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58 長い付き合い

よろしくお願いします。



 先週買った指輪は依然金庫の中だ。

 金庫はデジタル式の自分でパスワードを設定するタイプなので美成達にも中身はバレていない。


 もうすぐ2月。

 2月と言えばバレンタインが有る、そのタイミングで送ろうかと思案中。

 しかし男から送るのはお返しのホワイトデーが一般的なので3月にする方が合っている気がする、そうなるとそれまでは頑張らなければ成らないが正直自信が無い。

 それでも美成にも宣言した通り、しっかり生き切らないとなと自己暗示をかけて指輪はホワイトデーに渡す事にする。



 昼食を終えた午後、俺と由貴が昔話をしている所へ美成がやって来た。

「お客さん連れて来たよ~、どうぞ」

 そう言って呼び込まれたのは行きつけの美容院のマスターだった。


「よぉ、元気かい?あれ以来音沙汰無かったから心配しててさ、そしたら昨日こちらの嬢ちゃんが来て入院してるって言うもんだから今日は仕事ほっぽって来ちまったよ、ガハハ」

「いやいや、今日火曜日ですよ、元々休みですよね~」

「ガハハ、そうだったかまぁ気にするな、ホレ、花より団子だろうと思ってお見舞いだ」

 そう言って地元のケーキ屋で小粒のケーキが幾つか入ったケースを受け取った。


 どうやら美成が俺と関わりのある人を思い出してもマスター位しか思いつかず、昨日店に行って事情を話したそうだ。

 なので、今の状態や今後の予想も既に知らされており、知った上で明るく賑やかにしてくれて居るのが俺には分かった。

 美成もここの所、元気がすり減って居る様でたまに泣き出しそうな顔をしている事も有るくらいだ。



「あれ?こっちの嬢ちゃんが彼女だよな?そちらの嬢ちゃんは?」

「わたしは3号です」

「おいおい、それは内緒だって…」

 何やら怪訝な顔をしてマスターが見て居る。

「お前さん、二又掛けてたのか?それとも愛人か? いや、俺の口出しする事じゃねーな、ガハハ、これならまだまだ大丈夫そうだな頑張れよ」

 何やら誤解されてる気もするが説明も面倒なので笑って誤魔化そう。


 今ここに居る人の中ではこのマスターが一番古い知り合いとなる。

 中学生の頃から年に2~3回だけだが通っていたし、地元の人と言うだけあって周囲の変化などの話題で盛り上がった。


「もう末期だと言っていたがまだまだ大丈夫そうだな、もし、その時が来たら俺も葬儀には出るからな、毎年墓参りにも行くからよ」

 あっけらかんと話すので暗くなったりはしない。


「あ、でも墓参りは無理ですよ、俺、海に散骨希望なんで」

「散骨って何処に?」

「俺生まれも育ちもココですよ、相模湾しかないでしょ」

 その話を横で聞いていた由貴が驚いて美成の顔を見て目で確認を取ると美成もコクッと頷いた。

 まぁ話してなかったし後で説明しなおそう。


「それじゃ俺はこれで失礼するよ、またな、お嬢ちゃん達も元気でな」

「はい」「ありがとうございます」「さようなら」

 それぞれ挨拶をした所でマスターは背を向けドアを出て行った。



 楽しい時間はあっという間に過ぎ、面会時間もそろそろ終わりの時刻だ。

 最近の日課で美成が帰る前にトイレに行く為、肩を貸してもらっているのだ。


 小をするつもりで立っているのだが一向に出る気配が無い。

 しばらく待ちやっと少量出たので手を洗いトイレを出て美成の肩に手を掛け俺は言った。

「ヤバい、まただ…誰、か、呼んで…」

 と言ってうずくまった俺を心配しながらも美成は看護師を大声で呼んだ。

 俺はこの時から3日間意識を失ったままだった。




 そして目が覚めた。

「知らない電灯…いやそんな事言ってる場合じゃない」

 どうやらまだ早朝でやっと空が明るくなり始めた頃だった。

 慌てて美成を探すが面会時間前で流石に居なかったので、取りあえずナースコールして看護師を呼んだ。

 微かに聞こえるナースコールのブザー音の後に、隣のベッドで突然ガサゴソと音がした。

「あなた、目が覚めたのね、良かったぁ~」

 ナースよりも早く隣のベッドから突然現れた美成がしがみ付いて来た。

 そこに到着したナースたちが美成を引き剥がし問診と検査が実施される、なんかデジャブだな。

 その物音に気付いたのか隣の部屋に居た由貴がこちらの部屋にやって来て美成と抱き合い泣いていた。


 目が覚めたのは良いが、驚いたのは体中に色んな管が付いていたのだ、これは早く解除して頂きたい。



 その後、担当医の診察も終わり管は外され通常の入院生活に戻れる事になったが、病状がかなり進行した証拠だとし軽く脅されてしまった。


 医者達から解放されて再び美成がしがみ付いて来た。

「ごめん、そしてありがとな、またこんな嫌な思いさせて…」

「ううん、あたしが最後までちゃんと看取るんだからこれ位平気よ、ただ…」

 そこで言葉を切って黙ってしまった。


「コウスケ、本当に大丈夫?わたしこんな状態のコウスケ初めて見たから怖くって…」

「あぁ、大丈夫だ、ただ俺って痛みに弱いみたいで直ぐ意識無くしちゃうみたいなんだ」

 由貴もそっと俺の手を握って安堵した様に見えたが、本当は自分もこうなるのかと不安が込み上げているのを俺は気付けないでいた。


不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。

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