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69 2人の葬儀

よろしくお願いします。



 由貴が亡くなった2日後に由貴の家族により葬儀が行われ、3日後に火葬する事になった。

 

 葬儀会社を康介の時と同じにする事で色々手間が省け火葬の予約は上手く行った。

 火葬場では幾つかの炉が並んでいるがその内の隣り合った二つの炉で火葬がされる手はずだ。



 3月21日


 火葬場では由貴と康介の亡骸の収められた棺桶が並べられ、職員が一つずつ炉に入れていく。

 まずは康介の方が炉に入れられ重そうな扉が閉められる。

 間もなく由貴の方が炉に入れられて行くが家族からのすすり泣く声が聞こえる。

 美成はここでは泣かなかった、自分には覚悟が出来ていたのだ、二人の最後をちゃんと見届ける覚悟だ。


 火葬は1時間程掛かるので由貴の家族は待合室へ向かったが、美成は二人の炉の中間辺りに佇み、その全てを見続けていた。

 それはある意味、二人で執り行われる式なのだから見届けてあげなくてはと言う気持ちからだった。

「おめでとう由貴、おめでとう康介、やっと一緒になれたんだね」



 火葬が終わり、それぞれのお骨を骨壺へ入れていく。

 康介には身内が美成しか居なかったので、そこはママちゃんに協力してもらって二人でお骨を移していく。

 幾つかの骨を移し終えると残りのお骨は職員がまとめて移していった、簡略化や時間短縮なのか分からないが、別にそこに拘っても居ないので美成は事の次第を眺めていた。

 ママちゃんの手が空いたタイミングで由貴の方も同じ様にお骨を移し始めた。

 こうして二人の火葬が終了しお骨は一旦自宅へ持ち帰る事となった。


 そして翌日に康介の散骨の予定が組まれていた為、由貴の自宅へ美成は同行し約束の遺骨の一部を康介の骨壺へ移させて貰った。


「夏川家の皆様、この度は本当に有難う御座いました。このご恩は亡き山城康介に変わり感謝いたします」

 そう挨拶して夏川家を後にした。




 帰宅後にもやる事が有った。

 二人の遺骨が入った骨壺の中に予め用意しておいたすりこぎ棒を差し込み、大きく残った骨を砕いていくのだ。

 少々抵抗は有るが散骨する為にはこうしなければならないと業者の人から言われ、躊躇しながらも二人の為と思い粉々にしていく。


 夜になり、しっかりと封のされた骨壺を抱え美成はベッドへ潜り込む。

「久しぶりに一緒に寝られるね」

 そう語り掛けて枕元に骨壺を置いたまま眠りについた。




 一夜明けて散骨に向かう為に車の助手席に骨壺の入った木箱を置き、しっかりとシートベルトを回し、その上からソフトケースに入れたギターをダッシュボード下へ突っ込むように載せた。

「安全第一だからね」

 そう康介達の遺骨に語りながら車を出す。



 葬儀社に着くと社用車のワンボックスに職員が2人乗り込み、今回は身内が一人のみと言う事で同乗して行く事になった。

 車の中で骨壺の中の遺灰を小さな紙袋へ詰め替える様に言われ、一瞬「なんで?」と思ったが、まぁそう言うモノなんだろうと移し替えていく。


 向かう場所は茅ヶ崎港から沖にでて約20㎞の海上、相模湾のど真ん中だ。

 チャーターした漁船の先端の方に集まって乗り、業者の方が準備をする。


 そして沖合20㎞程の地点で停止し散骨が行われる。


 葬儀と違い儀式的なものが有るわけでも無く職員の方の合図で「ではどうぞ」。

 所謂格安散骨業者なので余計な事を一切省いているのでこんな感じなのだ。



 ここで美成は一緒にもって来ていたギターを出し脇に置いた。

 業者の方は何が始まるのかと事の次第を見ていた。


 そして美成は移動中に遺灰を移し替えた厚めの紙袋を取り、漁船の舳先からポイっと投げ入れて一言。

 「じゃあね」


 思っていたのとは違っていたが色々問題になるのを避けるための方法だそうだ、業者の方もそれを見届け作業終了を確認し船長へ歩み寄ったその時。


 美成は持って来ていたギターを頭の上に持ち上げ海へ投げ入れようとした。

 業者の人や船長は驚いて、「何やってんの」と慌てて寄って来て、美成の両腕を船長と業者の人がそれぞれ抑えた、美成は「え?ダメなんですか?」と白を切ってとぼけた。


 遺骨を粉々にするのも後に自然に帰りやすく環境に悪影響の無い様に考えられたもので、その事は以前説明を受けていた。

 その為、業者もまさか割と大きな固形物を投げ入れようとするとは思って居なかったらしく、ギターを持ち込んだのはお別れに1曲捧げるものだと思っており、演奏しなかった事に疑問を持ちながらもその事を予想していなかった。


 散骨にはまだまだルールの整備が伴っていない部分が多いらしいが、ことギターとなればコレは投棄に当たるので、どこであれNGだろう。


 美成のまさかの行動に慌てた業者らはこの後、何一つ投げ入れない様にと釘を刺し帰港すると告げると、美成は残念な顔をしながらも「すいませんでした」と謝りギターをもとのケースにしまいつつ、一枚のピックをそっと海の方へ飛ばした。


 そのピックは康介が以前作ったニックネーム入りのオリジナルメタルピックだった。

「ごめんね、康介、それで我慢して」

 と美成は海に向かって囁いた。


読んで頂き有難う御座います。

そろそろ完結となりますが如何だったでしょうか?

完結後にその他の部分も合わせて修正していくつもりなので

完結の半年後1年後とかにもう一度読んで貰えたら有難いです

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