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今が『あの頃』になっても  作者: NeRix
本編 第一部
10/71

第九話 七月二十五日 【楓】 キク

 私は腕時計を見た。

三時七分か・・・。


 ここは開けた場所だからお日様が当たって明るい。

沼の水は、底が見えるくらいに透明になっていて、澄んだ水面が太陽の光を反射してキラキラになっていた。


  ああ・・・夏って感じ・・・。



 「どうかな・・・」

はるちんが、カメラのレンズを沼に向けた。

ぼやけたりしないかを確かめないといけない。


 「・・・うん、綺麗に撮れてる。じゃあ・・・カエデも撮っておこうかなー」

はるちんが、今度は私にレンズを向けてきた。

一人で写真なんて恥ずかしい・・・。


 「私はいいよ・・・あ・・・」

風が吹いて、私の前髪が持ち上がった。

 「・・・よし!」

はるちんがすかさずシャッターを押した。

なんてタイミング・・・。


 「ふふふ・・・カエデは目が綺麗だよね。色は薄めで澄んでて、なんか吸い込まれそう。やっぱり前髪は少し切るか分けるかして、顔がちゃんと見えるようにした方がかわいいよ」

はるちんは今の写真と私の顔を見比べた。


 前髪の話はみんなに言われる。

「目を出した方がいいよ」とか「視力が落ちるよ」とか・・・聞き飽きてしまった。

でも、これのせいで初対面の人に暗いって思われている。

 ・・・人に顔を見られるのは恥ずかしいよ。

ここにいるみんな以外と目と目を合わせて話すなんてまずできないし、すぐに緊張して顔が真っ赤になっちゃう。

 それが嫌だから髪の毛で目を隠している。

本当は治したいけど、赤くなった顔を見られるのが恥ずかしい・・・。


 「はるちんの方がかわいいよ」

とりあえず今はごまかしておこう。

 「あはは、ありがと。みんな水辺に立って、水神が真ん中になるように並んでみて」

四人が並んだ。

あとは全員収まるように動いてもらわないと。


 「カエデ、あたしも入ってみるからみんな写るか見てて」

はるちんはカメラを三脚に置いて、こーちゃんの隣に移動した。


 「えっと・・・」

右からはるちん、こーちゃん、あらちゃん、水神の石、けいちゃん、すずちゃん・・・。

 私がすずちゃんの隣に入っても、全員一枚に収まるかな。

よし、あとはタイマーをセットして・・・。


 「・・・ん?」

カメラから目を離した時、視界の端に人影が見えた。

 「いつの間に・・・」

白い服の女の子が、向こう側の水辺からこっちを見ていた。

同い年・・・くらい?


 「あれ・・・誰かな?」

私はその子を指差してみんなに伝えた。


 「え・・・なんだあの子、どっかの家の親戚か?・・・けっこうかわいいな」

「ていうかすごい美白・・・日焼け止め使ってるあたしより白い」

あらちゃんとはるちんが、向こうの子にも聞こえるくらいの声を出した。

私にはできないな・・・。


 「わたしたちと同じくらいだよ。ねえ、行って話してみようよ」

すずちゃんが女の子の方に歩き出した。

あれもできない・・・。



 「こんにちは、ここに遊びに来たの?」

「君、どこの子?」

すずちゃんとけいちゃんが女の子に話しかけた。

たしかにかわいい・・・。


 「おい、そんなグイグイ聞くなよ。・・・どっから来たの?」

あらちゃんは優しい顔で笑った。

うん、あれなら話しやすい・・・。

 「・・・」

女の子は少しはにかんでいる。

知らない子六人に囲まれたんだから仕方ないよね。


 「あの・・・私キクっていうの。・・・一緒に遊んでくれる子を探してたんだ」

胸の奥が震えた。

 ・・・なんて綺麗な声だろう。

川のせせらぎみたいなイメージが湧いた。

そこに氷水も合わさったような冷たく寂しい声だ・・・。


 「なんだ・・・じゃあ一緒に遊ぼうよ。あたしハルカっていうの。今から写真撮るから、一緒に写ろ?」

はるちんも普通に話しかけた。

初対面の子・・・普通に話せてすごいな。

 「わたしはリン、鈴って書いてリンていうの。でもみんなスズって呼ぶからキクちゃんもそう呼んでいいよ」

すずちゃんもそうだよね・・・。


 「俺はアラタ、こっちはケイゴ。・・・で、コースケ、そっちの女の子がカエデっていうんだ。まだ暗くなるまで時間あるし、みんなで遊ぼうぜ」

あらちゃんが私も紹介してしまった。

・・・自分で言いたかったな。


 「・・・」

きくちゃんは、緊張が取れたのか微笑んでいる。

なんか不思議な雰囲気・・・。

 

 「キクちゃんはどこから来たの?もしかして町の子?」

「私は・・・ここの子だよ」

きくちゃんは地面を指さした。

・・・ここの?

 「・・・俺たちと同い年くらいだろ?キクなんて聞いたことないぞ」

あらちゃんが怪しんだ。

 たしかに変、大鳥沢は子どもが少ない。

だから小学校も廃校になって、私たちも転校をしなくちゃいけなくなった。


 「本当・・・なんだけどな」

「じゃあ学校は?あ・・・その前に苗字教えて」

「ああ・・・えっと・・・驚かないでね。私はこの土地の神様なの。えっと・・・あれだよ」

きくちゃんが人差し指を動かした。

その先には水神の石・・・。


 「私ずっと一人だったから、一緒に遊んでくれる友達を探してたんだ」

「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」

みんな、なんて言おうか考え出してしまったみたいだ。

・・・どうしよう、思い込みの激しい子なのかな?



 みんなが黙って二分くらい経った。

うーん・・・言葉が思い浮かばない・・・。


 「・・・みんな、なんで黙ってるの?やっぱり知らない子とは遊べない?」

きくちゃんが寂しそうな声を出した。

そういうわけじゃないんだけど・・・。


 「えと・・・もし・・・神様っていうのが本当だったら・・・キ、キクちゃんは、人間じゃないってこと?」

こーちゃんが口を開いた。

けっこうストレートに聞いたな・・・。


 「そうだよ。私はそこに書いてある通り、このあたりの土地で水神って呼ばれてるものなの」

きくちゃんは真面目な顔だ。

・・・からかってる感じでもなさそう。


 本の物語みたいな展開・・・。

私の中の好奇心が大きくなってきた。

 もし本当だったら・・・本当に神様なら素敵。

お話じゃなくて現実に起こってるんだから・・・。


 「さっきあらちゃんが紹介してくれたけど、私かえでっていうの。きくちゃんが水神様でも同い年くらいだし、私は友達になるよ」

とりあえず、仲良くなれば色々教えてくれるよね。

 「え・・・いいの?」

「うん、もう友達だよ」

「・・・」

きくちゃんが明るい笑顔を見せてくれた。

たとえ神様じゃなくても、友達が増えるのは嬉しい。


 「カエデね・・・。じゃあ、何して遊ぶ?かくれんぼ?追いかけっこ?綺麗な石を探すのも得意だよ」

「まあ・・・ここら辺は俺たちくらいしかいないしな・・・」

あらちゃんが、また優しい顔で笑った。

きくちゃんの笑顔を見て「なんだっていい」って思ってくれたんだろうな。


 「・・・水神って言ったけど、あたしたちを油断させて、沼に引きずり込んだりしないでしょうね?」

はるちんも閉じていた口を動かした。

神様前提って感じで聞いてる・・・。


 「うーん・・・みんなが思う神様っていうのとは、合ってるかわからない。そう呼ばれるものって私は思ってる。でも安心してね。みんなと遊びたいだけで、沼に沈めようとか、さらっちゃおうとか、そういうことしないよ。怖がらせてたらごめんなさい」

きくちゃんはぺこっと頭を下げた。

見た目と話し方は、そんなに私たちと変わりなさそう。

 はるちんも悪気があって聞いたわけじゃない。

きくちゃんもわかってるから、怒らずにちゃんと答えてくれたっぽい。


 「うーん、普通の女の子にしか見えないけど・・・。ねえケイゴ君、どう思う?」

「まあ、見た感じ普通の人間だよな」

すずちゃんとけいちゃんは、半信半疑って感じだ。

あれ・・・そういえばけいちゃんは幽霊とかそういう類いはダメだったけど、きくちゃんのことは怖がらないな・・・。


 「あのさ・・・おキクさんは、僕たちと同い年くらいに見えるんだけど・・・何歳なの?」

こーちゃんも疑問を出した。

神様って聞いて、呼び方を変えたのか。


 「私が水神になったのは三百年前だね。その時は十二歳だったよ。・・・ああ、人とお話しできるっていいな」

「三百年?すごいね・・・。なんで今出てきたの?」

「神と呼ばれるものは、色々決まりがあるのよ。位っていうのがあってね、三百年経つと一つ上がるの。で、ちょうど今年で三百年だったんだ。私の力が上がってきて、沼から出られるようになったってわけ」

なんかすごい大きな話をされた。

でも、すぐには飲み込めない・・・。


 ・・・三百年なんて想像もつかないな。

見た目は私たちと変わらないからなのか、リアリティが無い。

神様とかそういうものは生活の中で話には出てくるけど、本当にいるって信じてる人はそんなにいないだろうし・・・。


 「・・・まあ、いきなり信じてっていうのも無理があるよね。・・・じゃあ、見せてあげる。遊んでくれるのはそのあとでいいよ」

きくちゃんは沼に向かって歩き出した。

 「え・・・」

「・・・は?」

「おおーー!」

「嘘・・・」

「どうなってんだ・・・」

みんなが普段出さない声を漏らした。


 「ふふふ・・・」

きくちゃんは、水面に足を置いて涼しい顔で立っている。

 「どう?」

そのまま沼の真ん中まで歩いて見せてくれた。

ああ・・・ここまでされたら信じるしかない・・・。



 「ごめんなさい、俺少し疑ってました。許してください水神様」

あらちゃんが頭をふかーく下げた。

 「そんな呼び方しないで。私のことはキクでいいよ」

すごい、もっと仲良くなりたい。

きっと去年までと全然違う夏休みになる・・・。

 

 「でもわたしたちは、キクちゃんみたいに水の上を歩いたりとかできないよ」

「これで遊ぶわけじゃないよ。みんなが行くところに付いてったり、お喋りがしたいの。それに、遊んでくれるなら私の力を少しだけあげる。・・・特別だよ」

「お喋りはあたしも好きだよ、一緒に遊ぼ」

「私も一緒に遊びたいな。こんな体験できるなんてすごいよ」

できれば取材もさせてもらいたい。


 「神様の力なんて僕たちが使えるの?」

こーちゃんはそっちの話に惹かれてるみたいだ。

 「実をいうと完全には無理、だってあなたたちは人間でしょ。だから私と同じようにってわけにはいかない。でもきっと楽しいと思うから、とりあえずどういう力がいいか言ってみて」

きくちゃんは段々砕けた話し方になってきてる。

たぶんこっちが元々の話し方なんだろうな。


 「そうだなあ・・・できるなら、未来のことがわかるようになりたいんだ。その日に何が起こるかとか」

「未来・・・なかなか欲張りね。はっきり言うけど無理。・・・でも夢で見せるようにはできると思う。それでもぼんやりとで、あなたにとって本当に大事なこと。そういう条件が付いてってところかな」

「そうなんだ・・・うん、それでもいいかも。試しにやってみて、おキクさん」

こーちゃんはもう「おキクさん」で呼ぶみたい。


 「じゃあ、じっとして目をつぶってね」

きくちゃんとこーちゃんが近付いて、おでことおでこをくっつけた。

 「ん・・・」

同時に二人の額が光った。

 「・・・」

「・・・」

「・・・」

「これで大丈夫」

きくちゃんが離れた。

 

 「あとは楽しみにして眠ることね」

「あの・・・う、うん、なんか実感ないけど。ありがとうおキクさん」

今ので力を渡したってこと?

・・・何か呟いたような気がしたけど、声が小さくて聞き取れなかったな。


 「じゃあ次は誰?」

「私・・・」

私もこんな力があったらって、前から思っていたものがある。

もしかしたらできるかも。


 「カエデはどんなのがいいの?」

「えっとね・・・人が何考えてるか、心が読めるようになりたい」

どうかな・・・。

 「それも難しいわね・・・でも、質問をした相手が嘘をついてるかどうかわかるって感じならできるかな」

欲張りすぎたのか・・・。

 人の考え方がわかれば心理描写の参考になると思ったんだけど・・・。

でも今聞いた力も便利そう。

真実か見極められるなら試してみたい。


 「うん、それでお願い」

「じゃあ、もっと近くに来て」

「うん・・・」

私ときくちゃんのおでこがくっついた。

・・・冷たい。

 「はい、おわり」

「あ・・・ありがとう」

あれ・・・私にはなにも呟かないのか・・・。


 「これならすぐ試せるよ。なにか私に質問してみて」

「え・・・と、じゃあきくちゃんは男の子?」

わかりやすい質問にしてみた。

 「そう、男の子だよ」

誰が聞いても嘘だとわかること。

でも、答えを聞くと同時に何か暗いものを感じた。

この感覚が嘘だってことなのかな?


 「どうなの?カエデ」

けいちゃんが目を輝かせて私の答えを待っていた。

 「・・・うん、わかるようになってると思う」

「すごいな、コースケのはよくわかんないけどさ」

私もよくわかってないんだけどね・・・。

そうだ、夜にお父さんとお母さんで試してみよう。


 「ほら、あんたたちはどうするの?いらないならそれでもいいけど」

「よし、オレ決めた。遠くの木に虫がいるか見えるようになりたいんだ。お願いします」

「なあんだ、それならできるよ。遠くのものが見えればいいんでしょ?・・・ついでに夜目も効くようにしてあげる。遠くを見るときは指で輪っかを作ってそこから覗きなさい、夜目はそのままで大丈夫よ」

「それがいい」

けいちゃんはあっさり決まった。

・・・本当にいいの?



 「じゃあ次はあたしね。お母さんにそそっかしいってよく言われるんだけど、けっこうその辺に体をぶつけたりするんだよね。そういうのなくなるようなのがいいな」

はるちんもすぐに決めた。

え・・・。


 「それは・・・ただ、注意してればいい気がするんだけど。でも、障害物を受け付けないようにってできるわね」

「いいじゃんいいじゃん」

・・・もっと考えた方が。



 「わたし、動物とお話できるようになりたい」

すずちゃんはかわいく笑った。

そして、それっぽい力だ。


 「お喋りは無理だけど、何言ってるかはわかるようにできるよ」

「それでもいい。ふふふ・・・」

動物か・・・カムパネルラとお話ししたいのかな?



 「最後は俺だな。ズバリだけど、時間を止めたりできる?」

あらちゃんはすごいのを出してきた。

でも・・・難しそう。


 「あー・・・それは私でも無理かな。そしたらね・・・一人に限るけど、相手の思考を短い間止めることができるっていうのはどう?相手からしたら、時間が止まったように感じる」

「おお、なんか面白そうだ。それがいい」

「ただ条件はあるからね。そんなにポンポン使えるようにはできないの。あんたの左手の指、骨を一度鳴らせば一秒、三本鳴らせば三秒、それでいいなら」

「いいな、かっこいいかも」

それ、いつ使うんだろ?

 女の子に触り放題・・・。

いやらしいことしか浮かんでこない。

私がおかしいのかな・・・。

 


 「全員終わったわね。ちなみに、この土地から出ると使えないから覚えといて」

きくちゃんが私たちをみてにっこり笑った。


 嬉しいけど・・・全部普通の人間にはできないことだよね?

こんなに簡単に渡していいのかな?

 ・・・まあいいか、ともかく六人が不思議な力を使えるようになったってことだ。

みんなのがどんな感じか、あとで聞いてみよ。


 「じゃあ一緒に遊ぼうよ」

すずちゃんがきくちゃんの手を取った。

 「そうね・・・早速って言いたいところだけど、もう夕方になっちゃうから明日にしようよ。私、今日の夜は少しやることあるし」

そっか・・・たしかにそろそろ帰らないと夕ご飯の時間になっちゃう。


 「ならさ、明日は僕とお喋りしようよ。聞きたいこといっぱいあるんだ」

こーちゃんが真っ先に誘った。

 「あら、コースケは積極的ね。いいよ、じゃあ明日はコースケの所に行く」

「約束だよ」

「うん、約束」

うー・・・私も水神の話を聞きたい・・・。


 「私もこーちゃんの所に行く」

明日の予定が決まった。

取材の一人目が神様だなんて、素敵な物語が始まりそうな予感がする。


 「えー・・・あたしも行きたいけど、早めに他の宿題片づけたいしな・・・。うーん・・・ちょっとパス。助手君、宿題終わったら電話するね」

「うん・・・ちょっと、なにすんの・・・」

「触りたくなっただけだよ」

はるちんはこーちゃんの腕を掴んで引っ張った。

ああ・・・そういうことか・・・。


 「ハルカ、それだったら一緒にやろうぜ」

あらちゃんがはるちんの背中を叩いた。

 「うん、いーよ」

「決まりな。カエデ、俺も宿題終わったら連絡するから」

「わかった」

二人ともきのうの内に終わらせておけばよかったのに・・・。


 「ケイゴ君、わたしたちはどうしようか?」

「・・・スズ、宿題一緒にやろう。明日起きたら行くから」

「しょうがないなあ。じゃあ、わたしたちも早く終わらせて地図作りに取り掛かれるようにしようね。あ、キクちゃん、わたしの所はいつ来てもいいからね」

すずちゃんたちも宿題をやるみたい。

こっちは、最初からそのつもりだったのかもな。


 「ねえねえ、地図ってなに?面白そう」

きくちゃんがあらちゃんの肩をつついた。

 「ああ、キクにはまだ話してなかったな。俺たちは、この大鳥沢の地図を作るんだ。だから大体その辺にいるから、いつでも参加してくれていいからな」

「なら、勝手に混ぜてもらうね。あんたたちには一度触ったから、居場所はすぐにわかるし」

きくちゃんはとっても嬉しそうに笑っている。

居場所がわかる・・・かくれんぼは絶対に強い。



 「あ・・・待ってみんな、帰る前に写真撮らないと」

帰ろうとした時、カメラのことを思い出した。

まだ写真を撮ってない。


 「ああそっか・・・そういえばキクって写真に写るのか?ていうか写真って知ってる?」

あらちゃんも忘れてたみたいだ。

ていうか、あらちゃんの家から持ってきたカメラなんだけど・・・。

 「バカににしないでくれる?今の時代のことは大体知ってるよ。お喋りな渡り神がよく話してくれてたからね」

「ああ・・・神様っていっぱいいるんだな」

「気にしなくていいよ。じゃあ・・・どこで撮る?」

「そこ」

七人で写真を撮ることになった。

カメラはさっきのままだ。



 「じゃあ動かないで笑っててね」

私はカメラのタイマーをセットしてすぐに走った。

空が少しずつ茜色になってきていて、さっきよりもいい色の写真になりそう。


 「カエデはキクの隣がいいんじゃない?」

「そうだよ。一番最初の友達だもんね」

けいちゃんとすずちゃんが横に一歩ずれてくれた。

嬉しいけど・・・タイマーの前にやってほしかったな。


 「キクはど真ん中だから一番いい顔しないとダメだぞ」

きくちゃんは水神の石の前に立っている。

 「え・・・そんな決まりあるの?」

「ある。ほら笑って」

ちょうど五時のサイレンが鳴ったと同時にシャッターが押された。



 「うん、いい感じだ」

「わあ・・・私変じゃない?」

「ちゃんといい顔してるじゃん」

「ハルカの方がいい気がする」

確認した写真の真ん中には、私たちの新しい友達が写っていた。

七人・・・みんなとびきりいい笑顔だ。

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