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第三章 ザンガリオスの道標 2-1



「ジェニウスの商務長官? 貴様のような若輩が商務長官なはずがなかろう。偽りを申すな、怪しき奴めが」

 デオナルドが、自分と変わらぬような齢のジェピターと名乗る男に鋭く言い放つ。


「そう言うあなたもその齢で、聖龍騎士団の指令に抜擢されているじゃありませんか。デオナルド・ヘム=アイガー殿。それにね、わたしは童顔に見られるが、多分あなたよりは年長のはずですよ」

 なに喰わぬ顏でフルネームを呼ばれ、デオナルドがたじろぐ。


「そう言えばジェニウスの商務長官に父親の跡を継ぎ、一番年下の息子がその地位に就いたと聞いたことがあります」

 近隣国の情勢に明るいショウレーンが、思い出したかのようにみなに説明する。


「それは真か、ではこの者は本当にジェニウスの・・・」

「はい、わたしは正真正銘のジェニウス商務長官だったものです。いまは追われる身ですが」

 キュリアーノに対して軽く身体を倒し、再び礼の姿勢を取る。


「なぜ商務長官ともあろうものが魔道など使う、ジェニウスでは国の重臣が魔道を使う風習でもあるのか」

「そのような習慣がある訳がございません。わたしは特別です、ノインシュタイン候」

 気後れする風もなく、ジェピターが微笑みかける。


〝不思議な気を持った奴だ、しかし邪気は感じられん。とにかく話しだけでも聞いてみるか〟

 そうキュリアーノは考えた。


「話しを聞いて頂けるようですね、さすがはキュリアーノ殿だ。器が大きい」

 それを察知したジェピターが、先手を打って話しかける。


「ジェピター殿とやら、ここへなにをしに参られた。ここは戦場ですぞ、生きて帰れる保証はどこにもない。それを覚悟でいらっしゃったのか」

 当初から落ち着き払っているレミキュスが、窺うような口調で探りを入れて来る。


「御心配には及びません、わたしはこう見えても大陸一の魔道士と自負している。わが身を護る術は持っております」

 その言葉通りに、彼には恐れなど微塵もないように見える。


「言いたい事があるのならば早く申せ、われらは暇なわけではないぞ」

 デオナルドが多少苛つきながら、鋭い視線でジェピターを見据える。

「まずはサイレンの方々に、此度ジェニウスで起こった謀叛劇のすべてを知って頂きたいと思います」


「やはり謀叛であったか」

 身を乗り出し、キュリアーノが俄然興味を示す。

 それを制するように、レミキュスが口を開く。


「その謀叛の話しならば、さきほどアゴニア王宮からの正式な使者が来て聞いておる。ケヴィン陛下のご崩御の件も併せてな、いまさらあなたから聞く必要もあるまい」

 意地の悪い笑いを浮かべ、レミキュスがわざと冷たい言い方をする。


「宰相や王弟方の、謀反の話しですね」

 そんな挑発にも乗らず、なに喰わぬ顔でジェピターは話しを続ける。


「はっきりと申しましょう、謀叛を起こしたのは王太子ラキシュスと、その祖父バル―ゼン公爵ゼネスです。彼らの手によってケヴィン陛下は謀殺され、ご家族もことごとく亡き者となりました」

 ジェピターは一気に事のあらましを話し続けた。


 ジェピターの話しに一々頷き、憤慨した様子を見せるキュリアーノ、デオナルドと違い一人レミキュスは冷静だった。


「それはあなたの一方的な情報、もしかしたら真実はまた違うのかもしれませんぞ。なにを持ってあなたの言葉を信じろとおっしゃるのです、ジェピター殿」


「レミキュス殿、あなたの言われる事はもっともです。わたしの言葉が真実だという証拠はどこにもありません。ましてやわたしは現在国から謀叛人として追われる身、信じて頂けぬのもごもっともです」

 あっさりと認める。


「信ずる信ぜぬは、あなた方にゆだねるしかございません。わたしの要件というのはそのことではありません、目の前で対峙しておられるザンガリオスの事です」


「ザンガリオスの?」

 さすがの策士レミキュスも、意表を突かれたようであった。


 まさかこの流れでザンガリオスの話題が出るとは、思ってもいなかったのであろう。



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