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63 彼女達の使命②

よろしくお願いします。



 2月16日


 美成はその後も今までと同じ様に病院へ通い由貴の看病を続けていて、それと並行して康介の後の事をあれこれとこなしていた。


 役所関係の事は司法書士に任せているので美成はまず一緒に住んでいたマンションの契約を自分の物として再契約した。

 これは康介にはこのまま住み続けるからと予め話して居たので大家にも事情を説明すると、以前康介から前家賃と遺品の処分費用を貰っていると言われたので、ゴミとして処分はせずそのまま美成が引き受ける事で了解を得た。

 浮いたお金はそのまま家賃に充てて貰った。


 部屋には康介の服や身の周の物もそのまま残っていて、そして愛用のカメラやギターもある。


「そう言えばギター弾けって言ってたっけ、あたしに弾けるかなぁ」

 そう言ってギターを担ぎ指でボロンと弾いてみる。

「あっチューニングとかしないとダメなんだっけ、そっから勉強しないとね」

そう言って一旦ギターは仕舞う。


 他にも康介愛用のPCも有るので電源を入れてみる、パスワードは聞いているのですんなりログイン出来た。

 以前二人で話していた旅行計画などのファイルが有ったはずので色々開いていると写真のフォルダが有った。

 中には20代前半の康介の記録とも言える写真が入って居たので1枚づつ開いてみる。

「へぇ~こんな所行ったんだ、あたしも行こうかなぁ、一人旅デビュー出来るかな」


 しかし二人で行った京都の写真はなぜか無かった。

 そこで気が付いたのがカメラだ、恐らくPCには移動せずに居るのだろうとカメラを探し出しメディアカードを取り出しPCへ繋ぐ。

「お~有った有った、京都だぁ高山も有るぅ、懐かしいなぁ」


 1枚1枚を懐かしさと合わせて堪能し思い出作っておいて良かったとテーブルに頬杖を突きながら微笑んでいた。




 夕方になり郵便受けに役所からの封書が届いていたので取り出し持ち帰り、部屋でその内容を確認する美成の顔は青ざめていった。


 中に書かれていたのは婚姻届の不受理の通知だった。

 不受理の理由として「記載された夫の氏名が戸籍と相違する」との事だった。

 良く見ると【山城康介】と書く所を【山城康价】 となっていた為だ。


 相手の名前を書く事はそれなりに有ったので記憶しているつもりだったが、流石に本人が書いた文字が間違っているという事自体を想定していなかったので、そこまでの確認はせずに提出を急いだせいかもしれない。


 美成は諦めずに翌日役所へ出向き事の次第を説明した。

 役所へ行くにあたって一つ用意したものが有った、彼直筆の名前が書かれた書類だ。

 それは昨日契約を更新したマンションの返却された過去の賃貸契約書だった。

 そこにはボールペンで書かれた康介の直筆のサインが有った。


 役所では本人の婚姻の意思が確認さえ出来れば許可は下りるとの説明がされた。

 しかしそこで問題になった本人の意思の確認で一悶着あり、夫となる本人が既に死亡している事を理由に意思確認出来ない為、役所の人は届出の受理は出来ないと言って引かない。


 そこで昨日用意した直筆のサインを提示し筆跡を確認してもらうが、彼の筆跡とする根拠に乏しいと言う事で却下された。

 そもそも賃貸契約書を本人が書いたのかが証明出来ないからだ。


 まさかこんな事態になるとは予想もしていなかった美成は焦っていまいち考えが纏まらないまま担当者へ詰め寄っていた。


 そこで美成は思い出した。

 あの夜こっそり撮っていたやり取りの映像を見せれば説得出来るんじゃないかと。


 映像には二人の「籍を入れて、いや無理だ」の長いやり取りの後に根負けしてサインする姿が映っていた。


 これを根拠に本人の意思が有った事を美成は強調したが、客観的に見た職員にはどうも無理やり書かせたようにしか映らなかった様だ。


 結局、婚姻届けは受理されず、あの人の生きた証としての苗字を受け継ぐ事は叶わなかった。


 そして思う。

 これは康介のあたしへの思いから意図的にやった事なのだろうと解釈し、生前、前向きに生きる様に言った手前、自分が後ろ向きになってはいけないと、この件に付いてはスッパリ諦める事にした。





 その日の午後、由貴の病室へ顔を出し事の顛末を説明する。


「そっかぁ、苗字貰えなかったのかぁ、残念だったね、でもさぁ、美成、それは他人が見た時の物でしか無くて自分たちからすればどうでも良い事かもしれないよ?」


 そう、苗字や夫とか家族って言う言葉は結局他人に対しての自己紹介でしかなく、本人達の間ではわざわざ確認する事すらない情報だった。

 まぁ、積極的に他人へ紹介したい場合には有効なのだろうけど…


「多分ね、あの人こうなる様に前々から考えてたんじゃないかと思うの」

「そうなの?」

「うん、ウチの両親に会わせた時に何か言われたみたいだったから…」

「そっかぁ、でも今はどう?諦めきれない?」

「ううん、もう切り替えたよ、あたしは前向きに頑張るから」

「おぉ~、よしよし」

 そう言って由貴は美成の頭を撫でた。


「でも、役所で結構バトッてたから疲れなのかなぁ、今日はちょっと体調悪いみたいなの」

「え?無理しないで、わたしは大丈夫だから家帰って休んで良いよ」

由貴の言葉を受け取り美成は病室を後にする。



かなり書き直しや入れ替えをしたので辻褄が合わない様な箇所が有ったりしたらゴメンナサイ(><)

気づいたら修正します!

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