66 夏川家の決断
よろしくお願いします。
3月に入り白い梅の花も満開を過ぎたが、今は早咲きの河津桜が満開だ。
病院内にある河津桜の小枝を看護師が数本切り取り各病室へ飾っていた。
「コウスケにも見せたかったな、桜の花」
そう言った由貴は、コウスケが言っていた桜はソメイヨシノだと理解した上で「あと一月見守ってねコウスケ」と花瓶の桜に向かって呟いた。
康介が亡くなって3週間が過ぎ、空いたベッドには既に別の患者が入っていた。
女子用の由貴の部屋にも二人新規に入って来たので以前ほど大騒ぎも出来ず、かといって騒げるほどの元気も気力も無くなって来ていた。
「美成遅いな、今日は何やってるんだろ…」
この日、美成は病室には来ていなかったが病院には来ていた。
病院の入り口、外来用ではなく面会用受付前のベンチに美成は腰を掛けていた。
「あら、おはよう美成ちゃん」
「おはよう御座います、ママちゃん」
美成は由貴の母を高校生の時からママちゃんと呼んでいた。
「誰か待ってるの?」
ママちゃんこと由貴の母が尋ねる。
「実はママちゃん、いえ、夏川さんに折り入ってお願いが有ってここで待っていました」
「なに、そんなに改まってぇ、じゃ~取り合えず病室行こうか」
「あ、いえ、出来れば由貴以外の皆さんと話したくて…」
「あら、そう、じゃぁこの後みんな来るからどこかのお店に入る?」
「はい、お願いします」
そう言って家族に連絡し以前康介と行った静かなカフェの場所を伝え、自分たちも店に向かった。
美成の車にママちゃんが便乗しカフェへ向かう事にした。
「美成ちゃん、凄いの乗ってるのね」
「あぁ、まぁ、あの人の趣味に合ってそうだったのでつい…」
照れ隠しで頬をポリポリしながら走りだす。
カフェに着き、まだ客の居ない店内の最奥にある4人掛けの席を確保し家族が揃うのを待っていると直ぐに扉を開けて入って来た。
ママちゃんが手を振り呼び込むと美成は席を開け4人掛けの席に椅子を一つ追加しそこに座った。
「今日は美成ちゃんから何か話したい事が有るんだって、それでココに来てもらったの」
と、ママちゃんが説明してくれたのを引き継いで美成が話を切り出す。
「わざわざスイマセンでした、今日は折り入ってお願いがありましてお話させて頂きます」
「なんか硬いね美成ちゃん、普通で良いよぉ」
と由貴の姉が硬くなった美成の緊張を解し、美成もそれに乗じる。
「皆さん知ってると思うけど、あたしと付き合っていた山城さんが先日亡くなり葬儀も終わりました、その節はママちゃんありがとう」
「良いのよ、続けて」
「はい、彼の今の状態はエンバーミングと言う保存方法を取って遺体は葬儀場に保管されています」
「それ、何か意味あるの?」
お姉さんが疑問に思ったのは当然の事だ、そして美成が説明する。
「はい、実は由貴の状況をあたし達が知った後であの人の希望として同じ日に火葬して貰いたいと言っていました」
「へぇ、なかなかロマンチックじゃない?」
お姉さんはちょっと前のめりになった。
「由貴がまだ健在な内にこんな話をしづらいのですが、火葬の時期を合わせる事に許可を貰えませんか?」
ここで弟が口を挟んだ。
「別に許可要らなくね?予約を合わせれば自動的にそうなるんじゃない?」
「まぁそうだけど、気持ちの問題とか有るかも知れないのでその確認の意味でも、どうかお願いします」
「まぁ、反対する理由は無いわよね、ねぇ?パパはどう?」
ママちゃんが父親へ振った。
「あの子達の話はママから聞いてるからあの子の為になるなら良いだろ、由貴には?」
「まだ話していません、皆さんの許可が出てから話そうと思っています」
「あたしはOK、てかコレ反対しないわよね?」
そう言ってお姉さんは纏め始める。
そして家族全員一致で同時火葬への許可が下りた。
「あのぉ、有難う御座います、で、もう一つお願いが有るのですが…」
言葉の最後が知りつぼみになった美成にママちゃんが大丈夫だからと話を促す。
「あの人は火葬後に散骨する事になっています、そこで無理なお願いですが散骨も一緒にとはなりませんか?当然費用はこちらが持ちます、どうか!」
ここで両親の雰囲気が変わった。
「美成ちゃん、流石にそれは無理だと思うわ、ねぇパパ」
「あぁ、あの子のその後の手配も済んでいる当然ウチの墓に入れる事になっている、だから散骨は無理だな、悪いが…」
「そ、そうですよねぇ…一般的にはそうなりますよねぇ…」
下を向いて小さな声で自分を納得させようと呟いた。
「何言ってるの、そんな古いしきたり意味あるの?もしかしたら結婚したかもしれない相手と死んでからも一緒なんて凄いじゃない」
お姉さんが力説した。弟も。
「俺はどっちでも良いと思うけど結局ねえちゃん次第じゃね?」
その後20分程度の家族の話し合いが続き一つの結論が出た。
それは第1に由貴本人の意思を確認する事。
第2に遺骨の極一部、指先サイズの遺骨をあの人の遺骨に混ぜて散骨する事。
残りの遺骨は夏川家の墓に入れる事が決まった。
まだ開店直後くらいで他に客が居なかったもののちょっとした騒ぎだったかもしれないので、店員とマスターに謝って店を出た。
そして由貴に事の顛末を説明し回答を求める。
「わたしも散骨する」
「もう決まった事なの1部だけよ、分かって」
「むぅ」
由貴はママちゃんの言葉には素直に納得して、こんな感じでそれを了承してくれた。
かなり書き直しや入れ替えをしたので辻褄が合わない様な箇所が有ったりしたらゴメンナサイ(><)
気づいたら修正します!




