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不人気と言われようともデバッファーを極める ~攻撃スキルが無くても戦えます~  作者: 功刀


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初の対人戦

「あ、あの……ガイ君!」

「ん? どうした?」


 サクラが心配そうな表情で近寄ってきた。


「ガイ君が戦うことになったのは私のせいだよね……? ごめんね……私がゲーム下手だからこうなったんだよね……」

「いんや。関係ないよ。サクラのせいじゃないって」

「で、でも……」

「安心しろ。俺自身、あいつにムカついているんだから」


 離れた所には、頭に血管が浮いてそうなレンジが剣を構えている。


「おいおい。なかなか余裕そうじゃねーか。まさかバカ女も一緒に戦うなんて言い出すつもりじゃねーよな?」

「んなつもりはねーよ。お前の相手は俺だけだっての。だからサクラには手を出すなよ?」

「ハッ! ああいいぜ。戦ってる最中は手を出さないでやるよ」


 よかった。

 これでサクラには被害が及ばない。


「でもよ。勝負が終わった後のことは好きにしていいんだよな?」

「……ああ。そこまで細かいことは言わんさ」

「へへっ。話が分かるじゃねーか」


 つまり、俺を倒した後でサクラもPKするつもりなんだろう。

 やっぱりタイマン勝負に持ち込んでよかった。

 どっちみち、何もしなければこいつにPKされるんだ。

 ならば、少しでも抵抗したほうがマシだ。


「ご、ごめんね。私のせいでガイ君まで巻き込んじゃって……」

「気に病むことは無いよ。俺が望んで対決を望んだわけだしな。だからサクラのせいじゃないって」

「で、でも……」

「ま、今はあいつを何とかするのが先だ。サクラは離れててくれないか」

「う、うん。頑張ってね……!」

「おう」


 言い終わると、サクラは離れた場所に移動した。


「待たせたな。さっさと始めようか」

「ハッ! 余裕たっぷりだな。本当にオレに勝てるとでも思ってるのか?」

「さぁな」

「ふん。見え張りやがって。ならいいことを教えてやるよ」

「いいこと?」


 どうせロクでもないことなんだろうな。


「オレはな。リアルでは剣道を習ってるんだ。大会では準優勝したこともあるだぜ?」

「へぇ。すごいじゃん。で? それがこの状況と何の関係があるんだ?」

「まだ分からねーのか? お前とオレには、それだけ絶望的な差があるってことだよ!」


 ふむ。

 要するに、剣の使いには慣れていると言いたいわけか。

 別にこいつのリアルの情報なんて興味無いんだけどな。


PS(プレイヤースキル)の差ってやつを教えてやるよ……!」


 レンジはそう言い放った後、剣道でよく見るようなポーズで剣を構えた。


 なるほど。

 確かに様になってるな。

 剣道の腕があるってのも嘘じゃなさそうだ。


「オラァ! いくぜ!」


 レンジが俺に向かって走り出す。


 さて……

 ここからだな……


「死にやがれ!!」


 イノシシのように突進してくるレンジに向かって、スキルを発動させる。


「《アースバインド》!!」

「なっ……!」


 するとレンジは移動を封じられ、ピタリと止まった。


「糞がっ! アースバインドなんて覚えてやがったのか!?」

「まぁな」

「雑魚の分際でうぜぇことしやがって!」


 これでレンジは移動出来なくなった。

 とりあえず効いて一安心。


「そうか。テメェは後衛タイプか。ってことは相手を動けなくしてから、遠くからチマチマ攻撃するつもりなんだな?」

「…………」

「ケケケッ。雑魚が考えそうなことだ。けどな。オレには通用しねーよ!」

「ふーん?」

「残念だったな! 例え弓矢だろうが、攻撃スキルだろうが、全て叩き切ってやんよ! そのくらいオレにとっては朝飯前なんだよ!」 


 すごい自信だな。

 恐らく普通に戦えば、苦戦する相手かもしれないな。


 だが……



 俺には無意味だ。



「そうか。なら別の奴と戦ってもらおうか」

「あん? どういう意味だ?」


 辺りを見回して目的のモンスターを探す。


 ……おっ居た居た。

 少し離れた所にゴブリンがうろついている。


「よし。《コンフューズ》!!」

『ギャッ!?』

「ゴブリンよ。あのレンジって奴を攻撃しろ」

『ギャッギャッ!』


 《コンフューズ》によって混乱状態になったゴブリンは、レンジの元に一直線に向かって行った。


「んなっ……モンスターを操るだと……!?」

『ギャッ! ギャッ!』

「糞っ……」


 ゴブリンはレンジを攻撃し始める。

 移動を封じられているレンジは避けることも出来ず、剣で攻撃を防いでいる。


「ハ、ハハハ! こいつは驚いたぜ。まさかモンスターを操るスキルを持っているとは思ってなかったぜ」

「…………」

「だがな。相手が悪かったな。ゴブリン程度なら余裕で倒せるんだよォ!」


 だろうな。

 こいつにとってゴブリンぐらいなら、瞬殺できるだろう。


 だが――


「じゃあこれでどうだ。《ディスウェポン》!!」

「んなっ……!」


 レンジの持っていた剣が消え、素手状態になる。


「な、なんだ!? どうなってやがる!? なぜ剣が装備できなくなったんだ!?」

「どうした? ゴブリン程度なら余裕なんだろう?」

「……糞がぁぁぁぁぁ! テメェの仕業かぁぁぁ!」


 《ディスウェポン》は武器を強制解除させると同時に、一定時間の間、武器が装備できなくなるからな。

 これでしばらくの間、素手で戦わなくてはならない状況になったわけだ。


 けど素手になりながらも、頑張ってゴブリンの攻撃を防いでいるな。

 さすがに1匹だけでは辛いか。

 なら……


「お、居た居た。《コンフューズ》!!」

『グギャッ!?』


 離れていた別のゴブリンも混乱状態にさせ、レンジに攻撃させる。


「ほらよ。追加だ」

「ちょ……ふざけんなテメェ!」

「えーと……おっ。まだ居たか。《コンフューズ》っと」


 さらに別のゴブリンにも混乱をかけ、レンジを攻撃し始める。

 これでレンジの周りには3匹のゴブリンが囲む光景となっている。


「ふむ。3匹に囲まれてモテモテじゃないか。よかったな」

「糞があああああああああああああ! うぜええええええええええええええええ!」

「叫ぶほど喜ぶとは嬉しいねぇ」

「テメェェェ! ぜってぇ殺してやる!!!!」


 ふむ。

 さすがにゴブリン3匹相手に、素手で戦うのは辛いと見える。


「ちくしょう……ゴブリンの分際で……舐めやがって!」


 おっと忘れてた。

 これも追加しないとな。


「《アーマーダウン》っと。ついでに《ポイズン》」

「んなっ……」


 これでレンジの防御力は下げられ、毒状態になった。


「テメェ! 卑怯だぞ! デバフばかり使いやがって! 正々堂々戦いやがれ!!」

「何を言う。これが俺の戦い方だ。文句があるならそのくらい自力でなんとかしたらどうだ?」

「ぐぬぬ……」


 そんなことを言い合ってると、突然レンジの手に剣が出現した。


「おっ……装備できた」


 あー。 ディスウェポンの効果が切れたのか。


「あっひゃっひゃ! ざまぁみろ! デバフなんかに頼るからこうなるんだ! これで形勢逆転だぜ! 武器さえあればゴブリンなんぞ――」

「んじゃ《ディスウェポン》っと」

「なっ……」


 再びレンジの手元から剣が消える。


「…………………………」

「まるで全財産を失ったみたいな表情してどうした? 再びスキルを使っただけなんだが?」

「…………………………」

「ゴブリンの攻撃防がなくてもいいのか? さっきから殴られ放題じゃないか」

「……………………ち」

「ち?」

「………………………………ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ヤケになりながらも素手でゴブリンを殴ってやがる。

 けど時間の問題だろうな。


 今のレンジは移動を封じられ。

 武器が装備できず。

 ゴブリン3匹に囲まれ。

 《アーマーダウン》によって防御力を下げられて被ダメージが加速し。

 さらに毒状態でじわじわとHPを削られる。


 うーむ。改めて見ると酷い状況だな。

 ま、全部俺がやったんだけどね!


「糞っ……糞っ……糞っ……糞っ……糞がっ!」


 そろそろやばそうだ。

 さすがにHPも持たないか。


「糞があああああああああああああああ!」


 そう叫んだ後、ゴブリンの攻撃によって倒れた。


 やーっと終わったか。

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― 新着の感想 ―
武器装備不可が効果時間とクールタイム一緒なのぶっ壊れスキルにも程がある
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