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詩集 泥中の花のように  作者: 真朱マロ
是々非々 日々はこれで良し
9/10

気がつくと春でした

気がつくと 春でした


泣き出しそうなほど暗い

みぞれを呼ぶ曇天は 消えていました


薄紅色の桜は はらはらと舞い散り

光を放つような菜の花は 手を振りながら

いたずら好きな風に翻弄され 休むことなく踊っています


ほんの少し 外に出るのを躊躇しているうちに

若葉色のクローバーの群れと 幸せの四つ葉の影から

シロツメクサが顔を出すような とてもあざやかな春でした


そういえば 昨年の秋頃は

春になれば 喜びに満ちた日常が戻ってくると

そんな夢のようなことを 語っていたような気がします


春が来て 夏が来て 秋が過ぎるころには

くだらない話に けらけらと笑ってみたり

ちょっとしたつまづきに 少しすねてみたり

そんな何でもないようなことが日常に戻ると 訳もなく信じていました


なぜか なんて誰に聞けば良いのかわかりませんが

今はまだ 目に見えてくるものも 耳に入ってくるものも

色鮮やかな春には似つかわしくない 影の色をしているみたいで


深く 深く 思い切り 息を吐き出して

この 訳もなく湧き出す不安も 溜息に変えてしまえば

考えてしまうばかりの私も 花のように笑えるでしょうか


どれほど思い悩んでも 足りないけれど

気が付くと 美しく色彩に満ちた春でした

 

今日 私の目の前に咲く 春の花は色鮮やかで

見上げる空は どこまでも広がる透明な青なのです

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