってこなかったかもしれないし。貴方っていい人なんだね!」

「べ、別にそういうことじゃないよ」


 俺が使わない武器だったから手に入れても仕方ないし……なんて思っていたことは黙っておこう。


「そ、それよりも、なんで0G(ゴルド)で出品してたの? あんなのタダで配ってるようなもんじゃん」

「べ、別にタダにするつもりは無かったのよ! ただね……」

「ただ?」

「…………忘れちゃったの」

「忘れた? 何が?」

「その……値段設定するのが……」

「…………?」


 言ってることがイマイチ分かりにくい。

 というか露店のシステム自体、まだ知らないからな。


「すまん。まだこのゲーム始めたばかりなんだ。分かりやすく教えてくれないか?」

「あー、新規の人だったのね。了解。じゃあ露店のついて簡単に説明するね」


 コホンを咳をしてから続けて話す。


「えっとね。店を持ってない人はね、露店でアイテムを販売するのよ。そんでね、露店には二つの方法があるの」

「二つ? 他にもやり方があるのか?」

「うん。一つ目は『自分で販売』する方法。これは、その場に自分が居座って販売するの」


 なるほど。

 周りにはプレイヤー達が道端で居座っているのが、その方法なんだな。


「そして二つ目はね『委託販売システム』を使う方法なの」

「委託販売……?」

「これはね、出品したいアイテムを予め決めておいて、それをNPCが代行して販売してくれるの」

「へぇ~。便利なシステムなんだな」

「この方法なら、自分がその場に居なくてもアイテムを販売することが出来るんだよ!」


 ああそうか。

 一つの方法だと、自分が直接やり取りをしなくてはならない。

 つまり、その場から離れることが出来なくなるわけだ。


 そこで登場したのが二つ目の委託販売。

 これならば販売を代行してくれるから、自由に行動することが出来るってわけだ。


「でもね、委託販売だと毎回手数料が掛かるのよ」

「ほうほう。代行してるわけだしね。そりゃ仕方ないんじゃないの」

「まぁね。例え何一つ売れなくても、手数料だけはきっちり取られるのよ」


 そういうことか。

 自分で販売すれば、不自由になる代わりに手数料が要らない。

 委託販売の場合、自由になれるが手数料が掛かる。

 二つのメリット、デメリットをあげるとこんな感じか。


「あたしの場合は委託販売にしたのよ。他にもやりたいことがあったからね」

「それと0G(ゴルド)にした理由と何か関係が?」

「委託販売だとね、最初に売りたいアイテムと、値段を設定する必要があるの」

「まぁ代行するわけだから必要だわな」

「でね……その時に……うっかりね……設定し忘れたのよ……」

「…………ああ。なるほど」


 言いたいことが分かってきた。


「あのバスターソードはなかなかいい性能だったからさ。値段をどうしようか悩んでたのよ」

「たしかに強そうだったもんな」

「それでね。値段を考えるのを後回しにして、他のアイテムを並べていったのよ」

「そんで他のことに気が散って、値段を付けるのを忘れた……と」

「うう……」


 なるほどね。ようやく納得した。


 つまりこうだ。

 テレサは目玉商品であるバスターソードの値段に悩んでいた。けど値段を設定するのを忘れて、そのまま出品してしまった。

 値段を設定しないと、0G(ゴルド)のままになる仕様らしい。

 だから一つだけ0G(ゴルド)になってしまったのか。

 これが今回の経緯というわけだ。


 なんというか、うっかりというか、ドジッ子というか……


「貴方のお蔭で本当に助かったよ~。大赤字になるところだったし……」

「ちなみにだけど、いくらで販売する予定だったの?」

「ん~とね。50万G(ゴルド)ぐらいにしようかと思ってたの」


 つまり50万くらいの価値はあったのか。


「そりゃ大金だな……」

「でしょ? だから感謝してるのよ」

「ま、これからは気を付けてな」

「うん。いやぁ、今日はついてるわねー! あっはっは!」


 笑いごとじゃないと思うんだけどなぁ……

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