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59 母

またまた遅れましたm(_ _)m

よろしくお願いします。



 意識が戻ってからは1日に一度は激痛が走り、その都度痛み止めのモルヒネを飲む様になっていた。


 その度に、美成に辛い思いをさせてしまって申し訳なさでいっぱいだ。

 ただ、たまたまなのか由貴が居ない時に激痛が起こるのでその瞬間を見せる事が無くて安心していた。

 それはどうやら美成のお陰だったらしい。


 先日の俺の意識不明の後、由貴は美成に怖いと弱音を吐いていたらしく、出来るだけその時に同室していない様に自室に居る方が良いと説得したらしい。

 その為、美成は2つの部屋を数時間毎に行ったり来たりして、伝書鳩の様になっていた。



 由貴の部屋は6人部屋で計3人が入院しており当然女性だ。

 女性専用部屋だが男子禁制と言う分けでは無い、当然家族なら男でも入れるのだ。

 そこで看護師に相談し、ほぼ身内みたいなモノだからと何とか入室の許可をもらい、他の患者からも許可を貰った。


 俺の部屋へ由貴が来ているといずれ激痛で悶絶する姿を直視してしまうだろう。

 しかし、こうして俺が由貴の部屋へ行くようにすれば、俺が痛み出す予兆を察知した場合すぐ部屋を出て自室へ戻る事で由貴へのダメージを減らせるのではないかと思ったのだが、意外な問題に直面した。


 由貴は2週間ほど前から症状が進んだらしく、俺の居る病室に来る時間は大分減っていた。

 そして由貴には当然家族が居て母親は由貴の病状の悪化により最近は毎日面倒を見に来る様になった、父親や姉弟も夜や週末には来ているのでその時間帯は席を外す様にしている。

 流石に末期とされた身内を放置する訳も無く面会時間の多くは家族と居る時間になっていった。

 その為俺はその隙間を狙って会いに行くのだが、そこで母親と遭遇してしまった。



「初めまして、高校生時代に同級生だったヤマシロと言います」

「まぁ、初めまして、美成ちゃんの彼氏?」

 美成は由貴の家に泊まったりしてるので顔馴染みなのだ。


「えぇ、まぁ、ハイ」

 俺が答えると隣にいる美成が照れくさそうにはにかんでいる。


「まぁ、そうなの、良かったわねぇ美成ちゃん」

「わたしもびっくりです、すっかり恋愛なんて諦めてたから」

「由貴も何も教えてくれないもんだから」

「わたしだってここに入って初めて知ったんだもん」

 由貴は慌てて介入する。


 しばらく高校生時代の由貴の裏話などを提供してくれた由貴母は、ここでふと何かに気づいた様だ。


「ねぇ、もしかしてあなた、由貴の元カレじゃないの?」

 ベッドで聞いていた由貴がハッとして目が泳ぎだした、俺も会った事も無い筈なのにどうしてバレた?


「ヤマシロさんって言ったわよね?昔、由貴と喧嘩したか何かで電話してきた事無かった?」

「あぁ、あっ!」

 つい反応してしまった。

 それを見て観念した由貴が目で合図して来た、自分で言うらしい。


「もぉ、お母さん、ホント感が良いんだからぁ、その人が元カレのヤマシロ コウスケさんです」

「あら、ホントにそうなのね、初めましてぇ、でも今は美成ちゃんの彼氏なのよね?どうなってるの?」

 女子はこの手の話題大好きだよなと思いながら言い訳を考える。


「数か月前からこちらの美成さんとお付き合いし始めた所なんです」

「そうよ、わたしはもう10年前に別れてそれっきりだから全然関係ないわよ」

 由貴は慌てて昼ドラに有りそうなグチャグチャの関係性を疑る母に訴えた。


「あらそうなの、由貴の結婚相手だったかも知れないと思うと残念ねぇ」

「いえいえ、月とスッポンですから、もっと良い男が現れたんじゃないですかね」

 と適当な事を言うと由貴母は諦めて残念と一言言って、この日はもう帰ると部屋を出て行った。


 ここで美成の視線を感じ振り返ると軽く睨んでいた。

「どうせあたしは金星ですよ、フン!」

 いやいや、そんな所で憤慨されてもなぁ、しかしそれでも火星や水星を選ばず明星を選ぶ辺りは流石美成さん。



「あぁ、なんでバレたんだろう、お母さん感良すぎ」

 由貴は頭を抱えて苦悶していた。

「俺もビックリしてつい電話の件で反応しちゃって…」

「2人共、喧嘩したの?」

 と美成がツッコんできた。

 俺は由貴と喧嘩した事は一度も無かった、それは由貴もそう思ってるだろう。


「電話したのは確かなんだけど、あれは別れ話の後の話で喧嘩じゃなくてもう一度会いたくて仕方なく携帯じゃ出てくれないから家の電話に…結局ダメだったけど」

「そうなのよ、別れを切り出して2週間くらいしてからだったかな?ホントは最後にバイクでどっか行こうって話になってたんだけど、わたしも踏ん切り付けた後だったから後戻りしたくなくて強く言っちゃったのが聞えたのかも」

 つまり、約束しただろ?いやもう無理だからって言う感じのやり取りを長々とやっていたので母親には喧嘩ととられた様だ。


「ふ~ん、もしかしてバイクで行こうとしてたのって?」

「ああ、この前行った富士山一周」

「え?行ったの?」

 由貴が慌てて割り込んできた、そう言えば話してなかったな。


 この流れで富士山一周ツーリングの土産話をして、自分から断った筈なのにやらた残念がる由貴を美成が肘でツンツンしながら良いでしょ~と自慢し、別に良いもんと強がる由貴の姿が微笑ましかった。


 3人で病気の事を感じない位に和気藹々と話せていたのはこの日までで、翌日からは俺も由貴もベッドに居る時間が多くなって行った。


 そしてこの週末、検査で由貴にも肺への転移が確認されたらしい事を美成が慌てて知らせに来た。


不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。

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