01 プロローグ
初投稿です!
よろしくお願いします!
俺、山城康介は30歳のIT系フリーランスをしている。
高校を卒業し一度はプログラマーとして正社員になったが、忙しいのに大した収入では無かったのが原因の一つで1年を待たずに辞め、その間に仕事上で知り合ったとある社長の会社とフリーランスの契約をして現在に至る。
フリーランスと言うのは個人事業主なので福利厚生などは基本無く、健康管理も自分への御褒美も全て自分でするものだ。
そして収入は大したスキルも無いのに辞めた会社の約2~3倍となり、御褒美はそれこそ頻繁にやっていた。
しかしものぐさな「俺」はこの10年で1度も健康診断をしておらず、18歳で就職した時に受けたきりで通院履歴は歯医者のみ。
そんな俺が満30歳を機に健康診断を受ける事にした。
地元の診療所に健康診断の申し込みをすると人間ドッグの方を勧められたが、TVで怪しい白い物を飲まされたり、黒いホースを突っ込まれたりするのを見ていたので、人間ドッグは断り普通の健康診断を申し込んだ。
健康診断では至って普通の検査が進み、特に何を言われる事なく終了し帰宅したが、後日、再検査の通知が届く。
正直言ってそれ程気にはしていなかったが、恐らくものぐさな俺はこの様な通知でも来ない限り自ら行く事も無いだろうと思い、しっかり再検査を受ける事にした。
一ヶ月後に再度検査を受けると肝臓に癌が見つかった。
(え?癌?肝臓に?)
サイズが大きくてかなりヤバいらしい事を伝えられ「治りますか?」と聞くと「恐らく1年後の生存率は30%」と最悪の宣告。
親父は拡張型心筋症で亡くなったのでてっきり俺も心臓で死ぬんだろうと思っていた。
そういえばお袋は肝硬変で他界していた、そっちだったかぁ…
当然手術を勧められたが、がん闘病のドラマや映画などを見てからの自分の変な持論で、「科学による延命はしたくない」とかねてから思っていた為、手術はせず治療のみする事にした。
つまり駄目なら自然な死を望んだ形だ。
それでも痛いのは嫌なのでしっかり通院はするつもりだ。
既に両親は他界し一人っ子の為兄弟もおらず、結婚もしていない俺に手術を勧める人は居なかった。
「自分滅亡まであと1年、かぁ。」
と昔のアニメのエンディングをまねて呟いてみた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
4月に癌を告知され、隔週で通院していた7月のある日の午後。
駅から10分程の所にある病院へ向かう。駅を出て暑くなりだした7月の日差しを避ける為アーケードの下を歩く。
中核都市の駅前アーケードとなれば日中からそれなりの人出があり、真っ直ぐは歩けず数m毎に隕石を避けるゲームの如く身を翻して歩いていた。
アーケードも中盤を超えると若干人も減り、真っ直ぐ歩ける位になった。
余裕が出来たのでアーケード内の店の外観をキョロキョロと眺めながら歩いて居ると、2mほど先のすれ違おうとする女性がこちらを見ている事に気付く。
元々人の目を見続けるのが苦手なので、普段なら目が合っても直ぐに目を逸らすのだがこの時は違った。
気づいた瞬間に俺の思考が停止した。
それは例えば、自販機で買った缶飲料を取り出し口から拾い上げ、手を滑らせ落としそうになった時、脊椎反射でその缶の行く先へ手を伸ばしキャッチしようとするだろう。
しかしこの時は違った。
脊椎反射では対応が出来ない事案だったのだ。
目を合わせたままで、しかし足取りはそのまま歩き続け通り過ぎ、近づいてきた距離が再び遠のく。
つまり何の反応も出来ずに、現行命令を維持しつつ次の命令を待っている状態だった。
(あれ?今のは元カノ?だよな?)
とほぼ間違いないと確信しながらも振り返る事も出来ず、当然呼び止めもせずに遠ざかる。
(いや、これってドラマのテンプレじゃ声掛けないとダメな所なんじゃないか?)
しかし既に20mは歩いて来てるので今振り返ったところで相手は居ないだろうと振り返る事はしなかった。
不定期投稿で基本的に1週間に1話以上を考えてます。