パーティ結成
「そういや気になってたんだけど、サクラの姉もこのゲームやってるんだろ? だったら直接あれこれ教えてもらえばいいんじゃない?」
「そ、そうなんだけどね。お姉ちゃんは忙しいから、しばらくは私だけでがんばろうと思ったの」
「忙しい? そんなに?」
「うん。お姉ちゃんは1人暮らしだし、あんまり邪魔したら悪いかなって思って」
ああ。そういうことか。
姉妹だからてっきり、同じ屋根の下で暮らしているもんだと思っていた。既に独立しているとはな。
忙しいってのはそういうことか。
「それにね。実はお姉ちゃんには内緒で始めたの」
「えっ? そうなの?」
「だからね、こっそり強くなってビックリさせようかと思うの! えっへん!」
「そ、そうか……」
たぶんこっちが本音な気がする……
「なるほどね。事情は把握したよ。なら俺も手伝おうか?」
「ええ!? それってどういう……」
「強くなるっつってもさ。今のままだとそれどころじゃないと思うんだけど……」
「あうっ……」
剣士を目指しているのに、ロクに攻撃も当てられないんじゃ始まらない。
強くなる前にまずそれをなんとかしないとな。
「どう? 一時的にパーティ組んでみない?」
「パーティ……」
うん? なんだろう?
サクラの表情が急に曇りだした気がする。
「ど、どうしたの?」
「…………」
「おーい?」
「…………」
あれ。反応がない。
本当にどうしたんだろう?
「えーと、もしかして嫌だった……?」
「……ううん。そうじゃないの……。ちょっとさっきのこと思い出しちゃって……」
「さっき? 何かあったの?」
「……ごめんね。何でもないの。私が悪いだけだから……」
なんだろう。気になるな。
けどあまり追及しないほうがいい気がする。
「と、とりあえずさ。俺も手伝うからさ、しばらく一緒にやってみない?」
「う、うん。じゃあお願いしようかな」
「よっしゃ、決まり。よろしくな。サクラ」
「うん! よろしくね! ガイ君」
互いに握手を交わした。
「んじゃ、もっかいスライム相手に戦ってみなよ。フォローはするからさ」
「わ、分かったよ! やってみる!」
スライムを探して辺りを見回す。
が、どこにも居なかった。
というより、正確にはみんな狩られているみたいだった。
「手頃のやつが見つからないな」
「だね~。人も増えてきたし」
そうなのだ。
他のプレイヤーがスライムと戦っているせいか、新品のモンスターが見当たらないのだ。
意外と人も多くなってきたようで、あちこちで戦っている姿が見える。
「ん~。なら森の方いってみるか。たしかまだ人は少ないはずだし」
「森? そこにもモンスターがいるの?」
「うん。つってもスライムじゃなくてゴブリンばかりだけどな」
「ゴブリン……大丈夫かなぁ……」
ああそうか。
サクラはスライム以外と戦ったことがないのかもしれない。
「大丈夫だって。俺がうまくサポートするよ」
「う、うん。そうだね。そういえばガイ君も剣で戦うの?」
「ん? いや、俺はデバッファー目指してるからさ。攻撃はほとんどしないんだよ」
「でばっふぁー? なにそれ?」
「デバフメインで戦うスタイルって言えばいいのかな」
「でばふ?」
あれ。
まさかこういう用語の知識が無いのか?
「もしかしてサクラって、ネトゲ自体初めてだったり?」
「あ、うん。ゲーム自体あまりやらないからそういうのは疎くて……」
「そ、そうだったんだ」
「ご、ごめんね?」
「いやいや。大丈夫だよ。ゆっくり覚えていけばいいさ」
VRゲーム自体初めてなわけか。
さっきはあんな戦い方してたのも納得。
「デバフというのは、敵の能力を下げたり妨害するスキルのことなんだよ。それらをメインに戦うプレイヤーのことを、デバッファーなんて呼んだりするわけよ」
「へぇ~。そうだったんだぁ~。あっ、さっきスライムの動きが止まったのは……」
「そうそう。あれも《アースバインド》っていうスキルを発動したのさ。移動を封じる効果があるんだよ」
「なるほどぉ~」
「とりあえず森にいってみようか。行ったことあるから道は分かるし」
「うん。お願いね」
サクラを連れて森へと移動していった。




