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ドングリ
下を向いて歩いてみました
特に 悲しい事があった訳じゃなくて
別に 変わった事があったわけでもなくて
ただ ドングリを拾おうと誘われたのです
強い風に揺さぶられ
コロコロと転がり落ちるドングリは
木の葉の陰でもツヤツヤと輝いていました
手のひらより小さくとも 一つの実りの秋で
鮮やかな葉が朽ちるのも 一つの美しい秋で
集めても集めてもあふれる 袋いっぱいの秋で
無心で無欲な収集に夢中になって
いつのまにか日々のアレコレも忘れてしまうのです
そういえば
上ばかり見ているときは つまずくばかりで
前ばかり見ているときは 通り過ぎるばかりで
こぼれ落ちるのは ため息や 涙ばかりだった気がするし
今は 下ばかり見ているのに 笑い声があふれるばかりで
おかしくて おかしくて 笑うのが止まらなくなってしまい
それを 全部全部 秋のせいにしてしまうのも笑うしかなくて
ただ ドングリを拾おうと誘われただけなのに
それだけで今年の秋は 特別に美しい秋なのです