63 実家
よろしくお願いします。
土曜日、この日は午前から車で実家へ向かっていた。
康介が亡くなり、これまでの事を報告する為、朝から重い腰をレカロシートに預けマンションの駐車場を出た。
「美成ちゃん、大分疲れてるみたいだけど大丈夫なの?」
「大丈夫よ、お母さん、それよりお父さんは?」
「昨日、会社帰りに飲んで来たらしくて家に着くなりお風呂にも入らずに寝ちゃってそのままなの、どうする?起こそうか?」
「そう、じゃぁ話はお父さん起きて来てからにしようかな」
そう言って話は後回しにして母親と昼食を作りつつ待つ事にした。
20年程前、美成が小学生の頃に買った一戸建ての実家。
美成が康介の所へ行ってしまい、この家には両親の二人だけとなり、静かな日々が多くなった。
両親の仲も良く不安な要素は無いのだが、それでも日常に空白が増えた事は美成にも気がかりだった。
今となってはちょっと古めかしいシステムキッチンに二人で立ち、お湯を沸かし具を刻んでいる。
「こうやって料理作るのも久しぶりね、向こうでも料理はしてたの?」
「一応ね、彼が弁当ばかりだったから割とやってたわよ」
「そうなのね、楽しかった?」
「うん、最高だった、出来ればもっと続けたかったけど…」
そう言って言葉に詰まり涙ぐむ娘を胸に迎え母親は言った。
「でも良い思い出なんでしょ?」
美成は涙を拭って「うん」と子供っぽく答えた。
暫くして出来上がった料理は自家製ミートソースのスパゲティだった。
「美成ちゃんの大好物だもんね」
「あたしが作っても何か味が違うのよねぇ、なんで?」
「それは隠し味のせいね」
「え?何か入れたの?教えて!」
「う~ん、それは無理ねぇ、だって母の味って言う隠し味だから、フフフ」
「なんだぁただの自慢かぁ、それでもやっぱ何か違うんだよなぁ」
「美成ちゃんも子供が出来たら使える様になるわよ」
「だと良いんだけどねぇ、ヘヘヘ」
2人が皿に盛ってると父親が起きて来て水をコップ一杯一気飲みした。
「あ~飲み過ぎたぁ、でも腹減ったぁ、お父さんの分も有る?」
そう言いながら椅子に座ると出来立てのスパゲティが3人分テーブルに並べられた。
「久しぶりに3人ね、じゃあいただきま~す」
母親の言葉に釣られて手を合わす二人。
母親と美成はフォークでクルクルと撒きながら食べているが父親は何故か箸で食べている、これぞ日本男児!か…
食事も終わり美成は改まって話し始めた。
「この数か月、あたしの我儘を聞いてくれて本当にありがとう、3月13日、山城康介さんは他界しました」
「そうか、残念だが仕方のない事だからな」
「そうね、でも良かった、美成ちゃん帰って来てくれたから…」
そう、両親は美成が実家へ帰って来るものだと思っていたらしい。
「それでね、あたしあの人のマンションをそのまま借りる事にしたの、だからココには戻って来れないわ」
「え?何でなの?結婚もして無いんでしょ?」
「俺も聞いてないぞ、そんな話、美成が帰って来るって言うから昨日もつい…」
両親の思いは分かるが、それでも自分の気持ちを大事にしたかったのだ。
「あのね、あたしね、婚姻届け出したの」
「え?まさか、あの男約束したのにぃ」
「籍入れたのか?美成」
「ううん、役所で却下されちゃった…名前の漢字が違うからって…」
「そ、そうなの、良かったわぁ」
「ああ…」
ここまであからさまに安心されるとちょっと悔しい。
「やっぱり籍入れない様にって言ってたのね、お母さん」
「うん、ごめんね美成ちゃん、でも親としてはそこは譲れない事なのよ分かって」
「そうね、今はもうその事については何も思ってないわ」
「ありがとうね、でもそれならやっぱりウチに帰って来なさいよ」
「ごねんね、それは無理なの、まだまだやらなきゃいけない事が有るから…」
そう、まだやらなくてはならない事が有る、いや、これからやらなくてはいけない事が有るので美成は実家へはもう戻らないと言うつもりでいた。
「まぁ良いだろう、家もそんなに遠くないし呼んだら来れるくらいなら美成の気の済む様にしたら良い」
「折角また3人で暮らせると思ったのに…」
「ありがとうお父さん、ごめんねお母さん」
本当に今まで有難う御座いました、お父さん、お母さん。
「しかし、お前一人で生活は大丈夫なのか?会社辞めたんだろ?」
「これでも結構貯金有るから2,3年は何もしなくても大丈夫よ、彼の遺産も多少あるしね」
「遺産っていくらあるの美成ちゃん」
「もぅ、そう言う事は聞かないの、お母さん」
「でもねぇ…」
取り合えず両親の説得は済んだので今日一日、実家で過ごす事にした。
そして翌朝。
空き地に止めていた車を玄関先に横付けして父親の準備を待つ。
「お待たせ、さて、何処に連れてってくれるんだい?」
「取り合えず箱根方面かな、何か食べたいものとかある?」
「う~ん、そうだなぁ、眺めの良い所でコーヒー飲めたらそれだけで良いかな」
「OK、良い所知ってるから任せて!」
そう言って玄関先で見送る母親に手を振り「お母さんはまた今度ね」と言って颯爽と走りだした。
この車、3人は乗れないのだ。
かなり書き直しや入れ替えをしたので辻褄が合わない様な箇所が有ったりしたらゴメンナサイ(><)
気づいたら修正します!




