サクラのスキル
「やぁ!」
サクラがゴブリンにトドメを刺す。
ゴブリンは倒れると消滅し、ドロップ品だけがその場に残った。
「ふぅ。やっと倒せたぁ~」
「お疲れ。だいぶ慣れてきたんじゃないか?」
「そ、そうかな?」
今倒したゴブリンには《アースバインド》も《ディスウエポン》も使っていない。
俺が使ったのは《アーマーダウン》だけだ。
つまり、サクラはほぼ自力で倒したわけだ。
「最初は《アースバインド》で動けなくしてたけど、途中から無くてもいけてたじゃん」
「う、うん。そろそろ無くてもいけるかなー?と思ったんだよ~」
「それで本当に倒せたんだから大したもんだよ。すごいじゃないか」
「そ、そうかなー? えへへ~」
サクラの成長スピードには驚かされる。
最初は攻撃時に目を瞑っていたが、今はそんなことはしない。
まだ動きはぎこちないが、ゴブリン程度なら余裕で倒せるようになった。
VRMMO初心者でこの成長は目を見張るものがある。
とても初心者とは思えない。
「これなら他のモンスターも倒せるようになってると思うぞ」
「そ、そぉ? なんか自信でてきたよー」
「うん。レベルも上がったことだし、試しに別のモンスターに挑戦してみないか?」
「や、やってみる!」
「おう。その意気だ」
まだまだ動きはぎこちないが、この辺の雑魚モンスターなら余裕で倒せるぐらいの実力はあるはずだ。
モンスターを探そうとした時、あることを思い出す。
「そういやさ。サクラはどんなスキル持ってるんだ?」
「え、えっとねー……まだ3つしかないみたいなの……」
「3つ? ってことはチュートリアルで取ったやつだけか」
「う、うん。でもは私どれがいいのかよく分かんなくて、深く考えずに取っちゃったんだよ~」
ああそうか。
スキルのことについても説明してなかったな。
「今どんなスキル習得してるのか教えてもらっていいか?」
「いいよー。えっとねー……」
「ああ。メニュー画面出して、そこからスキル公開を選べば俺にも見えるようになるよ」
「そ、そうなんだ。す、すぐにやってみるね」
サクラがメニュー画面を出して操作を始める。
すると俺にもスキル一覧が見えるようになった。
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【アクティブスキル】
《パワースラッシュ》
【パッシブスキル】
《HP回復力向上》《ポーションの知識》
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ほうほう。
攻撃スキルは一応持っていたのか。
どれどれ。詳細を見てみよう。
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【アクティブスキル】パワースラッシュ
強力な物理攻撃をする。
消費MP:20
クールタイム:5秒
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これは見たまんまの攻撃技かな。
シンプルで使いやすそうだ。
次はパッシブスキルを見てみるか。
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【パッシブスキル】HP回復力向上
HPの自然回復力が向上する。
HPとVITが高いほど効果も上昇する。
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【パッシブスキル】ポーションの知識
ポーション系使用時、効果量が増加する。
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なるほどな。
どっちも便利なスキルだ。
「なんでこの3つを選んだの?」
「えっとね。《パワースラッシュ》は強そうだから選んでみたの」
「つ、強そうねぇ……」
予想以上にシンプルな答えだった。
「《HP回復力向上》はね、いっぱい回復できたら便利かもと思って取ったの」
「な、なるほど」
「《ポーションの知識》も似たような理由かな~」
「そ、そうなのね」
本当に深く考えずに取ったわけか。
なんとなくサクラらしいと思ってしまった。
けどスキル選びのセンスはあると思う。
よく考えると、これらのスキルはなかなか使い勝手がいい。
《パワースラッシュ》は攻撃スキルとして必要だろう。
《HP回復力向上》は狩りの効率があがるし、最初のうちは便利なはずだ。
《ポーションの知識》が一番優れていると思う。
回復力が上がるからポーション代節約になるだろうしな。
なにより戦闘中などで即座に回復したい時にも嬉しい効果だ。
このスキルは常に活躍するだろうから、終始腐ることはないだろう。
そう考えるとこのチョイスはいいセンスだと思う。
いや。
というより、今後のことを考えると、このチョイスが最適にも思える。
サクラはこれらを〝カン〟で選んだというのだからすごい。
「うん。悪くないぞ。いいスキルを選んだじゃないか」
「よかったぁ……」
この子意外とすごいんじゃないか?
戦闘中に目をつぶる欠点は克服したし、伸びしろがある。
姉に憧れて始めたというが、もしかしたら本当に追いつけるかもな。
今後が楽しみになってくる。
「それじゃあ狩り再開しようか。サクラはまだ続けられる?」
「うん。私は大丈夫だよー」
「よっしゃ。ならモンスター探そっか」
「おー!」




