42 彼女とツーリング③
よろしくお願いします。
河口湖の北岸を軽快に走り抜けると湖の丁度西の端で右折し河口湖を離れる。
2つのヘアピンで標高を上げ、トンネルをくぐると西湖が見えてくる。
河口湖は観光と釣りがメインだが、こちらの西湖のメインはキャンプとカヌー等のアクティビティだ。
湖畔にテントを張り、そこからカヌーで湖面を漕ぎ出す人も多い。
河口湖との大きな違いは遊覧船は無く、動力式の乗り物は禁止されている。
その為、船の引き波が無く湖面は滑らかでカヌーや手漕ぎボートでの遊覧が楽しめるのだ。
ただ自分たちは釣りでも無くカヌーでも無いのでそのまま湖岸を走り抜ける。
走りながら彼女に問いかける。
「近くに風穴が有るけど興味ある?」
「風穴?あの溶岩の洞窟みたいなの?」
「そうそう、中が一年中低温で夏でもつららが有る所」
「う~ん、夏なら良いけど今は良いかな」
確かに冷える体に追い打ち掛けてもしょうがない。
「じゃあ、この後は残りの湖2つくらいだけどどうする?」
「湖ももう良いや、何かもっと別な物見たい」
「OK、じゃあしばらくスルーするぞ」
そうして富士の樹海の中の国道を突き進む。
途中、朝霧高原の道の駅でトイレ休憩とお土産に日本酒を2本買い次の目的地【白糸の滝】へ向かう。
目的地が近くなってから国道を逸れて間もなく白糸の滝の大きい駐車場に着いた。
この辺りはどこも駐車場は有料なので出来るだけ近い所に止めようと思い、お土産屋が並ぶ道を少し下った先に有る未舗装の駐車場へ止めた。
料金はバイク100円、入り口付近に有るデカい駐車場では倍の200円だからお得だと思ってしまうのは貧乏性が染み付いてしまってるからだろう。
ただ砂利の上だとコケる可能性も有るので彼女は入口で降りてもらった。
遊歩道を下って行き、綺麗に整備されて柵も有る場所に出ると目の前は150°程の角度で筋状の滝にぐるっと囲まれている。
柵は有るものの石の階段も有り水際まで降りて行っても良いみたいだったので、二人で出来るだけ滝の近くまで行く事にした。
2人並んで川辺にしゃがみ込み水に手を突っ込むと、何故か互いの手に水を掛け合う。
これって海でキャッキャうふふするヤツか?
時たま風向きが変わり水の飛沫が飛んで来るが軽いミスト程度なので気持ちがいい。
やっぱり夏に来るべき場所かも知れないと思いつつ、ココでも色んな角度で写真を撮りまくった。
暫くして遊歩道を戻りお土産屋を物色すると【富士宮焼きそば】の文字を見つけ美成の目が輝いた。
所謂ご当地名物でB級グルメの一つだが、ぶっちゃけ何が違うのかは分からなかった。
因みに俺的にはお祭りで食べるのはお好み焼きでは無く焼きそば派だ。
食べ終えて外に出ると、先に出た美成が指さして「これ欲しい!」と言う。
何かと思えばTシャツだった。
俺は「マジで?」と聞き返すと自分で買ってきて早速着込んだ。
そのTシャツには三度笠を被った後姿の江戸風の人の絵と共に文章が書いてある良くあるヤツだった。
そのシャツには「旅に出ます。探さないで下さい」と書かれていた。
土産屋を物色しながら登って行くと直ぐに駐車場に着いた。
「さて、そろそろ帰ろうか」
そう言ってバイクを駐車場から出してゆっくりと走り出した。
ココからは富士山スカイラインを上って御殿場方面へ抜ける。
夏のツーリングなら最高のコースなんだろうが、流石にこの時期だと寒い、今日は暖かい方なのだが標高が上がると結構風が突き刺さる感じだ。
それでもグリップヒーターのお陰で手が悴む事無く運転出来るので不安の一つは払拭出来ていた。
インカムで彼女に聞くと特に寒くないとの返事。
さっき買ったばかりのTシャツを着こんだのはこれを見越しての事なのか?
五合目に行く分岐を過ぎしばらく行くと森の駅【富士山】が有った。
だがココでは止まらず御殿場まで行く事にする。
それはなぜか?
標高の高い所なので俺のトラウマの様な物が働いたに過ぎない。
と言うのは以前乗ってた車で先程の分岐を5合目まで登り駐車場に止めた時の事だ。
駐車して数分お土産などを物色し大した獲物も無かったので山を下りようと車のエンジンを掛けるが「キュルルルル…」となるだけでエンジンが掛からない。
これを観光客が入り乱れる中、20分程続けやっとの事エンジンが掛かり逃げる様に山を下りた事が有ったのだ。
この時の顔が破裂しそうなくらい恥ずかしかった事をつい思い出してしまった為だ。
まぁ寒さで緊急避難って事でも無いので行けるなら行っちゃった方が無駄な苦労を背負う事も無くていい。
つづら折り区間を過ぎ直線区間に入ると左右は自衛隊のエリアだ。
そのまま真っ直ぐ進み国道246号に出ると左折した所でちょっと休もうと言う事になり丁度見つけたmのマークに吸い寄せられてバイクを止める。
俺は2人分の注文の品を受け取り、空いてる4人掛けの席に座る。
彼女は先にトイレに行っていたので俺の居る場所を探してやっと見つけてくれた。
「割と隅っこ取ったわね」
「まぁ性格なんで」
と適当な会話をしながらバーガーを食べた。
流石に夕方でもうすぐ暗くなる時間なのでこの後のルートを相談した。
一つは箱根越え、もう一つは行きと同じ迂回ルート、もしくは東名高速も有りだ。
まぁ既に答えは出ていたが改めて確認だ。
出来るだけ寒くない方と言う事で東名高速で、ゆっくり帰る事にした。
その後はひたすら暗くなった高速をメットのインカムで話をしながら家路についた。
家に着くなり彼女が風呂を準備し、冷え切った体をほぐしていた。
俺は借りたバイクを軽く掃除し、異常が無いか検査してから自宅マンションの駐車場へ止めて帰宅した。
家に入ると風呂場から「一緒に入る?」と声が掛かるが、流石に二人同時に湯船に浸かれる広さは無いので「後で良い」と答えリビングへ向かった。
行った先で買ったお土産の日本酒を取り出す。
これは自分用とバイクを貸してくれた美容院のマスターへの物だ。
720mlを2本も買いそれを彼女に背負わせていたので、こうやって2本を持ってみるとその重さは結構な物だったのを知る。
流石にこれは後で謝ろう。
暫くして白糸の滝で買った「探さないで下さい」と書かれたTシャツを着て彼女が風呂場から出てきたので入れ替わりに自分も風呂で暖まる。
その後は撮った写真を2人で見ながら、まだ当日なのに思い出話をしながら初の彼女とのツーリングを締めくくった。
不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。




