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24 傷心旅行?①

よろしくお願いします。



 先週末で放射線治療は終了し予後観察となったので、今後は週一回の抗がん剤の点滴と薬での治療になる。

 今の所痛みはほぼ無いので毎日通院するのが億劫になって居た所だった。


 そして今、何をしているかと言えば、夏川との再会も有りえないと断られた事で傷心の俺はJRの【秋の乗り放題パス】を手に電車に揺られている。

 所謂鈍行列車のみ有効のフリー切符で全国のJRが3日間乗り放題になるヤツだ。



 子供の頃から電車が好きだったので動ける内に鈍行列車の旅がしたいと思っていたのだ。

 今回たまたま傷心も合わせての旅になるが行先は以前行った事のある長野にした。

 長野と言っても南部の方なので割と近い。


 朝一の電車に揺られて目的地の駅【上諏訪】に着いたのは10時前だった。


 ちゃんと調べた分けじゃないが、目的の場所は10時以降開店だろうから少し時間を潰そうと改札を出ずに通り過ぎる。

 そこに有るのは【足湯】だ。

 この上諏訪駅には改札内に足湯が有るのだ。

 夏の面影が大分薄まった10月初旬の気候は足湯に入るのに丁度良かった。

 平日の所為か自分一人だけの貸切状態だ。


 10時を過ぎた頃を見計らって改札を出る、今日の目的は蔵巡りである。

 蔵とは醤油でも味噌でも無く、日本酒の蔵だ。

 上諏訪には5つの蔵が隣接している地区があり、蔵を巡るイベントが有ったりするのだが、今日は特にイベントは無いので独自にイベントを実施する。


 各蔵を巡り、それぞれの店で試飲する。

 試飲は店によって有料だったり無料だったりするがタダ酒を飲むつもりはない、ちゃんと1件につき1本は買っていく。

 と言っても720mlの様なサイズで買っていたら重くて今の体力では持ち歩くのは不可能なので、300mlのサイズで各店1本買う。

 それでも結構な重さだ。


 そして蔵見学を申し込んでおいたので蔵の方を案内してもらう。

 これは前回来た時に色々案内してもらったのだが酔った所為で内容を全く覚えて無いのだ。

 今回も精米歩合の説明や麹室などの説明を受けそれなりに記憶に留めて店に戻り、改めて試飲をする。

 やっぱり日本酒は最高だ。


 5件でお猪口に20杯は飲んだか、口直しの水の分もあり結構腹がタプタプする。

 その中でお気に入りの2件でこれは家飲み用にと更に720mmサイズを買う事にした。


 1件目は蔵の見学をさせて貰った所で、青い瓶の純米吟醸酒が気に入り購入、そしてここから数十メートル駅の方へ向かった所に2件目が有る。


 その蔵は他の店と比較して明らかに古い建物をそのまま使い続けていて一番味わいのある蔵だった。

 とは言え母屋の方は入れず、隣の販売専用の蔵で購入する事になる。

 1件目とは違って小ぢんまりした店内で先ほど散々無料試飲させて貰ったので目星は付いていたので即購入。

 純米大吟醸原酒、何か原酒と付くと威厳が強く感じるがお値段はお手頃だ。




 まだ昼をちょっと過ぎた頃だが一休みする為に駅へ向かう。


 結構な大荷物になったが今日の予定は蔵巡りのみなのでこれで予定は消化した。

 だがほろ酔いで歩いて移動するのも面倒な感じなので今日はここに泊まろうと決め、駅の案内などを元にネットで調べ、今夜の宿を確保する。

 チェックインは3時からだがロビーに荷物を置いて休むだけなら今すぐ来ても良いと言うのでホテルへ徒歩で向かう。


 歩くこと十数分、そこは昭和の豪華さが残ったホテルだった。

 ロビーの奥にはステージが有り、その周りは池になって居た、つまり水上のステージだ。

「なんか凄いな」


 奥の方には小さいが滝まであり、そして池の中には錦鯉が泳いでいる。

 ステージの上には和太鼓が並んでいる。

 聞くと夜には演奏が有るらしい、ちょっと楽しみだ。


 ホテル内の探検を終えロビーに戻るとちょっと早いがチェックイン出来た。

 荷物を部屋に置き、酔いがさめた事も有って散歩に出るとホテルから数分で諏訪湖が見えた。


 そこからしばらく湖沿いを歩き遊覧船乗り場に出るとソフトクリーム売り場が有った。

 観光すればどこへ行っても名物ソフトクリームが有ったりするがここのはちょっと違った。

 何やら名物と書かれた目立つ看板を見ると、なんとソフトクリームにバッタが突き刺さっていた。


 過去に蜂の子は食べた事が有るが、既に完成された体のバッタがソフトクリームに突き刺さった状態のそれを食べるのは無理が有ったので、遊覧船から降りてきた観光客が食べるのを恐るおそる遠目に見て退散する。


 その先へも行きたかったが諏訪湖周辺を観光するには歩きでは無理そうなので他の観光は諦めホテルへ戻り夕方までひと眠りする。


 スマホのアラームで夕方に起きる。

 素泊まりのプランなので夕食をとる場所を検索すると、駅前通りに豆腐専門店なる店が有ったのでそこに決める。


 豆腐のコース料理が有ったので松竹梅の竹コースを注文し、料理が来るまでメニューを見て居ると利き酒を発見、これも即注文。

 今日飲んできたばっかりだし、半分は当たるだろうと変に自信が有る。


 豆腐のコースよりも先に利き酒が来た、どうやら5杯のお猪口に蔵の名札を置いて店員さんに答え合わせをして貰うシステムの様だ。


 ちょっと大きめのお猪口を一つずつ口に含んでは、「あの蔵の味に近いな」等と札を次々に立てて行った。

 取りあえず札を全てのお猪口に添えた時に丁度コース料理が来たので、ついでに答え合わせをしてもらったが5つのうち正解は1つだけであった…

 店員さん曰く、

「10年通ってやっと全問正解する人も居るので一つでも当たれば良い方だよ」と慰めてくれる。

 そして豆腐のコース料理6品を平らげるともう満腹だ。


 上諏訪駅前は夜になると結構静かだった。

 どうやら夜に賑わうのは駅からちょっと離れた所らしいので、このままホテルに戻る事にする。


 ホテルに着くと丁度、和太鼓の演奏が終わるところだった。

「しまった、見逃したか」

 浴衣を着た宿泊客たちは拍手をしてから散っていく。

 その奥の方に暖簾の掛かった所に気が付き覗くと食事処か何かの様だったので聞くと、ラーメン等の軽食とここでも日本酒の飲み比べが出来ると言う、しかも時間制で飲み放題!

 いや、しかしさっきの店でも飲んだし、既に買ってあるのも有るしって事で飲み放題は諦めた。


 もう後は温泉入って寝よう。

 大浴場の温泉に浸かり41℃と熱い湯が好きな俺にはちょっと物足りなさが有ったが、流石温泉ポッカポカだ。

 部屋に戻り昼に買った日本酒1本をあけて飲み始めるとスマホのハードロックな着信音が鳴った。


「もしもし」

「あたしだけど」

 井口だった。


「お~どうした?」

「うん、今何してるの?」

「え?今温泉入って出てきた所」

「え~?なにそれ?今どこ?」

「今上諏訪」

「上諏訪って、どこ?ま、いいや、何してるの?」

 井口は地理が苦手なのかスルーした。


「う~んと、まぁ旅行だな、蔵巡り」

「蔵って日本酒の?」

「そうそう」

「え~ずる~い」

 思いも寄らない反応で一瞬固まる俺。


「ずるいって言ったって平日はお前無理だろ?」

「まぁ、そうだけど…」

「で、どうしたんだ?」

「うん、出先なら良いや、また今度で」

「そか、悪いな」

「そんじゃ、またね~」

「またな」


 あれ?またなって言っちゃったな。

 先週さよならって言ったのにな。


 開けた日本酒を飲み干してから布団にもぐりこんだ。




不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。

JRの切符や酒蔵その他については昨今の事情により記述と合致しないと思われ、気になる方は各自確認願います。

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