デバッファーという存在
デバッファーという用語を知っているだろうか?
これはゲームでよく使われている用語だ。敵の能力を下げたり、動きを阻害したり、状態異常を与えることを『デバフ』と呼ばれている。そしてこれら弱体化系統を多く使うキャラクターのことを『デバッファー』と呼んでいる。
俺こと富久涯 正斗はデバッファーが大好きだ。
RPGなどやるときには真っ先にデバフの存在を確認する。そしてデバフを多く使うキャラクターをメイン級にしている。それぐらい好きだ。
ネトゲでも同じだ。デバフを一番多く扱うジョブを選ぶ。
敵に状態異常をかけたり、妨害スキルで邪魔したりするのが楽しく感じる。
こんなことを言うと性格が悪いとか言われそうだが……まぁ否定はしない。
だがデバッファーというのは不人気職になりがちだ。
攻撃職のような爽快感もないし、盾職のような頼りがいもないし、回復職のようなやりがいも感じにくい。地味になりがちである。
敵が強くなるにつれ、デバフ耐性が高い敵が増える傾向にある。そうなるとデバッファーというのは一気に不遇になってしまう。
なので、デバフというのは必要最低限だけ取得し、残りは攻撃やバフスキルなどを使うようになるのが定石だ。
序盤から終盤までデバフ特化のキャラが活躍するゲームは少ない。
仮にあったとしても、地味な役割の故にやりたがる人は少ない。そのため奴隷扱いされることもある。
それでも俺はずっとデバッファーを選び続けるだろう。
ある日のこと。
とあるVRMMOの広告を目にした。その名は『Glint of Freedom』。通称『GoF』。
リアルなのはもちろんのこと、自由なプレイスタイルが売りなんだとか。
他のゲームでよくある職業というものが存在せず、スキルは自分の行動によって〝ひらめく〟というもの。行動次第ではオリジナルスキルを習得することができるんだとか。
それ故にどんなプレイスタイルでも活躍できる場面があり、不遇になりにくい……というコンセプトらしい。
それを目にした俺はさっそく Glint of Freedomを購入した。人気で品薄だったが、運よく手に入れることが出来た。
「さて、準備も出来たし。ログインするかな」
VRヘッドギアを頭にはめて、ベッドに横になった。