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乙女ゲームのヒロインは超天然ドジっ子

今日も空は憎くなる程の快晴に見舞われている。雲ひとつないすみわたる青空を見上げると太陽が眩しい。



「暑い日がこれから続いていくのか~」



春も過ぎ夏が訪れようとしている今日この頃、ヒロインことミーネスの天然ドジっぷりが勢いを増していた。

もうすぐで15になると言うのに彼女は靴を左右反対で履く、服は裏表逆に着てしまうのだ。

・・・ドジからバカに昇格しようかと考えている。

けれど、何をしても可憐で美少女な所は変わらないので、ある意味化け物だ。



ドジっ子ミーネスはすでに光魔法を上級まで扱えるようになっていた。本来ならば乙女ゲームが始まる16歳で光魔法の上級に到達するが、なぜか進みが早い。

ヒロインのチート能力は炸裂している模様だ。

だが、ミーネスの光魔法の上達が早いと言うことは貴族に連れていかれるのが早くなるということ。

私の気も知らずにミーネスはできるようになった光魔法を見せてくる。









そんなある日、私はまた気づいてしまった。

「馬鹿と天才は紙一重」という言葉があるのだが、この言葉はミーネスのためにある言葉だと。




自分で治せる筈のミーネスは怪我をしたら私に治療させようとする。


「あんた自分で治せるでしょ」


と言ったら、いきなり大声で


「痛い~!!エル、死んじゃうよ!」

と泣きわめく。もちろん嘘泣きだが。

私が怪我をしたら真っ先に駆けつけて治癒魔法をかけてくれるのに。ミーネスの治癒魔法の高度は恐ろしくシミひとつ残らない。

天才の使い手と言える程の実力、そしてそれを上回る馬鹿さ・・・。



(ヒロイン、恐るべし)





「エルザ、何してるの?」



悶々と考えている時に突然、目の前から声がした。バッと勢いよく顔を上げると花が咲くような笑みを浮かべる茶髪碧眼の美少女が立っていた。

足音もなく歩くときの服が擦れる音もなにもなく突然、目の前に現れたのだ。

びっくりして何が悪い。心臓が止まるかと思った。



「どうやっていきなり現れたの!心臓に悪い!」



「え、心臓痛いの?!治したげる!」



「違う!そもそもあんたのせいでしょーが!」



胸に手を当てて苦しげに話しかけていたからなのか胸が痛いに繋がったらしい。いつから忍者になったのだろう、このヒロインは。


「びっくりしたのよ。いきなり目の前にいたから」



「あー、そう言うことか!それはね、こうするの!」



軽く睨みながら訴えた瞬間、ミーネスは姿を消した。いや、正確には見えないようにした。これは明らかに屈折という光の上級魔法だ。

けど、問題はそこではない。


ゲームの中で、屈折魔法を習得したヒロインはその状態で町中を歩いている時に一人の男性にぶつかる。

その男こその乙女ゲームのメインヒーローである王子で一目見ただけでヒロインが光魔法の使い手だと気づくのだ。

そこから始まるヒロインの貴族デビュー、そして舞台は学園へ・・・という感じだった。


(おとぎ話じゃあるまいし・・・よくあるシチュエーションすぎる。)



「ミーネス、今使ってる魔法って前から使ってた?」



「うん。使ってるよ?」



不思議そうに返ってくる返事にどこか嫌な予感がした。こめかみを押さえながら、聞いてみる。



「ミー、その魔法をしながら人とぶつかったりしてないよね?」



「あぁ!そういえばさっきぶつかってきた男の人がいたよ!金髪だったかな?」



魔法を解いて姿を現し笑顔で語るミーネスに私は絶句した。



「でね、その人が「君は光の使い手か?」っていきなり聞いてきたんだよ?うんって返事を返したら、また会おうだってさ。意味分かんないよねー?あれ、エル?」



ミーネスが手を目の前に翳さしたが、それどころではない。その金髪の男は正真正銘の王子様だ。その王子こそがヒロインの所謂、フラグである。そしてヒロインが連れていかれる原因だ。

ミーネスの肩を掴み勢いよく揺さぶった。



「ミーネス!!あんたってアホなの?!それとも馬鹿なの!?」



なぜ見知らぬ人に「うん」とか言ってるんだ。個人情報、ただもれではないか。馬鹿なのか、アホなのか。




「ミーネスの馬鹿!もう知らないんだから!もう私、私・・・ぐすっ」



泣きそうになりながら叫んだらミーネスは顔色を変えた。



「ごめんね!!私、またなにかやらかしたかな!?エル?」



普段の馬鹿さ加減からは想像できない慌てっぶりで私の周りをミーネスは走り回っている。



(目、回らないのか。ミー)



場違いにもそんなことを考えてしまうほどにミーネスは私の周りをうろうろしている。風で淡い茶髪が宙を舞い、上気する赤みがかった頬、コバルトブルーの双眸は少し潤み始めた。

私の周りはヒロインによって花畑が作られていた。美少女というだけでこの破壊力、恐ろしい。



「ミーの馬鹿。アホ。少しぐらい警戒しなさいよ、他人には!」



「エルがそう言うならそうする!」



任せてと自信満々で宣言するミーネスに呆れる。

ミーネスが光魔法の使い手とバレてしまった以上、どうすることもできない。光魔法の使い手はこの世界で片手で数えるほどしかいない。そのため、光魔法の使い手は重宝されて国に保護されるのが習わしだ。


その光魔法の使い手であるミーネスも例外ではない。

私はと言うと光と闇以外の五属性持ちで、一般的な土水火風と使い方がいまいちわからない時空というのを持っている。たぶん、平凡の筈だ。



ゲームの中のミーネスは16でメインヒーローに出会い、それを機に伯爵家に引き取られるのが本来のルート。

何度も言うが今の私たちは15歳である。そしてゲームの中のミーネスはここまでドジっ子ではなかった。


本物のミーネスは超ドジっ子であり、そのせいで物語が変化しているらしい。

ゲーム展開では確か一週間後に伯爵家の人がミーネスを迎えにくる筈だ。

ひとまずミーネスに何かある前に、作戦を立てよう。その場しのぎでもいいやつを。













そう思っていたエルザを嘲笑い、問題のゲーム展開は斜め上の結果をみせることになる。




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