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52 納得

今年もよろしくお願いします。



 午後になると美成が病室へやって来た。

 なぜだかドキドキしている、何も悪い事はしてい無い筈なのだが、やはり何処か後ろめたい気持ちが有るとこうなるんだろう。


「調子はどう?痛みは無い?」

 美成は由貴と違い声を張り恐らく隣の部屋に居ても聞こえるくらい通る声をしていた。


「痛みは特にないし調子いいと思うよ」

 ここまで言うと、もう隠すのはよそうと決意し由貴との遭遇を話した。



「…って言う事は隣の部屋に入院してるって事?」

「恐らく」

 そこまで話すと美成も行くと言い出した。

 親友だし黙っているよりは話してスッキリしたいらしい。



 午後2時50分。

 俺は待ち合わせの階段に向かい、そして美成は一階下に降りて待機する事にした。


 そして午後3時、1分前。

 由貴がやって来た。


「よぉ、さっきぶり」

 俺は肘から先を軽くあげて挨拶した。

「うん、来たよ、今度はちゃんとね」


 俺はここ最近の状況を話す事にした、もちろん癌の事は伏せてである。


「同窓会来なかっただろ?だから井口に頼んで色々やって貰ってたのは知ってるよね?」

「うん、連絡先の事とかもう一度会いたいとか、そういう話は聞いてた」

「その節は本当にゴメン、そうでもしないと俺の中の小さな俺がどうにかなっちゃいそうだったんだ」

「なんかそれ、何処かで聞いた事有るね、ウフフ」

 よし、話す事に抵抗感は無い様だ、これならあの話しても大丈夫だろう。


「実は、さぁ、あの件で井口に何かと相談しててさ、それで…そのぉ」

「付き合ってるの?」

「え?」

 まさに、え?である。


「な、なんで?知ってたの?」

「う~ん、美成がコウスケの事好きなんじゃないかなぁって高校の時感じてたからねぇ、そっかぁ付き合ったのね、良かったね」

 正直拍子抜けしてどう言う顔して良いのか分からない。


 すると下から階段を慌てて昇ってくる足音がした。

「由貴ぃ~」

「あれ?美成ぃ~居たのぉ~?」

「ゴメンねぇ~隠してたわけじゃ無いんだけど、なんか言い出せなくて…」

「良いのよ気にしなくて、だってわたしもう彼女じゃないんだからさ、と、取りあえず離れて…」

 会うなり抱擁し合い、揉める事無く再会出来たみたいだが由貴はちょっとウザく感じている様にも見えた。


「良かったわねぇ、美成、初恋の人とお付き合い出来て」

「気付いてたの?その事誰にも言ってないのにぃ」

「分かるわよ、選択科目の授業の前にはソワソワしだすんだもの」

「そんなにバレバレだったの?」

「うん」

 急に学生時代に戻った様な会話が続いた。


「でもね由貴、聞いて、コレ重要な事なの」

「なぁに?」

「あたしはNo.2なの」

「不倫?浮気?って事?」

 話がややこしくなり始めたがココで割り込む隙が無かった。


「そうじゃ無くて由貴が一番、あたしが二番」

「それ乗りツッコみすれば良いのかなぁ?」

「そうじゃ無くって、約束したのこの人と」

 なんか矛先がこちらに向いた気が…


「どういう事?」


 やはりだ。

「始めは由貴、お前の声が聞きたかったんだ、そしてその手助けを美成がやってくれていたんだ、ただそれは良い結果が出なかったんで協力関係を終わらせたんだ」

「あの時はさぁ、もう本当に無理だって思ってたから…」

 申し訳なさそうな顔をして俯く由貴、不安げな顔で俺の顔を見る美成。


「でさ、その後に美成に告白されてさ、俺初めて告られたんで嬉しかったんだろうな、そんで付き合う事にしたんだよ」

「ふ~ん、そうなんだ…」

 少し拗ねてる様にも見えるがどうなんだろう?


「由貴、聞いて! その時ちゃんと約束したの、この人は何が有っても気持ちは由貴が一番なんだって、だから2番で良いからって事で付き合う事になったの、だから…」

「でも、わたしはもう…」

 由貴は言葉に詰まり、美成が続けて話し始める。


「ダメなの、あたしじゃ無理なの、この人の心の穴を埋められないの…、だ、だからお願い…由貴…」

「美成?どうしたの?」

 とうとう泣き出してしまった美成を見て戸惑う由貴。


「お願い、この人とヨリを戻して、あたしはただの2番目だから…」

「それは、無理…って」

「時間が無いの!お願い!由貴」

「おい、美成、それは…」

 止めてはみたが、これはもう言うしか無いか…。


 俺の顔を見る由貴にしがみ付き泣きじゃくる美成、暫しの沈黙で俺の説明を要求している様だった。


「何が有ったの?」

「しょうがない、実は俺、癌なんだ」

 言った傍から美成は崩れ落ちる様にへたり込んだ。


「え?」

 由貴も唖然としてゆっくりと美成の方へ顔を向け、腰を下ろしそして問いかけた。


「その為にわたしに何度も連絡して来たの?」

「その時は知らなかったんだけど…好きな人のお願いだもの、何とかしてあげたかったの…」

 2人はお互いの背中に手を回し、由貴は時折背中をポンポンしていた。


「話は分かったわ、だけど今付き合ってるのは美成なんだから、わたしはコウスケとヨリを戻す事は出来ないわ」

「でも、でも、それじゃこの人が…」

 そこで俺の方へ顔を向け由貴が言った。

「会って話が出来れば良いのよね?コウスケ」

「あぁ、十分だ」

「じゃあ、わたしは友達としてNo.3になるわ、良い?美成」

 美成も俺の方へ顔を向け表情だけで(良いの?)と問いかける。

「俺はそれで十分満足だよ、ありがとな美成、友達としてこれからもよろしくな由貴」

「「うん」」


 何やら鳴き声が聞こえると看護師が心配して覗きに来た所で病室へ戻る事にした。

 そしてこの日、美成は由貴の病室へ行ったきりだった。


不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。

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