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第一章 草原の黄昏 4-1



「親分、近衛騎士団が来ます。トールン軍はこれで助かる」

 星光宮から馬を飛ばして、クエンティが戦場へとやって来た。


 ここは主戦場からほんの少し外れた、クラークス一家の残兵が残っている一角である。

 クエンティはここへ向かう途中、連絡のためにトールンに来ていた手下へ、戦場近郊で待機しているであろう各離脱騎士団へも遣いを出していた。


〝近衛騎士団動く〟

 その朗報は、いま頃クラークス一家の手の者によって、離脱した将兵たちに知らされているはずである。


「大公殿下は無事大公宮から解放され、近衛騎士団、ハルンバート流星騎士団、犬狼騎士団等がもう直に戦場に姿を見せる。近くで姿を隠している各騎士団もすぐに合流するだろう。俺たちの勝ちだ、あんたの兄弟分イアンはこれで官軍の総大将だ」

 馬上からクエンティが大声で叫ぶ。


「代貸し、とうとうやったんですね。さすがクエンティの兄貴だ、きっとやり遂げて下さるって信じていました」

 ババルディが駆け寄って来た。


「おうババか、親分はどこにいらっしゃる。まさか戦場でイアン将軍と一緒に剣を取ってるんじゃねえだろうな。俺たちゃ武人じゃねえ、後は奴らに任せてここから高みの見物と決め込もうじゃねえか。早く親分を呼び戻せ」

 馬から降りながらそう命じる。


「・・・・・」

 ババルディが神妙な顔でその場に片膝立ちとなって、クエンティへ首を垂れる。


「これからはあなたの指図に従います、親分──」

 ババルディの声が震えている。


「こらババ、こりゃ一体なんの酔狂だ。いまそんな冗談を言ってる時じゃねえだろ」

「な、なんでこんなことが冗談で云えます――。いまこの時から兄貴がクラークスだ、俺たちのたった一人の親分だ」

 涙を流しながら、ババルディが地に崩れ落ちる。


「まさか親分は──」

「親分はもうこの世にはいらっしゃいません、戦場で敵に討ち取られ首を掻っ切られちまった」


「なんだと、なぜ親分がそんなことに──。お前が命を張ってでもなぜ止めなかった、なぜあの人を戦場へやっちまったんだよ」

「俺たちの言葉を聞くような方じゃ・・・」


 言いかけたババルディの顔面へ、強烈なクエンティの靴底が蹴りつけられた。

「言い訳するんじゃねえ! それでもお止めするのが乾分の務めだろ。なぜだ、なぜ親分がそんなことに・・・」

 後方へ引っ繰り返った身体を起こし、ババルディが鼻血を流しながら涙顔で説明する。


「イアンさまの身代りになられたんです。親分はイアンさまとして敵の手に掛かられた、命より大事な兄弟分のために親分は身体を張んなすった──」

「どういう意味だ、詳しく話せ」


 クエンティが悲痛な顔でババルディを見降ろしながら、絞り出すような低い声で呟いた。




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