第六話 七月二十四日 【敬吾】 約束
「最終日に必ず手渡しか・・・」
スズから預かった手紙・・・。
わざわざ夕方に持ってきたけど、そんなに大事なことだったのかな?
夏休みでワクワクした気分・・・なんだけど、この夏にしなきゃいけないこと、たくさんあるな・・・。
◆
「色は・・・緑にしよ」
付箋に書いて机に貼った。
『夏休み最終日に、スズに手紙を届ける』
・・・これで大丈夫だ。
オレは、約束や大事なことはすぐに書くことにしている。
学校でした約束もその場で書いて、帰ったら机に貼って、終わったら剥がす。
それに加えて、寝る前と家を出る前に必ずチェックをしているから忘れることは無い。
『アラタの家で会議』
一番早い約束を確認した。
これは、明日帰ったら剥がす。
約束はちゃんと覚えていないといけない。
取り返しのつかないことになるかもしれないからだ・・・。
「・・・まだ、大丈夫だよな?」
きっと大丈夫・・・。
オレは、もう二度と約束を破らないって決めてる。
スズを泣かせてしまったことがあるから・・・。
でもそのことはちゃんと謝れていない。
何度かあの時の話をしようと思ってはいても、なかなか言い出せずに時間が経ってしまった。
「この手紙って、あの時のことが書いてあるんじゃ・・・」
ちょっと覗くだけならいいかな・・・。
オレは封筒を塞いでいたシールに触った。
「あ・・・これ、封印シールだ・・・」
開けたら絶対バレる・・・。
・・・覗くのはやめておこう。
まあ、今ここで色々考えても進まないか。
自分は結構前向きな人間ではあると思う。
それに明日から夏休みだ。
きっと楽しいことがいっぱいある。
盆には町の夏祭りもあるし、宿題はコースケかスズに協力してもらえる。
・・・いいことのほうが多そうだ。
「はあ・・・とりあえず楽しいことを考えてようかな」
窓から風が吹き込んできて、机の約束付箋を揺らした。
貼ってあるもので、一番古いものには・・・。
『スズにちゃんと謝る』
夏休みで、一番大変な宿題だ。