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今が『あの頃』になっても  作者: NeRix
プロローグ
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第三話 七月二十四日 【楓】 半乾きの髪

 夜、月明かりの中で、私は彼に悩みを打ち明けた。

私が頭を抱えていることを彼は真剣に聞いてくれている。 

そして泣き出した私の肩を強く、優しく抱いてくれた。

 

 「君が悩むなら僕も悩もう」

心強い言葉で、気持ちが楽になる。

私はこの人が好きなんだ。



 「・・・んー、なんか違う・・・。」

私はペンを置いて目を閉じた。


 「泣き出すのはもう少しあとにしたいのに・・・もうちょっと我慢してほしいな」

今日もうまくいかない・・・。

 気持ちが昂って、髪も乾かさないで机に向かったけどまたダメだった。

お風呂上がりで、さっぱりした気持ちだったからできそうな感じがしたんだけどな。


 「でも・・・明日から時間はたっぷりあるもんね」

そう、たくさんある・・・。

 やっと夏休みだ。それも一ヶ月・・・幸せ。

このために運動会、宿題、体育・・・嫌なことを我慢してきた。

だから好きにさせてもらうからね。



 「うん・・・大丈夫」

気分転換に、終わらせた宿題を確認した。


 テキスト・・・割と楽だったな。

こんなもの終業式の今日、帰ってから始めて夕方前には片付けてしまった。

 だからあとはみんなとの自由研究だけ・・・。

夏休みの楽しみの一つだ。

みんなと一緒にいれるのはとても楽しいから。


 去年までは本当に六人だけだったからもっと良かったんだけどな・・・。

新しい学校は、つまんなくはないけど・・・やっぱり人数が多いのが問題だと思う。

大鳥沢小学校ならもっと静かに本が読めたのに・・・。


 静かなところなら集中できて、たくさん本が読める。

夏休み中に一冊でも多く物語を読むのも目標だ。



 「えっと・・・これの期限は来週か・・・」

集中が切れたから、町の図書館で借りてきた本を眺めていた。

 「返しに行く時また借りてこよ」

図書館と図書室は大好き。

騒がしくないし無料で本が読めるし借りれるいい場所だ。


 「これは・・・買いたいリストに入れておこう」

お小遣いはそんなにもらえるわけじゃない。

図書館ならお金はかからないから、読んでみて手元に残しておきたい本は自分で買うようにしている。


 たくさんの本を読んできて、最近は自分でも物語を作ってみたいと思うようになった。

中学校に入る前には一つ書き上げるのが目標・・・にしてはいるけど、これがなかなか難しい。

 いくつか書いてみたけど、見直すと内容が薄い感じがして嫌になってくる。主人公も私に似てなんか暗い感じだし・・・。

はるちんとかすずちゃんみたいな性格がいいな。


 書くならやっぱり明るくて希望のある物語がいい。

結末は、もちろんハッピーエンドだよね。


 そのために私は、この夏休みに取材をしようと考えている。

自由研究をしながらできるし、実際に話を聞くことで新しいネタが見つかるかもしれない。

 それに・・・私も変われる気がするから。

手始めに、一番話しやすいこーちゃんに取材をしてみようかな。


 この夏休みで、少しは明るい性格になれるように過ごすんだ。

物語の主人公は大体前向きな人だからね。



 「あ・・・いつの間に・・・」

湿気のない爽やかな風が吹いていて、半乾きの髪を撫でて乾かしてくれたみたいだ。

そして、乾いた前髪がいつものように私の目を隠した。


 「夏の風・・・」

私は窓から顔を出した。

冒険譚でも、ラブストーリーでも、SFでも、物語の始まりはこんな感じなのかな?


 夏休み・・・。

なんだか今年は素敵なことが起こりそうな予感がする。

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