15 第1回報告会①
よろしくお願いします。
同窓会から1週間が過ぎた金曜日、また同じ様に地下街の待ち合わせの出来るスペースに来ている。
やっぱり待ち合わせと言えばココなんだなぁ。
時刻は19時。
この時間を指定して来たのは井口だった。
しばらくすると、駅から地下街へ下りてくる人波の中に彼女を見つけ、肘を曲げるだけで手を振った。
「お待たせ~」
「そうだな、かれこれ2時間くらい待ったよ」
「何それ~?待ち合わせからまだ2分くらいじゃん」
「うそうそ、1本前の電車で来てたんだ」
それこそ嘘だった。
仕事も辞めて時間はたっぷり有るので今日も夕方には既にこの辺をウロついていて、時間を潰していた。
「流石弟君、姉の出迎えご苦労!」
「ははぁ」
高貴な姉上をお迎えした所で移動する。
「どこ行く?」
「話するんだから静かな方が良いよね?」
「そうだなぁ、どこか良いとこ知ってる?」
「じゃあ、個室のあるアソコ行こう、なんだっけ・・・・【にゃん!】」
「よし、行こう」
まさか猫カフェじゃないだろうな。
2人で個室居酒屋【にゃん!】に入ると2人用の個室へ案内された。
【にゃん!】と言う名前だがどうやら猫カフェでは無い様だ。
ちょっと狭い?いやこんなもんか?
「夕飯まだだからガッツリ食べるよぉ」
「じゃあ俺も」
まずは腹ごしらえだな。
魚と肉のメニューを2つずつ注文して続いて日本酒を選ぶ。
店員が下がり二人だけになる、一瞬だけ静かになった。
「今日は最初からこれで行くよ」
「良いねぇ、すっかりぽん酒党だね」
「もうハイボールには・・戻れないんだ・・・ガクッ・・・」
「何だ?コントはじまったぞ、ふははは」
俺も一緒に日本酒を飲める相手は殆ど居ないのでちょっと有難い。
「でもホント日本酒美味しいわぁ」
「酒蔵とか行った事ある?」
「なにそれ?美味しいの?」
何かのネタでよく見るセリフだけど、使い方はあってる、いや違うか。
「いやいや、酒の蔵でサカグラだよ」
「あ~知っている、行った事ないけど」
「俺、去年長野行ってさ、酒蔵で試飲してたら蔵の中見せてくれて色々説明してくれたんだよ、ただ試飲だけで結構飲んじゃってたから説明は何にも覚えてないけどね」
店にも寄るが試飲無料と有っても普通は2~3種類が用意されていて、それぞれ1杯づつお猪口で飲むのだが、試飲と言う位なので味や風味の違いをみる為に合間に水で口の中をクリアにする。
その所為で数件周ると結構お腹がタプタプになり、酔いとお腹のタプタプ感でこの時は話など聞いてた振りだけしていた。
「ただ酒飲んで説明の内容忘れるとは酷いなぁ」
「まぁまぁ、一応その店では2本買ったから説明代くらいにはなったと思うよ」
「試飲かぁ良いなぁ、でも車で行ったら飲めないしなぁ」
「俺は電車で行ったよ、今じゃ車も手放して結構電車乗る事が増えたんだよね」
「よぉし、仕方ないからココで試飲しよう!」
「それもう試飲じゃないし」
なんか凄く自然に盛り上がって肝心な話が始まるまで小一時間掛かった。
「さてさて、そろそろ本題に入りましょか」
「うんうん、そうだね」
やっと来た!
「では、コホン・・・第1回、声が聞きたいと嘆く子羊に愛の手を~」
「なんじゃ、それ、ぷくく・・」
「え?やんない?こうゆうの」
「やんない、やんない」
大きめに手を振って笑いまくる俺。
「はぁ、笑ったぁ」
「じゃあ、本題に入るよぉ」
「了解!」
緊張の静寂が通り過ぎる。
「まず、由貴に電話で同窓会の話を報告したのよ」
「うんうん」
「それで○○駅での遭遇の話したら『ストーカーなんて思わないよ~』って爆笑してた」
「それは良かった」
「で、アナタと話した事も言って聞いてみたの」
「うん」
「声聞きたいんだってさ、出来れば会いたいらしいよぉ、どうするぅ?って」
「おぉ」ゴクッ!
「そしたら、『それは無理ねぇ』って一言」
「やっぱりか」ガクッ!
そうだろうとは思っていたが一気に酔いがさめた感じがした。
「そこで提案したの、せめてメアドだけでも教えてあげたらって言ったんだけど、『無理無理、絶対』って言って却下されたわ」
「だろうなぁ、そっかぁ、そうなるかぁ、そうなんだよなぁ、う~ん」
何も言葉が出なくなった。
「でもさ、今回はジャブだから元気出して!」
井口は軽くガッツポーズを取り言った。
「え?ジャブ?次も有るの?」
「だって言ったでしょ? 第1回って」
「あぁ、言ってたねぇ」
こうして【第1回、声が聞きたいと嘆く子羊に愛の手を~】の報告会は終了した。
不定期投稿ですが基本的に土曜日の20時を定期更新として1週間に1話以上を考えてます。




