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第一章 草原の黄昏 2-2



「みな待たせたな、さあ顔を上げて席につくがいい」

 みなが席につくのと同時に、厨から出来立ての料理が次々と運び込まれて来る。


 運んでいるのは、バミュール家から連れて来ている者たちであった。

 すべての料理が配膳され終わると、最後に料理長のネカルドと助手のキネラが現れ、一同に挨拶をする。


「わたくしが精魂を込めた料理が出来上がりました、夕食には少し早くはございますが、ごゆっくりとお召し上がりください。お代わりも十分に用意してございますれば、お口に合うようでしたら存分にお申し付けくださいませ」


「うむ、大儀であった、どれもこれもみな美味そうじゃな。まずは葡萄酒で乾杯を致そう」

 大公がそういうと、上等なワインが給仕代わりの料理人たちによって注いで廻られる。


「みな杯は持ったか」

 そう言って大公が立ち上がると、みな倣って席を立つ。

「殿下、わたくしが乾杯の音頭を取らせて頂きます」

 フェリップが杯を高々と掲げる。


「では大公殿下のご健康と、みなの末永い幸せを願って乾杯──と行きたい所ではあるが、いささか訳あってわれらは大公宮から出て行かねばならん。貴殿たちにはわれらの人質になって頂く、抵抗せねば命まで取りはせん。大人しく言うことを聞いて頂こう」


「こ、これは一体なにごとです──」

 意表を突かれたヘムリュスが、なにが起こっているのかも分からず慌てふためいているが、時はすでに遅く調理師姿のクエンティとスカッツが、監視役の二人の喉元に小刀を押し当てていた。


 料理を運ぶ手押し車の下部に、白布で隠されてい小刀を手にした、フェリップとレノンが大公アーディンを守るように左右を固める。

 同じくショウレーンが、女官たちを部屋の片隅に集めて静かに座らせると、外への警戒のために音も立てずに扉の横に立った。


そこへ扉が開き、ウェッディン家の兵が入って来た。

「ペリオルスさま、戦場から急ぎの用でアルファーさまが見えられており──」

 そこまで言いかけて、兵の身体が固まった。


「・・・・・」

 室内の異様な有りさまに驚いたのもあるが、扉横に身を潜めていたショウレーンの刃を首筋に突き付けられたからであった。


「おい、なにをしている」

 そう怒鳴りながらアルファーが、入り口で立ち止まっている兵を押しのけ中へ入って来た。

 その瞬間異常に気付いたアルファーは、素早く腰の剣を抜き身構えた。


「なにをしに来たアルファー」

 兄の家令の姿を視とめたフェリップが、鋭く言い放つ。


「おお、ご舎弟さま。やはり本当にここにおいでになったのですね、屋敷にお伺いした所お留守とのことだったので、居場所を聞き出すのに随分と手間取りましたぞ」

「わたしを探していただと、どういうことだ? そもそも戦場から離れてこんな所に来るとは、どうした訳だ」

 勘の鋭いアルファーは瞬時にこの場の状況を、すべてを見抜いていた。


「ご舎弟さま、主ジョージイーさまは考えを翻意なさり、これより後は大公殿下と宮廷側にお味方なされる仕儀となりました」

 この場に置いて隠し立てする必要もないと察し、あるがままを伝える。


「なに、兄上が──」

 驚愕の表情で、フェリップはアルファーの顔を見る。


「ヒューガンを始めとした一味の者の本性が分かればわかるほど、ジョージイーさまは恐ろしくなられたご様子です。家督もご舎弟さまに譲ってもよいとおっしゃっておられます」

「この期に及んでなんと──、そもそも兄上の軽はずみが原因でこうなったと言うに」


「フェリップさま、ジョージイーさまをお許しください。フェリップに会ったならば伝えてくれと、言葉をお預かりしております」

「言うてみよ」


「兄が浅はかであった、すまぬ。ただそれだけをおっしゃられました」

「いまさらなにを言っておられるのか──」

 フェリップは俯き、ぎりぎりと歯噛みした。



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