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65 暗闇に消えて

よろしくお願いします。


 2月27日



 由貴の看病の為に今日も朝から病院へ来ている。


 由貴の病状はと言うとやはり肺に転移した癌が更に大きくなった様で最近は咳き込むことが多くなった。

 1日付き添っていても楽しく話が出来るのは2時間ほどで、最近は昼夜を問わず寝ている時間の方が長くなっていた。



 当然、由貴の家族もわざわざ起こす事なく母親以外は寝顔を見ると「じゃあ帰るね」と母親に告げて帰って行った。

 母親は美成と同じく朝から夜まで居る様になっていた。


 実の母親が世話をしているので美成には大してする事は無かった、そこで美成は何か由貴に出来る事を考えていると、3人で楽しく話して居た時の事を思い出した。


「そうだ由貴、あたしちょっと出掛けて来るね、また戻ってくるから寝ててね」

 そう言い残して病室を出て行った。



 美成は駐車場に止めた車に飛び乗りある場所へ向かった、それは思い出の場所巡りで行った場所だった。

 あの時は、それぞれの場所を巡っただけだったので、写真の1枚すら撮っていなかったのだ。

 そこでその思い出の場所を映像で記録して由貴に見せてあげようと思い立ったのだ。


 真っ先に訪れたのは、あのベンチだ。

 海岸沿いにある小さい空き地にあるただのベンチをスマホで録画しながら歩き回り色々な角度から撮影した。


 続いて告白の地でも有る松林に向かった。

 これは康介が亡くなる前に由貴に言った事が気になって、後になって由貴に聞いたところ野球場の近くの松林で告白されたと聞かされたのだ。


 その松林まで行ったのだが、果たしてどの木が告白の時に居合わせた木なのかが分からず、結局松の木を1本1本撮影して歩く動画になってしまった。

 これは流石に本人にしか分からないので今回はコレで良しとする。


 後は3人の共通点である母校へ向かう。

 ここは以前も簡単に見学出来たのであっさり入れたが、撮影には個人名等がハッキリ分からない様に引いた写真でお願いしますと念を押され当然動画はダメだった。


 そうは言うものの昨今のスマホカメラの性能では引いた画でも拡大すれば文字など簡単に読めてしまう位、高解像度なので撮った画像確認されたら恐らく全部OUTって思うのだが、撮影した画像の検閲は無く、無事に持ち帰れた。

 そもそもネットに上げるつもりも無いので心配ご無用。


 取り合えず、これにて撮影は終了し病院へ戻る事にした。



 病室の由貴は起きていて母と会話をしていた。


「美成おかえり~、どこ行ってたの?」

「由貴、調子良さそうね、う~んとね~、いい所」

「今日は良いみたい、で、なになに~何処なの?」

 そこで美成はスマホを取り出しサササっとスワイプして動画を再生し由貴に見せた。


「あ~あのベンチだぁ、今日撮って来たの?」

「うん、そう、で、どうかな?昔のまんま?」

「へぇ~昔はこの公園の周りに何も無かったのに色々建物が建ってるのねぇ、公園のサイズも小さくなってる」

 とは言え目的のベンチ自体は何も変わって無かった様子。

 そして一つの動画で由貴が反応した。


「あぁ~そうそう、目の前の堤防の先ってすぐ砂浜なのよ~」

 それはベンチから立ち上がった体で撮った動画で、立ち上がったら直ぐ目の前の堤防から先に見える海を映した動画だった。

 ベンチの正面には公園側と砂浜の境目をコンクリートで隔てる様に1m程高くなっていて、その先の砂浜は約2~3m低い位置に有る。

 なので、ベンチに座ると砂浜どころか海も見えないのだ。


 由貴は何かを思い出したのか続けて言った。

「夜ね、2人でベンチに座ってた時に急にコウスケが立ち上がって走りだしたの」

「え?何が始まったの?」

 由貴からすればポカーンの一言だろう。


「そしてね、その勢いのまま1m位ある堤防を飛び越えて暗闇に消えてったの、プクク」

「え?消えてったってどういう事?」

 由貴は笑いを堪えながら続けた。


「あそこって下が砂浜なんだけど堤防の一番高い所から砂浜まで高さが2~3m位有ったのね、そこ飛び越えて砂浜に着地して驚かそうと思ったらしいんだけど、プクク」

「え~、なになに~何がそんなに面白いの?」


 由貴はその時、決定的瞬間を見たのだった。

「わたしは慌てて砂浜を覗き込んだんだけど真っ暗で良く見えなくて大丈夫?って声かけたの、そしたら、プクク」

「勿体ぶらないで続き続き」

 美成は待ちきれない様だ。


「コウスケが一言、やっちまった…って言って、ずぶ濡れで上がって来たの、アハハ」

「え~何で?ここ砂浜でしょ?なんでずぶ濡れなの?」

 そうなのだ、美成の撮影した動画ではここは砂浜で波打ち際まで少なくても20m以上は有ったのだ。


「後で聞いたんだけど、普段は濡れる様な事は無いはずなんだって、この日は真っ暗って言ったでしょ?たまたま新月で大潮だから波が大きくて堤防まで波が来てたらしいのよ」

 やっと笑いも落ち着いた様だ。


「じゃあ、こういう事?由貴を驚かそうとしてジャンプして平然と戻ってくる予定だったのが、大潮のせいで何時もより岸近くまで波が来てて、着地したらそこは海だったって事?」

「そうそう、そんな感じ」

 男って言うのは、たまにこういうアホな事をしでかすモノなのだ。


「なるほどねぇ、彼の思い出の場所巡りの時でも、小さい頃から川を飛び越えたり高い所から飛び降りたりする話してたけど、そこに繋がるのねぇ、納得したわぁ」

「してたんだ?そんな話、わたしも凄く納得」


 その後、松林や母校の動画を見せたが、それ以上の笑いは起こらなかった。


かなり書き直しや入れ替えをしたので辻褄が合わない様な箇所が有ったりしたらゴメンナサイ(><)

気づいたら修正します!

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