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Libra Glass  作者: 辻くろひ
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Episode 8‐2

「は?未来から来た?」

 冗談を言ってるのかと一瞬本気で思ったが、言ったとうの本人の表情は真剣そのものに見える。

「信じがたいのも無理はないと思うけど、確かに私は今から6年後の未来からタイムリープしてきた」

 6年後……。現在が2034年であるから、このアスモという女は2040年から来たというのか。


「アスモさんの言ってることは本当のことだと思ってますです。実は去年、私が高等部1年生、アスモさんは2年生だったある夏の日に事は起こったのです。マスクをして登校してきたアスモさんが、ホームルーム前に突然私達を招集したのです。私達の前でマスクを外したアスモさんの顔はなんというか……大人の女性になっていたのです」

 バアルが当時のことを説明してくれた。


「つまり一気に老けたと?」

 アスモから無言の圧力を感じる。ちょっと言い方が悪かったか……。

「て、てか、お前が未来から来たっていうなら、元々こっちにいたお前とで二人の自分がいるってことになるのか?」

「いいえ、恐らくだけど、未来から跳んできたのは私の身体そのものではなく、2040年の私の状態、記憶や精神、身体の成長そのもののみだと思うの。つまり一年前の私は2040年の私に上書きされたことになるはず。だから私が二人存在することにはならない」

「『恐らく』って……お前はタイムマシンの仕組みをよく理解せずに使ってきたのか?」

 俺はアスモのやや曖昧な言い方に違和感を覚えた。

「アレを使って飛んできたのは私含めてまだ2人だけのはずだから……理論が実証されていたわけではないの」

「ふーん。まあその話を信じるとして、それで、お前は何のために未来から来たんだ?」

「良く訊いてくれたわ。それなんだけど、私のいた時間軸では2036年に全世界を敵にまわした日本によって第三次世界大戦が起こるの。日本の独自技術の新型兵器によって各国の政府、軍部司令塔は壊滅、だけどその後突然の日本消失事件によって終戦。世界はこの国にただ大きな爪痕を残されただけで荒廃した時代を辿ることになる。そしてこの歴史を自分のいいように変えようと目論む者が現れた。そう、日本が陰で開発してる、世界を地獄に陥れる兵器を自国の勝利の為に利用しようとしている国際テロリスト『アントライオン』……。私は彼を止めて、戦争も起こらない世界にするために未来から来た」


 にわかには信じられなかった。いきなり話が飛躍しすぎているし、日本消失とか言われても……。一体どこからツッコめばいいかわからない。

「第三次世界大戦とか急に言われてもな……お前らはこいつの話を全部信じているのか……?」

 俺はマモンやバアルのほうを向いて尋ねた。

「信じているわよ。友達だもの」

 マモンは即答だった。バアルも首を縦に振っている。

「そうか……まあお前が未来から来た事情は一応わかったよ。で、次の疑問なんだが、何故明翅野を脱走した?エトランゼが相手なら、むしろ学園のみんなで力を合わせて対抗した方が良かったんじゃないのか?」

「その『エトランゼ』っていう組織だけど、多分そっちが勝手に私のことをそう名付けて呼んでいるだけだと思う。私はある意味並行世界からの『異邦者』だからね」

「は?シファがつるんでる連中はどうなんだよ?」

「アイツはテロなんかと関係ない!!」

 マモンが急に大きな声を出したからびっくりした。

「アイツは……いいように利用されてるだけなんだわ……」

「よく考えてみてほしい。あの連中が本格的に活動し始めたのはつい先日のことなのよ。どうしてそれまで大人しく身を潜めていた組織のことを学園側が知っていたのかしら」

「それは……」

 正直俺にはよくわからなかった。

「あの組織は完全にイレギュラーな存在だと考えるべきだと思う。学園側からしてみてもね。話を戻すけど、私が一部の生徒だけを連れてあそこを脱走した理由。それは私の追ってる男が学園側に潜んでいると睨んだからなの」

「何故?」

「私のいた時間軸ではそもそも『明翅野学園』なんてものは存在しなかった。つまり、何者かが歴史を改変した結果生まれたのが貴方達のいた学園。だから私はタイムリープ後、信頼できる友達だけを連れて逃げてきた。あのまま学園にいたら間違いなく、私がタイムリープしてきたことがバレて捕まると思ったからね。まさかクロも学園にいたなんて思わなかったけど……」

 そうだ、引っかかっていたことを思い出した。この女、リスではなく俺のことをクロと呼んでいる。


「ちょっと待て、話の流れをぶった切って悪いが、なんかお前、コイツじゃなくてまるで俺のことをクロと呼んでいるように聞こえるんだが……」

「失礼。貴方には月浦星渡という名前が付けられていたんだったわね」

「何故、俺のことをクロと呼んだ?」

 まるでシファが幾度となく叫んでいた名前もリスではなく俺の方だったかのように……。


「それは貴方の本当の名前が『クロノス』だからよ」


 どういう……ことだ……?俺の本当の名前……?

「このことについては私と『こちら側』で少し認識が違うみたいだから、みんなを集めた上で説明しましょう。今から三年前に起こった神隠し事件について、ね」

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