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28 治療

よろしくお願いします。



 10月に入りいつもなら秋の3連休でドライブに行ったりしている季節なのだが、今年はそんな事も無く治療の為に病院へ向かう。


 いつもの駅前アーケードを通るが接近遭遇はやはり起こらない。

 今となれば逆にストーカーと思われようとバッタリ会いたいものだが、なかなかそうはいかないものだ。


 病院に到着し受付を済ませると、まずは放射線科の待合室で名前を呼ばれるのを待つ。

 この病院は予約制で一般外来は紹介状無しでは受けられない様になっている為意外と空いていて、そのせいか予約時間には間を置かずに呼び出される。


 この日は月一のCTとMRIを受ける事になって居る。


 診察台に寝かされCTの穴の中へ送り込まれる。

 いや…これ…俺苦手なんですわ、すっごい緊張感有るから鼓動がバクバクしてくる。

 まぁ治療全般苦手なのだが…


 隣の部屋に移され、今度はMRIだ。

 似た様な機械を連続で受ける必要有るのかな?とか思ってはいけないのだろう。


 その後も尿検査やら採血など一通り終わり、最後に検査結果などの話を聞く。


「今日の検査の結果、癌の転移が見つかりました」

「来ましたかぁ」

 CTの画像には肝臓付近のリンパ節に立派な丸い影が見て取れる。


「治療は現状のままで行きますが、これから先は症状の悪化が予想されます」

「痛みとかですか?」

「そうですね、肝臓なので黄疸が出たりもするので、その時は無理せず来院して下さい」

 痛くなったら直ぐ来ますよ、基本我慢出来ない軟弱者なので。


「いつまで動く事が出来ますか?」

「動くと言うのは仕事とかですか?」

「まぁ、悔いの残らぬ様に行きたい所には行ってみたいんです」

「そうですか、一概には言えませんが、これからどんどん体力が落ちる筈なので2~3か月は大丈夫だと思いますが、その後は倦怠感や痛みから自ら動く事を避ける様になると思いますよ」

 3か月か…年内一杯は何とか動けそうだな。


「分かりました」

「痛みが激しくなったら強い痛みどめも考慮しますので」

「宜しくお願いします」


 病院を出て駅へ向かう足取りは気持ちの所為か重くなっていた。



 帰宅すると力が抜けて、そのままベッドに倒れ込む。

 そして夕方までただボーっとしながら過ごした。


 18時を過ぎた頃、スマホのハードロックな着信音が鳴った。

「もしもし」

「あ~あたし、今からそっち行っていい?」

 相変わらず景気のいい声だ。


「あぁ良いけど、家まだ知らないでしょ?」

「地図アプリで送ってくれれば大丈夫」

「そう?じゃあ送るよ」

「うん、晩御飯作ったげるから何かリクエストある?」

 自宅に来て料理を作るとか初体験だわ。


「そうだなぁ、ブリの刺身が良いなぁ」

「何それぇ、ただ切って出すだけじゃん、もっと手の込んだものでも行けるのよ!」

「じゃ、じゃぁ、味噌汁作ってよ、ずっとインスタントばかりだからさ」

「他には?」

「後はお任せで」

「ラジャー、待っててね」

「うん」


 電話を切ってから地図アプリで自宅をマークし、部屋番号を送った。



 19時を30分過ぎた頃、玄関のチャイムが鳴った、彼女だろう。


 彼女を迎い入れ、荷物を受け取りキッチンへ案内した。

 案内と言うほど複雑では無い間取りだが、彼女は後をついてくる。


 彼女は生鮮品を冷蔵庫へ入れる。

「なに?スッカラカンじゃない」

「あぁ、一応1日分だけ買う様にしてるからそれ程埋まらないんだよ」

「なるほどねぇ」

 まぁ買い溜めのカップ麺やレトルトは有るのだが、最近ではスーパーの半額弁当のお世話になって居る事も多いので、生鮮品は当日分しか買わないのだ。


「ねぇ?聞いて! あたし、会社辞めちゃった、ははは」

「え?マジ?なんで?」

 ホントびっくりだよ、しかもあっけらかんと。


「だって職場遠いんだもん」

「まぁ電車に乗って1時間以上だからなぁ」

 俺も同じ通勤地獄を体験した身なので辛さは十分わかる。


「でしょ?だから通勤地獄に耐えられませんって言って辞めちゃった」

「そんなんで通るのか?」

「通るもなにも、明日はもう行かないし、一応上司も分かったと言ってくれたから大丈夫!」

「無茶するなぁ、お前」

 良く即日退職出来たよなぁ。


「その内、こっちで仕事探すよ」

「まぁそれも有りだな」

「有りだね」


 そう言って料理を始めた。




不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。

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