41 彼女とツーリング②
よろしくお願いします。
ツーリング当日の朝の8時。
晴天になり、その分ちょいと寒いかな?と言う感じだが、準備万端でバイクに跨る。
彼女は初めてなのでタンデムステップを出して、ここに足を乗せるのだと教える。
インカムの通信確認もする。
「もしも~し、聞こえてますか~」
「感度良好で~す」
「では行きますよ~」
「は~い」
スムーズに発進し国道246号を静岡方面へ走る。
平日なので輸送トラックは多いものの、渋滞と言うほどの停滞は無く順調だ。
「怖くない?」
「全然大丈夫」
「寒さは?」
「今の所大丈夫」
「もう少ししたら右折して山中湖方面に向かうよ」
「りょうか~い」
御殿場の遥か手前で右折し緑の中を走り抜けチョットした街を抜けると道の駅須走が有る。
やはり1時間も走るとそれなりに冷えていた。
施設内に入り暖かさに安堵する。
そして休憩がてら何か軽く食べようと食堂へ入る。
それ程まだ空腹ではないので、取りあえずおにぎりを一つずつ注文し食べながら暖を取った。
「やっぱり結構寒いな」
「でもこのジャケットとか手袋で暖かいよ」
「そう?それならよかった」
「ココ富士山近いねぇ」
「前の道を行くと須走口って言う登山道になってて5合目まで行けるよ」
「5合目まで行く?」
ここはバイク向きじゃないと思うなぁ…
「いやぁ、ココでこの気温でしょ?5合目まで行ったらかなり寒いぞ」
今日は天気が良いがそれでも15度位だ、これで5合目行ったら恐怖では無く寒さでガクブルだ。
「寒いのかぁ、残念」
「それにここの須走口の道路はかなりの急勾配で路面も荒れてるから、バイクリハビリ中の俺にはちょっと怖いかも」
「じゃあ、やめとこ」
良かった…
入口で手に取ったパンフレットを見ていた彼女が足湯を見つけ、しばらく足湯に浸かり、体がポカポカになった所で次の目的地へ向かう事にする。
再び走り始め数分後には静岡と山梨の県境になる籠坂峠を越える。
そのまま行くと山中湖畔を通る国道に出た、そして右折しぐるっと回り込み湖の北側の駐車場でバイクを止めた。
「うわぁ、ここだと富士山バッチリだね」
「ここで写真撮ってやるよ」
「良いねぇ、富士山と一緒に撮って、ってどこ行くの?」
「いや近くで撮ると人物に対して富士山が小っちゃくなるだろ?だから離れた所から望遠で撮るんだよ」
「?」
「まぁ良い、手を挙げたらポーズ撮って」
「は~い」
「行くよ~」と言って手を挙げる。
彼女は「はっ!」と言って片足で立ち手足を伸ばしバランスを取っていた。
彼女の元に戻り画像を見せる。
横に手足を伸ばした彼女の向こうにど~んとデカい富士山が横たわる感じになった。
「良いねぇ、良いじゃんコレ、この技でドンドン撮ろう」
そんな感じでちょっとした撮影会になった。
一頻り撮影し終えて富士五湖の一つ、山中湖を攻略し次の河口湖へ向かった。
河口湖までは国道を道なりに行くだけなので渋滞とまでは行かない程度のゆっくりな流れに乗って走る。
富士吉田の街を走り抜けると右手にジェットコースターのレールが見えるとほぼ同時に頭上に遊園地への分岐の看板が現れた。
ここで遊園地に寄ってしまうと恐らく1日コースなので寄り道せず通り過ぎて、もう少し先の交差点を右折し河口湖大橋へ向かう。
周囲にはほうとうの店やらカフェが立ち並び誘惑してくるが、ここはスルーしてまずは大橋を渡り左に折れてから良い景色と美味しそうな店を探した。
橋の近くには良さげな店は有ったが車がいっぱいで思わずスルーばかりしていたら、何やら閑散としてきた。
仕方なくそのまま走ると英語の筆記体の看板と駐車場が見えてきて、パッと見で良さ気だったので立ち寄ってみる。
そこは湖畔のパン工房と看板に書いてあり躊躇せずに店に入った。
トレーを片手にパンを見て回る。
ただ、やはり観光地。
パン一つでそれなりの金額になって居たので正直触手が縮んでしまった。
俺はチョコのスコーンとメロンパン、彼女は丸ごとウィンナーチーズとリンゴのパンを買い、カフェで2人共コーヒーを注文し、そこそこ陽も上がり暖かくなってきた所なのでテラス席で頂く事にした。
テラスには所々に木彫りの熊ならぬ、木彫りの犬がオブジェとして有った。
正面には湖越しの富士山全体が見えて景色は最高だ。
彼女もスマホで撮っているが、当然他の客も撮っているので、場所取りバトルが繰り広げられている。
「撮らないの?」
彼女が聞いて来た。
「この辺りの写真は以前にも結構撮ったから良いかなぁって」
「へぇ、この店良く来てたんだ?」
「いやいや、店は初めてだよ、ただこの店の前の湖の上にはたまに来てたから」
「湖の上?遊覧船?」
「手漕ぎボートだよ、釣り用のね」
ブームに乗っかって数回来ていたのだ。
「へぇ釣りもやるんだ、何釣るの?」
「悪名高いブラックバスだよ」
「ココ釣れるの?」
「まぁ釣れる人には良く釣れるね」
「あなたは?」
「1匹だけ…」
「何回も来て1匹なの?魚居ないんじゃないの?」
そう思いたいが近くで釣り上げるシーンを何回も見てるんだよなぁ、おかしいなぁ。
「居るには居るんだけど、釣り客が多すぎて魚の警戒心が半端無いんだよ」
「あぁ、昔ブームだったよね、そう言えば」
「そうそう、でもね釣れなくても楽しいから毎年来てたよ」
「へぇ、そんなものなの?あたしは釣れなかったら直ぐ帰るかも」
「まぁ、それも有りだけどね」
こんな感じであまり身の無い話をしながらパンをむしって食べていた。
因みに釣り関係の道具は以前の身辺整理のもっと前に中古釣り具買取店に売ってしまったので、もう未練は無い。
この後、お昼の客が増えてきたので席を立ち次の目的地へ向かう。
不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。




