プロローグ おいでませ異世界
プロローグはかなり短く、第一話は登場人物の紹介がメインになります。
織田家の人間は大体知ってるという方は、さらっと流し読みでOKです。
「おお、勇者召喚は成功だ!」
「師よ! とうとうやりましたね!」
暗い部屋の中で、白いフードを被った五人組が魔法陣に手を伸ばしていた。
もう何十回目になるか分からない失敗を繰り返し、ようやく異世界から勇者たちを召喚することに成功したのだ。
「これで、我が国は救われる……。さあ、出でよ、英霊たちよ!」
もうもうと立ち込める煙と、黒をベースにした紫のオーラ。
尋常ではない雰囲気を漂わせた男を先頭に、歴戦の猛者たちが次々と魔法陣の上に降り立っていく。
「間違い無い、希代の英雄だ!」
「……喧しい。耳に響く」
「あっ……ひぃ……も、も、うしわけ、ござっ」
中央に立つ、ひと際眼光の鋭い男がそう言えば。五人組は金縛りにあったかのような錯覚を覚えた。
その様を見て何を思ったのか、漆黒のオーラを放つ男は手を翳しながら言う。
「よい、許す」
「は、ははっ。ありがたき幸せ」
召喚した側が上位者になるように設定して行ったはずの儀式だが、男には全く効いた様子が無い。むしろ召喚者たちは、自然と膝を折って跪いてしまった。
――どれほど格が違うのか。
無駄口を叩けばすぐにでも打ち首にされそうな予感を覚えながら、男たちは次の言葉を待った。
「ふむ、今回は……十五人か」
「あ、あの?」
「こちらの話だ。……まずは天幕か会議室を用意しろ。全員分の宿泊施設と今日の夕餉。それから提案書だ」
「提案書……とは?」
宮廷魔術師長は何を言われているのかが分からず、呆けた顔をしてしまったのだが。
話が遅い彼にイラついたのか、召喚者たちのリーダーはイラついたように答える。
「たわけが、何の目的で我らを召喚したのか。我らという戦力に対し、そちらが出せる見返りは何か。その提案を持ってこいと言っている」
そんなことを言われるとは思わなかった男たちは思考を止めたが。
何はともあれ、宮廷魔術師たちには従う以外の道はなかった。
◇
「異世界召喚、だな」
織田信長。言わずと知れた戦国のスーパースターは、重苦しい口調でそう言い。家臣たちの顔を見渡してから――がっくりと肩を落とした。
「まただよ。まーた異世界だよ。もう何度目だ?」
次の瞬間。もの凄くやるせなさそうで、怠そうに、間延びした口調で続けた。
そう、彼らこそは、日本で最も有名な武士たち。
有名だからこそ後世の人から本の題材にされ、ゲームにされ、おもちゃにされている悲しい男たちである。
もうタイムスリッパーを送り込まれた数が五百を超えており。
異世界召喚も毎月のようにされている。
――また異世界なのか。もう、いい加減にしてほしい。
魔王と呼ばれた男とその配下たちからは、どこか哀愁が漂っていた。
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