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初めまして、お父さん!?

「は?」



開いた口が塞がらないとはこう言うことを示すのか。エルザの思考回路は完全にショートした。なにを今、言われたのかまったく理解できない。

聞き間違いでなければ、ハイルド公爵家のエルザ嬢と言っていた気がする。ミーネスがアートリィ伯爵の落胤なのは知っていたが、エルザはただの平民だった筈だ。乙女ゲームの中で登場しない名前もでないモブ。同姓同名の誰かと間違っている可能性がある。




それに、いきなりこんなキラキラした貴族様が来たら平民誰だって恐縮するだろう。現に普段は超おバカさんなミーネスでさえ怖がっている。顔を真っ青にしたエルザの代わりにミーネスが王子に叫けんだ。



「何かの間違いではないですか!?私たちはただの平民です!」



「いや、残念ながら嘘ではない。神託があったのだ。」



「し、神託?」



「神託は次元の守り人エルザ嬢と光の使い手ミーネス嬢を迎えにいけと」



(神託ぅぅー!?神様、貴方何してくれてんの!感謝した私が馬鹿じゃん!)



神託、つまり神様からの言伝てだ。エルザはその神様につい最近、平民にしてくれてありがとうと感謝したばかりだった。それを嘲笑うかのようなこの展開は酷いと思う。と言うか、次元の守り人とは何だ。乙女ゲームにはそんな用語は出てこなかった。





絶句しているミーネスとエルザの前に二人の男が出てきた。一人は乙女ゲームでも登場するミーネスの実の父親アートリィ伯爵だ。ミーネスに似た顔立ちの美丈夫でゲームで言われていた三十後半には見えない。だが、アートリィ伯爵の隣にいる男性はもはや論外。二十代前半にしか見えないほど、若々しい中性的な美貌を撒き散らしている。


エルザにとてもよく似た美貌を持つ男は馬車から降りてきた時からエルザを見つめていた。まるで愛しい人を見ているような、そんな目をしている。地べたに座ったままのエルザの前まで歩いてきた男は驚くことに膝を折って同じ目線をとった。明らかに高貴な出だちの貴族が平民に膝を折るなど前代未聞のことだ。

膝を折った男は震えていたエルザの手を両手で握りしめてきた。突然のことにエルザはビクッと体を震わせる。

混乱しているエルザに見目麗しい男は優しく微笑んだ。



(何故、手を握っているの?!)



「迎えにくるのが遅くなって済まなかった。私はレイズ・ハイルド、君の父親だ」



「う、嘘よ。」



「正確には私の姪に当たる。私の兄とその婚約者だったナディア王女が君の両親だ」



「違う、そんなことは」



(あり得ない・・・)



エルザの隣にいたミーネスも父親である伯爵と話をしているが、納得した顔をしていなかった。いきなり貴方は貴族です、なんて言われても簡単には信じられない。


確かに、ハイルド公爵家を継ぐはずたった長男のアレメンドは殺されていてその妻だったナディア王女も共に亡くなっているのは国内の誰でも知っている。


二人の乗る馬車が王都に続く道の橋に差し掛かるとき、何者かによって橋を爆破され馬車は崖の下に落ちた。落ちた所には湖に流れる激流の川が近くにあったが、幸い馬車は川には落ちなかった。だが、二人は見るも無惨な姿に変わり果て生存は望めない状態になっていた。さらに残酷だったのは二人と共に中に乗っていた筈のまだ五歳だった子供は馬車の中や周りをいくら捜索しても見当たらなかった。

一週間立っても見付からない子供はすでに亡くなっている可能性があると捜索は打ち切られた。




民から愛されていたナディア王女と

その夫のアレメンド、その子供の死はバーディラ王国全土を揺るがした。今でも王族の埋葬場に沢山の人が訪れている。



そんな二人の子供がエルザなど信じられる訳がない。エルザを育ててくれた女性は心優しい人で実の母のように育ててくれた。彼女はまだ幼い子供だったエルザを洗濯をしに行っていた川のほとりで見つけたと言っていた。高熱を出し今にも息絶えそうなエルザを急いで家に連れて帰り我が子にしたと。

その時に首にかかっていたペンダントの裏にエルザと掘られていたからエルザと名付けた。そのペンダントを今もなおエルザは首にかけている。



(桃太郎かって、ん・・・待てよ、川?)



よく考えると、崖に落ちた馬車、その近くにあった川、いなくなった子供、その川に通じる場所にいた子供。

辻褄が会いすぎではないだろうか。それにエルザと目の前にいる叔父だと言う公爵は顔立ちが似すぎている。他人の空似とはもう言うことができない。

エルザの頬にたらりとひ汗が流れた。こんな、ありえない奇跡なんて望んでない。



「君の持つ時空魔法はナディア王女しか持ち得ないものだった。それに君の首にかかっているペンダントは私が送ったものだ。君は正真正銘、王族であり公爵家の娘だ」



叔父と言うハイルド公爵はエルザに

トドメをさした。



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