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今が『あの頃』になっても  作者: NeRix
プロローグ
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第二話 七月二十四日 【耕助】 あと何回

 今の僕は、誰よりも背が高い・・・。

そしてみんなを見下ろしている。


 ああいいな、でも・・・これは夢・・・。



 「・・・寝ちゃったか」

蒸し暑さと一緒に目が覚めた。

えっと・・・さっき宿題を終わらせて、うとうとしちゃって・・・。


 「・・・そんなはずないよね」

起き上がって自分の背を確認した。

 せっかく楽しい夢だったんだけどな・・・。

目覚めた僕は、いつも通りで誰よりも背が低い状態。

みんなは気にしてるの知ってるからあんまり触れてこないことだ。

 

 まあ・・・夢ならしょうがない。

明日の準備でもしようかな。



 僕は勉強机に座って「自由研究」って書いてあるノートを開いた。

夏休みの課題だ。


 自由研究は共同でやることになった。

内容は地図を作ることだ。

詳しくはまだ言われてないけど、大鳥沢のスポットをまとめるって聞いている。


 最初はカエデを誘って二人でやるつもりだったけど、アラタから『六人でやろう』って誘われた。

小学生最後の夏休みだし、大鳥沢の六人で・・・この方がいい。


 僕、アラタ、ケイゴ、カエデ、スズ、ハルカ・・・この六人は特別だ。

去年まで通っていた大鳥沢小学校が廃校になって、僕たちは六年生から町の小学校に転校になってしまった。

 でも全員同じクラスになれて一学期も終わり、なんとか馴染んでいけたと思う。

 まあ中学生になればどうせいくつかの小学校と合流したし、一年早まったって感じだけどね。



 「おにいちゃん、あと何回寝たらはつみおねえちゃんくる?」

とりあえずスポットになりそうな場所を纏めていると、背中に元気な声が当たった。

ハヅキか・・・入ってきたの気付かなかったな。


 「そうだな・・・あと・・・十九回かな。寝れば来るよ」

「じゅうきゅう、じゅうきゅう。おひるねもかぞえていいの?」

「おひるねはダメだよ」

「んー、わかった」

ハヅキは大きな足音を立てて出て行った。

ああ・・・今日から毎日聞いてくるな・・・。


 ハツミ姉さんは陸上をやっていて、寮付きの高校に通っているからお盆とか正月くらいしか帰ってこない。

ハヅキはその日が近づくと、家族にあと何回寝るかを聞いて回るくらい姉さんを心待ちにしている。


 「お姉ちゃんか、ハルカ・・・お姉ちゃん」

なんとなく呟いてみた。

前はハルカをそう呼んでたな・・・小学校に入る前までだっけ。


 ハルカ・・・去年くらいから少し扱い方がわからなくなってきたんだよな・・・。

厳しい時があったと思ったら優しくなったり・・・僕が何かしたのかな?

背が低いのが悪いのかな?


 でも背は自分ではどうしようもないことだ。

小さい時みたいにとは言わない。こんなこと考えずに仲良くしていきたいんだけど・・・。

 そういえば、最近カエデにもハルカの僕に対する接し方がコロコロ変わるけど大丈夫かなって言われることあるな。

カエデはおとなしい分、人のこと見てるから気になるんだろう。

・・・先のことがわかれば、その時どう接していくか簡単に判断できるんだけどな。



 「・・・あ、忘れてた。明日の準備をするんだった」

ハルカのことを考えていたら外が暗くなっていた。


 どのスポットをまとめるか、いくつか考えておかないと・・・。

開けていた窓から柔らかい風が入ってきた。

悩んでいた僕のためのような気がする。


 「よし、ハルカが驚くくらい考えておこう」

風のおかげで前向きになれた。

小学生最後だし、いい思い出になるものを作らないとね。


 最後・・・来年は中学生か。

夢のようにってはいかないけど、一年あれば僕の身長はハルカを追い越しているはず・・・。

そしたら今みたいに強引に言うことを聞かされるとかは無くなりそうだ。


 それまでは・・・・あと何回寝ればいいのかな?

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