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第二章 夢の終焉 3-4



 南へと行く先を決めたペーターセンとザンガリオス鉄血騎士団一行は、大将軍バッフェロウの指揮の下困難な行軍を重ねて行った。

 彼らの追撃を買って出たのは、三日遅れてトールンへと姿を現した〝ノインシュタイン殉国騎士団〟だった。


「せっかくここまで出張って来たのだ、われらにも少しは働かせて頂きたい」

 ノインシュタイン候キュリアーノが、強硬にそう主張したのだ。


 サイレンの騎士団の中で、どちらが最強なのかと常日頃から比較され続けていたこともあり、ザンガリオス鉄血とその優劣をつけたいという思いもあったのだろう。


「わかった、ここはキュリアーノ殿にお任せしよう」

 最終的にそう判断したのは、ともにノインシュタインより上って来た元帥府総帥のカーベリオス・サウス=マクシミリオンだった。


「しかしなぜバッフェロウ将軍は行軍困難な南へと進路を取ったのか?」

「それは簡単なことです、南の国境の先にあるのはジェニウス王国です。ペーターセン殿の姉君フォレーニアさまはジェニウス王へ嫁いでおられる、義兄であるケヴィンⅢ世を頼ったのでしょう」

 キュリアーノの問いに、ウィルムヘル・ツァーブ=ユンガー侯爵が応える。


「では、ペーターセンがジェニウス王国へ逃れれば、少々厄介な事態になるかもしれませんな」

「さよう、なんとしてでもそれは避けたい。国境を超える前になんとかせねばならんな」

 カーベリオスが困惑した顔で一同を眺め回した。


「お任せください、わが殉国騎士団の総力を挙げてそれは阻止いたす」

 キュリアーノが胸を張る。


「ノインシュタイン候、貴公の軍にわが手の者を合力させてはいただけまいか」

 唐突にバミュール候フェリップが口を開く。


「は? それは一体どういうことでしょうか」

「実はわたしの家臣がどうしてもご一緒したいと聞かぬのです。以前バッフェロウ将軍と戦場を共にしたことがあったようで、それ以来大のバッフェロウ贔屓になってしまいましてな。下手をすれば主人のわたしよりも、彼の言うことを聞いてしまいそうなやつなのです」

 そう紹介されたのは、犬狼騎士団旗本隊騎士長のショウレーンである。


「フェリップさま配下のショウレーンと申します、此度は厚かましいお願いを致しまして申し訳ございません。是非とも手勢の末端にでもお加えいただけますようお願い致します」

 腰をかがめて、縋るような顔で懇願する。


「ショウレーン殿、あなたはバッフェロウ将軍と親しいのですか」

「はい、二年前のベルッド王国との北部国境戦にてふた月の間共に戦いました。その間なにくれとなく面倒を見て頂き、戦のやり方や軍略は勿論のこと、心の鍛錬・人としての在り方など様々なことを教わりました。その後も書簡での遣り取りを続けております。心に一点の曇りも持たない、武人としてもひとりの人間としても尊敬できるお方です。最悪直接の交戦となった際には必ずお役に立ちます、なにとぞご同道をお許しください」


「これもこう申しておりますれば、どうか願いを聞き入れてはいただけぬか。わたしからもこの通りだ」

 いまやウェッディン・サイレン家の当主となっている、フェリップが頭を下げる。


「お手をお上げくださいバミュール候、あなたにそのような真似をされてはわたしが困惑いたします。わかりました、ショウレーン殿にはわたしの本陣付き客将として来て頂きましょう」


「ありがとうございます、感謝いたします。必ずや後悔はさせません」

「当方の我儘を聞き入れて頂き痛み入る、あなたへお預けしている間は家臣と思って遠慮なくなんでも申し付けて下さい。よかったなショウレーン」


 こうしてショウレーンは麾下の兵二百騎とともに、殉国騎士団に加わることとなった。


 この全体から見れば取るに足りない些細な決断が、やがて大きな意味を持つことになるとはこの時誰も分かっていなかった。


 ザンガリオス討伐軍はそれから二日後、トールンを出立していった。



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