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Libra Glass  作者: 辻くろひ
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Episode 8‐1

 ふと気が付くと、俺は知らない部屋のベッドの上にいた。

 横を見ると、俺の顔を見てぱあっと表情を輝かせた麟がそこにはいた。肩にはクロも乗っている。

「ほたるん!!」

 麟はぎゅうっと俺を抱きしめた。

「よかった!気が付いたんだねっ!」

 

 まだ意識が微妙にはっきりせず、俺の思考はぼんやりとしたままだ。麟がいるってことは……まさか俺、死んだのか……?

「ほたるん、まだボーっとしてるみたいだね。今ならキスしても……大丈夫だよね……」

 麟の唇が迫ってくる。

 その時だった。ガチャリと扉の開く音がし、誰かが部屋に入ってくる気配がした。

 麟は惜しそうな表情で元の体勢に戻る。そのせいで俺はドサッとベッドに再び倒れる形になった。その衝撃で意識がはっきりし、僅かに状況を飲み込んで驚愕する。


「え、麟!?お前、生きていたか!!」

「はわわわっ!?」

 俺が突然大きな声をあげたものだからか、部屋に入ってきた少女も、麟と一緒になってびっくりしていたようだった。少女は金髪ボブヘアのメイド服姿だった。


「あ、この子はバアルちゃん。ここでメイドさんをしてる子で、一応言っておくけどブロンドの堕天使とかいうのとは別人だからね」

「バアルと申しますです~。以後お見知りおきをです~」

 少女はぺこりと頭を下げた。

 バアルは水の入ったコップを俺に差し出してくれた。優しい子のようだ。俺は麟との話を進めた。


「自衛隊の基地でブロンドの堕天使に襲われたあの時、お前は俺を庇ってあのガキの光線の中に消えていったように見えたから……下手すりゃ死んでたんじゃないかと思ってた……」

「ボクは大丈夫だよほたるん。このとーり。あの時はむしろあの後のほうが危なかったかも……」

「あの後?一体何があったんだよ」

「うん。あのね。あの時ボクの防衛本能みたいなものが発動したみたいで、周囲の人達は『ボクが殺された』みたいなイメージを植え付けられたサイコハック状態になったみたいなの」

「サイコハック……?お前が得意なのって確かただの感知系魔法じゃ……」

 そういえば御剣先輩が『精神干渉系の能力は上級魔法』みたいなことをいつか言ってたような気もするが……。


「だから、防衛本能的なもので、たまたま発動しちゃったんだよぅ」

「簡単に言うと、トカゲが尻尾を自分で切って逃げるみたいなものか?」

「ま、まあそんな感じだと思ってもらっていいかな。精神的ショックみたいなものもセットだったから、あの場にいた人達はみんな気を失っちゃったみたい。それはブロンドの堕天使も例外ではなかった」

 それはつまり、あの暴れ牛みたいなサイコパス少女も気絶させたということか……麟、恐ろしい子。

「その後あいつはどうなったんだ?」

「透明人間に抱えられて姿を消したよ」

 透明人間……そのキーワードを聞いて真っ先に青コートの男が頭に浮かんだ。ついこの前の戦いでも最終的にあいつがブロンドの堕天使を気絶させ連れて行ったのだった。

「問題はその後……隠れてた自衛隊の人達が突然現れて、ボクは包囲されて銃を向けられたの。多分、あの騒ぎを起こしたのがボクだと勘違いされちゃったんじゃないかな……」

「何かされたのか?」

「ううん、あのね――」


「そこでアタシとレヴィアが助けに入ったって訳ね」

 いきなり部屋の扉を開け、マモンが入ってきて言い放った。あまりにも見計らったようなタイミングだったので、大方扉の前で盗み聞きでもしてたのだろう。というか……


「なんでお前がここに!?」

「そんなに驚くことでもないでしょ。ここは言わばアタシ達の家みたいな所なんだから。」

 そういえば俺はここが何処なのかを知らされていなかった。まさかテロリストのアジト……じゃないよな。


「お前たちって一体何者なんだ。エトランゼ……とは無関係なのか?」

「エトランゼ?何よそれ。アタシ達は元明翅野の生徒。ついでにここは『かすみ荘』っていう、とある廃校になった高校の学生寮よ」

「お前たちも明翅野の生徒だと!?」

 なら少なくとも見覚えくらいはあるはずだが、俺にはこんな奴等記憶にない。

「そう、一年前に脱走したの。結城の話によると、アンタ達は覚えてないみたいだけどね」


 脱走だと?俺も一度試みはしたが、あの学園は魔法で逃げ出せるようなものではないはずだが……。

 もしかしてあの氷のデカい龍に乗って飛んで出てきたのだろうか。


「とりあえず、結城とアタシの話をまとめるとこうよ。アンタ達はシファに襲われた。結城は月浦を庇おうとしてサイコハックを発動。その場にいた連中はみんな『結城が死んだ』という偽の記憶を植え付けられて気を失ったけど、結城に感知されなかった透明人間はそれを回避。そいつがシファを連れて行った。シファを追いかけて基地に乗り込んだアタシとレヴィアは一歩遅くシファと透明人間とはすれ違ったけど、勘違いで銃を向けられている結城を発見し救出。そして連れて逃げてきた。まあこんなところね」


「なるほど……なあ、もう一つ訊いてもいいか?」

 今の説明で麟がここにいる理由については納得がいった。

 だが、まだ色々わからないことだらけだ。その中でもまずハッキリさせておかなければならないことがある。テロリストでないなら、こいつらの実態は一体なんなのか。元明翅野の生徒ということらしいが……。


「なんでお前らは明翅野から脱走した?」

 またしても部屋の扉が開き、入ってきた人物が話に割って入るように答えた。


「それについては私から説明させてもらうわ」

 部屋に入ってきたのは亜麻色の長い髪の女だった。前髪が長く片目がすっぽりと隠れている。体格や落ち着いた表情からどうやら成人であることが伺える。


「私はアスモ。久しぶりね、クロ」


 は……?

 今この女、俺の肩の上に乗ってるリスに向かって挨拶したのか?いや、流れからして明らかに俺に対して言ったのだと思うが……。俺のことを『クロ』と呼んだ……?

 女は続けてこう言った。


「私は未来から来たの」

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