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70 報告

よろしくお願いします。



 3月27日


 二人の葬儀から1週間が経った。



 散骨が終わりその報告の為に由貴の実家へ向かう。


 由貴の家の前に駐車し歩いて玄関まで来た所で軽く深呼吸した。


「ピンポ~ン」

 馴染んだチャイムの後を追って誰かの足音が聞こえ、そのまま玄関の扉が開いた。


「いらっしゃ~い美成ちゃん、予定通りね上がって」

 対応したのはお姉さんで、リビングへ通されると既に家族勢揃いだった。


「この度は色々とご迷惑をかけましたが一応、全ての手続きが終わりましたので、ご報告致します」


「ねぇねぇ、散骨はどんな感じだったの?」

 お姉さんは興味津々で前のめりに聞いて来た。


「茅ヶ崎から船で沖合20kmの辺りまで行ってから細かく砕いた遺骨が入った紙袋を海に投げ入れる感じで散骨しました」

 極々簡単に説明するとお姉さんはちょっとがっかりした様に言った。

「え~?袋ごとなの?何か荘厳な生演奏の中で遺骨を海にサラサラと撒くんじゃないの?何か思ってたのと違うわねぇ」

 散骨の仕方は色々で、もしかしたらサラサラと撒く場所も有るのかも知れないが、この度はそういう形だったと説明した。


「あたしも康介の遺言で散骨の時にギターも投げ入れてくれって言われてて、いざ、投げ入れようとしたら慌てて止められました、そう言うのダメだって軽くお説教されちゃいました」


「それじゃこれで由貴ちゃんも少しは幸せになれたかしらねぇ、パパ」

「あぁ、そうであって欲しいな、で、念の為に聞いておきたいんだが、散骨した場合はその後のお墓参り的な事はどうするんだ?」

「あ~あたしも良くは知らないんですが、業者の人が言うには特に無いらしくて、それでも何かしらの供養がしたいなら砂浜から花束投げ入れる位じゃないかと聞かされました」

 美成としてはそれを実行するつもりだった。


「じゃあ、オヤジ、姉ちゃんの墓参りはどうなるんだ?墓参りしてから海行くの?」

 弟君はかなりのお姉ちゃん子だったので墓参りは欠かさないつもりの様だ。

「それは、お前の好きにすればいい、基本的にはウチの墓参りで良いだろう」

 散骨は康介と美成の為のモノだったのでそれで良いだろうと話は纏まった。


「で、美成ちゃんは今後どうするの?結婚とか…」

 ママちゃんが心配そうに聞いた。


「あたしは心の中ではあの人と結婚したつもりなので別の人との結婚は考えていません、彼のマンションに住む事にしたので彼の思い出だけで生きて行きます」 


「あなたの人生に口出しはしないわ、でも由貴が居なくなったからと言ってもたまにはウチに来てあの子の思い出話とか聞かせて頂戴ね」

「はい、ありがとうママちゃん」


 こうしてその後の報告を完了した。




 家に向かい車を走らせて居ると美成はふと髪を切ろうと思い立った。

 そこで向かったのは康介の行きつけの美容院だ。


 カランコロンカラ~ン

「いらっしゃ~い」

「お久しぶりです、その節はどうも有難う御座いました」

「お~よく来たね、その後どう?しんどくない?」

「えぇなんとか元気です、で今日は髪を切ってもらいたくて…」

「お~なるほど、じゃあどうぞこちらへ」


 美成は靴を脱ぎスリッパへ履き替えると案内された洗髪用の席へ座った。


「美成ちゃんって言ったっけ?あの後散骨するって言ってたけどもう行ったの?」

 シャワーの温度を確かめつつ髪を湿らせながらマスターは経緯を聞いて来た。


「相模湾に散骨しました」

「そっかぁ、まぁ本人の希望が叶ったわけだから万々歳か、ガハハ」


 マスターは笑いながらセミロングの髪をシャンプーした。


「で、籍は入れられたのかい?」

 婚姻届けの証人として名前を借りていたので、美成はこの説明もするつもりで来たのだ。


「それは駄目でした、でも今は納得出来てますから大丈夫です」

「そっかぁ、まぁ何が最善なのかは俺には分かんねぇからお前さんが良いって言うんなら何も言うこたぁねぇな、がんばんな」

「ありがとう御座います」


 洗髪が終わり席を移動する。

「で、どうする?毛先だけ整える感じ?」

「いえ、ボブにして下さい」

「折角のセミロング、勿体ないんじゃない?」

「別に拘りが有る分けでも無いので、何か気持ちに区切りを付けたい気分なんです」

「よっしゃ、ボブね、了解」

 そう言ってマスターはハサミを入れ始めた。


 髪を切りながらマスターは康介の話をしまくり、美成は笑いまくっていた。

 それは美成とマスターの共通項として需要と供給が成立した様だった。



「こんなんでどう?」

 そう言ってマスターは手鏡を渡してきたので、それを受け取り「大丈夫です」と一言。


「今日はあの車で来たのかい?2シーターの」

「はい、もう慣れたし暫くは乗ろうと思います」

「そっかぁ、アイツもあの手の車好きだったから良いんじゃない?」

「有難う御座います、で…、また次も来て良いですか?」

「おお、勿論大歓迎だよ、いつでも来なよって定休日は勘弁してな、ガハハ」

「ハハハ、じゃあまたお願いします」



 席を立ちレジの前で財布を出すとマスターが一言。

「今日はサービスだ、次からよろしくな、ガハハ」

「でも…」

「今日はお代以上の報告が聞けたし、アイツの話聞いてくれたからそれでチャラだ、良いね?」

「分かりました、ありがとう御座います」


 そう言って店を後にした。


「こんなに良い陽気だし、あの人なら絶対行くよね!」

 そう呟いて車をオープンにして桜が咲き誇る箱根ターンパイクへ向け車へ乗り込みそっとアクセルを踏み込んだ。


読んで頂き有難う御座います。

完結後にその他の部分も合わせて修正していくつもりなので

完結の半年後1年後とかにもう一度読んで貰えたら有難いです

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