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Libra Glass  作者: 辻くろひ
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Episode 5‐2

 気を失っていたのは俺だけじゃなく、あの場にいた少女以外の全員らしい。謎の般若面少女は姿を消していた。怪我人の数が多く、まさに大惨事という光景だった。

 だが、正直俺にはそんなことどうでもよかった。麟がいない。そのことのほうが俺にとっては重大な問題だった。

 気を失う直前に見た光景。少女の攻撃から俺を庇い、光の中へ溶けていくように消えて行ったあの光景を俺は受け入れられなかった。まさか本当に消えちまったわけじゃないよな……?

 怪我人は救護班の人達に任せ、俺たち一同は手分けして麟を探していた。だが、結果から言って基地の敷地内では、麟は見つからなかった。



 「なんだ……これは……」

 御剣聳孤は基地の敷地内で、仲間たちと手分けして結城麟の捜索にあたっていた。

 だがその道中を彷徨う中で、目的のものとは違う予想外のものを見つけていた。

 破壊された柵を乗り越えた先にそれはあった。青白く光る像。それはまるで幽霊のホログラム映像のようだ。問題なのはその人物像。不思議なことにそれは、自身の姿と瓜二つに見える。その光を眺めていた時であった。脳に突然、情報が雪崩れ込んできたのだ。

 


 ――銀色の翼が見える。それは巨大な三角形をしている。戦闘機のように見えなくもない。

 その中心で自分は、縛り付けられているような形で固定されている。

 やがて空に向かい飛び立つ。まるで何かから逃げなければいけないような焦りを感じる。何故焦っているのかは理解できない。後ろを振り返ると、暗黒の闇が自分を飲み込もうと迫って来ていた。逃れられない――


 

 彼の脳内に流れてきた映像はそこで終わった。

「一体今の光景は……」

 彼は理解に苦しみながらも、その場を後にした。その場所のことは得体の知れない恐怖心のようなものから、皆に合流しても話そうとはしなかった。



「お前たちの話をまとめると、結城は光の中へ消えていった、ということでいいんだな」

 俺たちは神崎と合流し麟の件を報告していた。

「多分、あの変なお面付けた子供(ガキ)が連れ去ったんだ」

「月浦……その変なお面を付けた子供というやつについてだが……」

「何か情報があるのか!?」

「最近話題になっている『ブロンドの堕天使』というやつかもしれん」

 そういえばニュースでもそんなことを報道していたような気がする。あの青年隊員も呟いていた。

 

 神崎はテレビの電源を入れ、あるDVDを再生した。流れたのはニュースで流れていた映像だ。そこに映っていたのは確かに俺たちが襲撃を受けたあの子供の姿だった。子供は何やら学校の校庭のような場所で少年の首を片手で持ち上げている。そして金色のレーザービームのような光を手から放ち、少年の姿が溶けるように消えていった。映像はそこで終わっていた。

「ウソだろ……じゃあ、結城の奴も同じように――」


「違う!!」


 俺は紅が言おうとした言葉を遮るように叫んだ。麟がこの映像の少年と同じようにあの子供に消されてしまっただと……?そんなの信じられるわけがない。


「麟は連れ去られたんだ。おい神崎、麟は此処の敷地内にはもういない。外を探させてくれ」

「月浦、結城はもうこの世に……」

「ふざけんじゃねぇ!!いいから探させろつってんだよ!!」

「結城はもういない」

 俺は神崎のその言葉にブチ切れた。

「もういい、自分で探しに行く」

「待て、月浦!」

 神崎が叫ぶのも無視し、俺は部屋を出て行った。

 

 館内から出て行こうとすると、どうやら神崎から連絡を受けた隊員たちが、俺の行く先を阻むように立ちはだかった。

「少年、先生が戻って来いって言ってるみたいだよ」

 隊員は優しい口調で俺を諭すように呼びかけるが、俺は無視する。

 その時だった。後ろから気配がした。他の隊員が俺に掴みかかろうとしていたのだ。

「力ずくってわけですか」

 俺は急いで隊員の手を躱し、向き直る。

 するとまた後ろから気配がしたのでそれもしゃがんで躱す。向かいの隊員が下段回し蹴りをかまそうとしてくるので即座にジャンプし、後ろの隊員に意図せず頭突きが当たった。

「くっ、ガキが!!」

 

 わざとじゃなかったんだけどな。今ので余計に怒らせてしまったらしい。

 しかし多勢に無勢で分が悪い。それに魔法を使えない大人たち相手に魔法で応戦する気にはなれない。使うなとも言われているし。スピードは俺の方が上のようなので、なんとかなるだろうか。

 隊員たちは尚も手を緩めることなく、俺を打ち負かそうと連撃を仕掛けてくる。右から手が来たかと思うと次は左、そして後ろ、躱しきれない攻撃はガードして即座に距離をとる。回し蹴りがブンブンと飛んでくるからだ。歳下相手にまるで容赦がない。ならばこちらも全力で迎え討つまでだ。

 俺は片足を浮かした隊員の軸足に蹴りを入れ転ばせた。

「何っ!?」

 途端に他の隊員が仕掛けてくる。俺は蹴りの勢いを殺さないまま地面に手を付き、向かってきた隊員に両足蹴りを見舞わせた。蹴りは隊員の顎に見事に当たり一人を失神させることに成功させた。


「一体どこで覚えたのかな。子供にしてはレベルが高いじゃないか」

「あんたらのレベルが低いだけじゃないのか」

「何だと!?」


 挑発に乗ってまんまと勢いよく隊員たちが駆け込んでくる。

 向こうから運動エネルギーを持ってきてくれるので、俺はそれを利用してやればいい。

 俺は上半身を反らして攻撃を躱し、そのままバック転しつつ隊員の顎を狙って蹴りを入れた。そしてそのまま反対側から向かってきた隊員にオーバーヘッドキックを食らわせた。

 

 あらかた片が付いたかと思いきや、応援の隊員たちが更にやってくるようだ。これではキリがない。

 俺は麟を探さなきゃいけないんだ。

 俺はダッシュでその場から離れた。応援の隊員たちは逃げる俺を追って走って来ていた。大の大人と鬼ごっことは、これもまたなかなかにないシチュエーションである。俺は追いつかれることなくゲート目前まで走ってきた。


「止まりなさい!止まれ!!」


 俺が止まる様子のないことを察した門番の隊員は銃を構えた。なんだか相当ヤバいことになってる気がする。

 もう、こうなってはヤケだ。俺は黒剣のスカルを取り出し、門番の隊員が撃ってきた銃弾を防いだ。

 不思議と俺には銃弾の軌道が手に取るようにわかった。銃弾は俺の足下を狙っていたから、とりあえず足を止めようとしているのだろう。そこまでして俺のことを敷地内から出したくない理由もよくわからないが、まあいい。俺は高くジャンプし、閉鎖されているゲートを飛び越え外へ出た。


 俺は宛てもなく走り続け、やがて街中までやってきた。

 人が多いところまで出れば連中が追ってきたとしても、そう簡単には見つからないだろう。しかしノープランでここまで来てしまったが、これから一体どうしたものだろうか。

 とりあえず麟の手掛かりと、何処か身を置ける場所を探したいところである。

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