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62 彼女達の使命①

よろしくお願いします。



 2月14日


 康介の亡くなった翌日、二人の行動はそれぞれだった。



 地下の安置室へ車椅子に乗った状態で母親に押されて由貴は別れを言いにやって来た。

 恐らく1日2日でここから運び出されて行き、葬儀を執り行うだろう。美成はその葬儀の為か朝からまだ顔を出していない。


 その葬儀へは自分は参列出来ないかもしれない、これが本当のお別れなのかも、と…。

「お母さん、少しだけ二人にさせて貰える?」

「ええ、分かった、外で待ってるわね」

「ありがとう、お母さん」

 そう言って母は廊下へ出て静かにドアを閉めた。



「コウスケ、10年前のあの日、別れずにいたらどうなってたのかな?

わたしは内心結婚も考えていたんだよ、本当だよ?

結婚してたら子供も居たのかもね、あっ、でも、そうか…子供居たら両親をいっぺんに無くす事になってたのか…

どっちが良かったのかなぁ、ねぇ、コウスケは子供欲しかった?

わたしは本当はもっとあなたと居たかったなぁ、なんで別れちゃったんだろう…

コウスケは何時もわたしを楽しませてくれたし、助けてくれたし、優しくしてくれたし…

昨日までの入院生活も苦しいよりも楽しくて仕方なかった フフフ。

だからね、コウスケが桜が咲くまで頑張れって言ってくれたからわたし頑張るからね。

ねぇ、これが最後だから良いかな?美成には黙っててね」


 そう言って康介の冷たい唇にリップを塗った暖かい唇を重ねた。


「んもうっほんとコウスケはキス下手なんだから、フフフ」

 由貴は堪えきれず寝台に置かれた康介の体を抱いて声を殺しながら泣いた。




 美成は美成で大変だった。


 美成は亡くなった康介に言われていた【後の事】について朝から慌ただしくしていた。


 まずは葬儀、と言っても身内だけで済ます質素な物だが、通常は自宅や葬儀場で最後の別れをし、その後火葬場で火葬するのが普通たが康介の場合はちょっと違うのだ。

 と言うのも康介が由貴の病状を知ってから思う事が有り、以前マンションのポストに舞い込んだ葬儀場の広告を見て美成を通して相談して居た事が有る。

 それは出来る事なら由貴と一緒に火葬してもらいたい、と…、そしてそれにはエンバーミングと言うのが良いと説明され、それを依頼したのだ。


 エンバーミングと言うのは、死者の体に防腐処理などを施し長期間保存する事だそうだ。

 そしてそれをする事で由貴と一緒に火葬する事が可能だと知り、美成にお願いしたのだ。


 その為、葬儀場の一番小さい部屋で通夜を行い、その後エンバーミング用の安置室へ移しその日が来るまで保存する事になる。


 美成は諸々の手続きを終えて午後になり康介の居る安置室へ向かった。

 扉を開け康介の遺体が横たわる寝台の横に有った椅子に腰を下ろし康介の手を両手で握る。


「手続きして来たよ、他の事はこれからちょっとづつやって行くから安心してね。

この部屋寒いよね、こんなに手が冷えちゃってるじゃない、こうしたらあったかい?」

 そう言って自分の胸元に手を持って来て包む様に抱きかかえる。


「スケベな康介なのにこれでも反応しないなんてあたしに魅力無い?」


 美成は着ているセーターの裾を広げ康介の手を直接自分の胸元へと当てた。

 暫くこうしてても、康介の手にはもう温もりは戻らない事を感じ取り康介の手を元に戻した。


「もう戻らない…のね…」


 そう言って康介の体に覆い被さる様に抱き付いた、そしてこれが最後のキスだと思いつつ顔を近づけると康介の唇が少し光っているのに気付いた。


「そっか由貴も来たのね、あたしに反応しない訳だ、ハハハ。

あなたの一番はやっぱり由貴なんだよね、そうあたしは2番、それで良いの…分かってた…だからあたしの事は心配しないで康介。

それにあたしは康介から大事な物貰ったから大丈夫」

 そう言って美成は康介の頬にキスをした。



 そして康介が亡くなって3日後。

 派手な祭壇も無くただ無機質なコンクリートに囲まれた部屋には康介の入れられた棺桶が横たえられて通夜が行われた。

 参列者など居ないに等しいがバイクを貸してくれた美容院のマスターが駆けつけてくれた。

 そして由貴も何とか車椅子で来る事が出来たので康介としてはこれ以上ない通夜であっただろう。


 この後康介の体には防腐処理が施され安置室へと運ばれる事になっているが、あとは葬儀社に任せて皆退室する。

 

 由貴と一緒に美成は病院へ戻った。

「ちょっと寂しくなっちゃったね由貴」

「そうね、コウスケ最後は笑ってたよね、わたし忘れないよ」

「うん、あたしも忘れないよ…」

 そうは言うもののやはり静まり返る病室では康介が居ないだけでこうも静まる物かと虚空を見る2人。


「さて今日はもう帰るね、明日は午後から来るから待っててね由貴」

「うん、ありがとう美成、でも自分の時間も大事にしてね」

「分かった、それじゃちょっと甘えようかな、明日だけ時間貰うね」

「うん、そうして、それじゃおやすみ」

「おやすみ、またね」


 そして美成は家に帰り、一人だけになってしまったマンションの部屋でこっそりと泣いた。



かなり書き直しや入れ替えをしたので辻褄が合わない様な箇所が有ったりしたらゴメンナサイ(><)

気づいたら修正します!

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