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第三章  ザンガリオスの道標 4-2



 ペーターセンの遺体を安置した馬車は、ケネットの乗った馬車のすぐ後ろにあった。


「安らかなお顔だろ」

 フロイの言うように、ペーターセンの死に顔は穏やかであった。

 口元には、笑みさえ浮かんでいるように思える。


「笑ってるみたいだ──」

 ケネットの口から言葉が零れる。


「ああ、確かに伯父さんは最期の瞬間、天を見上げ笑われた。自分の運命を受け入れたかのような、優しい表情でね」

「これがザンガリオス家当主の覚悟というやつなのかな? すべてを自らが引き受けてみなを護る、それが当主の使命──」

 しばらくの間、ただ黙ってケネットは兄の顔を見詰め続けた。


「分かったよフロイ兄さま、ぼくはこれからザンガリオス家の当主として生きる。無事危難を乗り切り、故郷へ帰還した時はじめて兄上の死を悼もう。それまでは決して涙は見せない、兄さまもその覚悟でいてください」

 ケネットは兄の遺体を見てから、なにかが吹っ切れたかのように毅然とした態度になった。


「ケネット、いやこれからは殿と呼ぼう。殿、このフロイあなたを支え一族のために尽くすことをお誓いする。これからは一家臣として接して下さいませ」

 狭い馬車の中で、フロイが跪く。


「殿、カルロも側におります。なにかあればまずはこのカルロにご命じください、身命を賭して働きます」

 カルロもそれに続く。


「兄さま、カルロ、頼みにしますよ。共にザンガリオスのために生きましょう」

「ははっ」

 二人が頭を下げる。



 ケネット快復の報を聞き、先頭のノインシュタイン軍と共にあったバッフェロウが駆け付けた。


「ケネットさま、お元気になられましたか」

 やって来るなり跪き、深々と頭を下げる。


「ペーターセンさまのこと、このバッフェロウいかようなお叱りも受ける覚悟です。わたしが付いておりながら、かような仕儀となり責任は痛感しております。事態が無事落ち着きました際には、どうか殉死のお許しを戴きたい」

 涙を流しながら、バッフェロウが懇願する。


「それはならんぞ将軍。兄上亡きあと、其の方こそがザンガリオスの柱だ。死など軽々しく口にするな、きっと兄上もそうおっしゃるに違いない」

「ははっ、すべてはケネットさまのお心のままに。生き恥を晒せと仰るのであれば、従いましょう」


「なにが生き恥だ、あなたがいて下さらねばわが一族の将来は危うい。わたしのためではない、ザンガリオスのためにこれからもあなたのお力を頼みとします。どうか末永くザンガリオスの守護神でいて下さい」

「勿体ないお言葉、謹んで心に刻みます」


 その言葉通りこれからの約十年間は、武はもちろん政に関してもバッフェロウを中心とした体制が続くこととなる。

 その後、武はカルロ、政はフロイが引き継ぐことになる。


「今宵は開拓団の集落に駐留することになっております、その場にて征討軍の方々と御面会くださいませ。事前にわたくしからノインシュタイン候はじめ、主だった方々には話しを通しておきます」

 バッフェロウが進言する。


「わかった、将軍の言う通りにしよう。手はずは任せます」

「御意」




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