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詩集 泥中の花のように  作者: 真朱マロ
「届け、言葉の力。」令和元年台風19号被害支援プロジェクト
1/10

泥中の花

激しい雨が降りました

まるで 怒りを叩きつけるように


激しい風が吹きました

そのまま 嘆きを吐き出すように


真っ暗な雲が覆う空は

終わりの見えない嵐 そのもので


山からあふれだした水は泥を含み

海から迫りくる波はすべてを奪い


なすすべもなく震えることしかできず

ああ これが恐ろしいということなのだと

鈍く麻痺した心もどこか遠くにあるようで

まばたきもせず あるがままを見つめるばかりでした


濡れた身体は震え続け

やっと訪れた雨上がりにさえ

眼差しはぬかるんだ地面に落ちて

虹を見つけることができないのです


昨日まで庭に咲いていた花は

ひとつ残らず茎が無残に折られ

泥水に薄紅色の花びらを散らしていました


もしも この花がスイレンだったなら

泥の中でも背を伸ばし 美しく咲いていたでしょうか?


地に伏し 折れ 埋もれるように

無残に散り 枯れ果てる事はなかったでしょうか?


湧き上がる感情に 乾いた涙に

悲しみとか 絶望とか 名前をつけるのは簡単でしょう


幾日も 幾日も経ちました

なにひとつ 傷は癒えていませんでした

こころの傷は 簡単にふさがったりしないのです


それでも 花は生きていました

枯れることなく 根を張っていたのです


折れ曲がった茎の付け根から

ひっそりと新たな芽が顔を出し

カサついて覆う 泥の皮を破るように

まっすぐに まっすぐに 背を伸ばしていました


淡々と 淡々と 繰り返す生き様は

泥の中に沈んでも一筋の希望に似て美しく


きっといつか この茎の先にも

新芽が出て 葉が茂り 蕾が生まれ 花が咲き

実になるために朽ちていき 多くの種を生むのでしょう


種を植えたら こころが動くでしょうか

嬉しいとか 楽しいとか よくわからないけど

薄紅色の花々が咲く未来が来るならば きっと笑える気がするのです

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