なんでも姉のものをとりあげる双子の妹に悪役令嬢といわれ、婚約者の王太子殿下をNTRされた姉、婚約破棄されたのは姉の悪行のせいだという噂を流され激怒する。姉が二人に土下座させ、幸せを手に入れた方法とは?
「……これは一体」
人は見たくないものを見たとき思考停止します。
私は何気なく王太子殿下のお部屋にノック無しにはいり、地獄を見ました。
……いえただ驚かせようと思って「だーれだ」などとバカなことを言いながら扉を開けたのです。
一応それほどの仲は構築できていたと思っておりましたわ。
勘違いでしたが。
「……うわあ、ジル、私は!」
「お姉さま、ごめんなさい、リリス、カイル様を愛してしまったのぉ」
寝台でとっくっみあう二人を見て、思考回路を停止した私にこのセリフを投げかけたのは、なんと私の婚約者と双子の妹でありました。そして私は気絶してしまいましたの。
ここからあとはよく覚えておりません。
大騒動になり、妹でも別にいいじゃないという話になりそして婚約破棄になりました。
さらっと書きましたがこの時は衝撃を受けましたわよ。
お姉さま、リリスのほうが似合うからこれ頂戴とよく妹は言いましたが、婚約者まで盗られるとは思いませんでしたわ。夢にまであの光景はでてきてうなされました。
それから半年、私は世の中を儚み、修道院にでも入ろうかななんて考えました。
すると……妹のおめでたと聞いたのです。
そして、それを祝福しろと両親にいわれ……私は館を出奔いたしました。
「ジル、どうしてあなたのような方がこのようなところに」
「……誰も私を知らない場所で過ごしたかったのですわ」
私は修道院にかけこみ、いえかけこみましたが出家なんてばからしいと思い、そこでへたりこみましたわ。
私がなんで追放コースをとらないとだめでしょう。思い直し、私は修道院の院長に説得される形になり、一応居候ということで居つくことになりました。
「そろそろお帰りになったほうが」
「……いやです」
院長は男性でした。孤児院も経営するこの修道院、私はふらふらと入り、今は子供たちの世話をしています。
院長は二十代後半、私よりは十ほど上の方でした。
どうもただ者ではないようです。
院長に帰ったほうがと言われつつ、いまだに私はここにいますわ。
「……ジル、あそぼー」
「はいはい、いまいきますわ」
「ガル兄ちゃん、ジル姉ちゃんかりるね~」
「はいはいわかりました。遠くにいかないようにしてくださいね」
ガルガンチュアという名前の院長はどうも平民ではなさそうです。物腰も柔らかく優雅でした。
でも私は彼の身分を知りません。それはそれでいいかもとは思いましたわ。 でも……。
「……しかし王家も大変なことになったものですね」
「?」
「……さすがに……」
あれから妹が出産したことを聞きました。なにやらもうどうでもよくなっておりましたわ。
スープを飲み干し、はあとため息をつく私。院長と遅い夕飯を食べていました。
噂はやはり町の端にも聞こえてきます。でも、悪役令嬢の私が、妹が婚約者のはずが、無理やりその座を奪い取ったなどのうわさを聞いて、私の怒りは頂点に達したのです。
外聞がわるいのはわかったがそうきたかという。
「……ひどすぎますわ!」
「これはさすがに……」
院長が私が泣くのを見て、ひどいですねと小さくつぶやきます。
長い金の髪、青い瞳はどこか王太子殿下には似ていました。中身は全く違いますけど、本当にひどいと何度も繰り返す院長。
「ジル、あなたは復讐したいですか?」
「……さすがにひどすぎますわ、私は妹にいじわるなんてしてませんし、あの子が私をいつもいじめてましたのよ! 大切なものはなんでも奪われたのですわ」
お姉さまのなになにがほしいという言葉でいつもあの子に大切なものを譲らされ、そして今度は私が悪者ですか! 怒りが頂点に達した私を見て、なら少し考えましょうとガルが笑ったとき、少し怖いものを私は感じたのでありました……。
「……これは一体」
「中々大変でしたよ」
にっこりと笑うガルガンチュア、そして目の前には土下座する妹と王太子殿下、いえ元ですか。
数日後、この二人に謝罪させて気がすみます? とにっこりとガルが笑い、二人は修道院で私に謝り土下座の姿がありましたわ。
あらもう出産されたのですね、お腹がひっこんでますわ。
「……そして、ジルにこれから危害を加えるなら、妹さんといえども容赦をしませんよ、そうですね、レオ……」
「わかりましたわ、申し訳ありませんわ!」
「おじ上、申し訳ありませんでした。ジル悪かった、私が悪かった!」
二人が青白い顔でこちらをまた土下座しました。
私がおろおろしていると、ガルが事情を説明してくれます。ガルは陛下の弟君、幼い時にお母さまが亡くなり、世を儚み、出家をされたようですが、二人の悪行を聞いて陛下に直談判して下ってここにいたるそうです。
「レオ……」
「申し訳ありませんわ! お姉さまは悪役令嬢なんかではありませんわ、私が悪役令嬢ですの、お姉さまのものを何でも欲しがる私がすべて悪いんですわ、申し訳ありませんお姉さま」
妹が青い顔でまた頭を床について平伏します。
その呪文なんですの? レオって。
土下座くらいでと思いましたが、私は許すことにしました。
ばかばかしくなったのですわ。
そして……。
「まあ、赤ん坊がが王太子殿下の本当のお子ではなかったのですの!」
「ああ、レオナルドの子だったのはわかっていたからね」
数か月後、妹の子が、王太子殿下のお子ではなかったことが判明、妹は子と一緒に放逐されるところを、私が手を差し伸べ、町で親子一緒に暮らすことになりましたわ。レオナルドというのはうちの従者で、できていたとは。
さすがに気の毒になりましたの。
そして、外聞が悪いのか王太子殿下は廃嫡されるようです。
ガルはお茶を飲みつつ、意外に早くにわかりましたねと涼しい顔で言っています。
割とこの人怖いですわ。
「……ジル、気が済みましたか?」
「ええ」
「それならよかった」
子供たちが遊ぼうと声をかけてきます。
両親におとがめはいきましたが、私は免れましたわ。さすがにね……。
今日もガルとお茶を飲みながら、私は子供たちの面倒を見ます。これはこれで楽しい生活ですわ。
ガルが笑うと私もうれしい、やっと何か胸のつかえがとれたようでした…。
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