第一章 草原の黄昏 2-6
星光宮主宮の中央二階の広いバルコニーに、大公アーディンの姿が現れると大広場を埋め尽くしている近衛の騎士たちからは、割れんばかりの歓声が上がった。
そのどよめきは公宮広場に収まり切れず、周りに溢れている兵たちまで巻き込み、異様な雰囲気となっている。
「ドルーク・デューク、ドルーク・サイレン」
一斉に大公とサイレンを讃える大合唱が、津波のように溢れ返る。
大公がそれを両手を広げて鎮め、大声で将兵たちに語り掛け始める。
大公の左右には、ウェッディン・サイレン家の家令アルファー・デル=ボウムズ伯爵、バミュール候フェリップ・フォン=サイレンとその執事であるレノン。
元老ホーフェン・ルイズ=ザルバザード伯爵、近衛騎士団総帥オーガデル・グクルス=リッテンドルギュ伯爵と第一師団長サレウスの姿があった。
「栄えあるわが近衛の騎士たちよ、余はこれから重大な決断をみなに聞かせる。以前自ら発布した、此度のトールン守護軍とサイレン公家連合軍による争いへの、大公不介入の令をここに撤回する。わが意はトールン軍と共にある、連合軍こそはサイレンの安寧を妨げる大悪人どもだ。これよりはトールン軍は官軍、連合軍は賊軍である。近衛騎士団の兵どもよ、これからすぐにヒューリオ高原へ駈けつけイアン将軍に助勢せよ。相手は賊徒だ容赦は要らん、降伏せぬ者どもはすべて忠滅せよ。よいか全力で戦場へ駈けよ、一刻の猶予もならん。さあすぐに出陣だ」
「ドルーク・サイレン」
「ドルーク・デューク」
「ジ―ク・ドルーク、ジ―ク・サイレン」
二万五千の将兵が口々に歓声や雄叫びを挙げ、勇んで公宮を出て行く。
ある者は騎馬で、またあるものは徒歩で戦場を一直線に目指す。
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