表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怨めしや勇者 化けて出てやる 休止中  作者: 存在感希薄な村人K
14/22

復讐要請 覚悟

「今日はよろしくお願いします。」


おおっ、シャリーが真面目だ。珍しい。


さて、遂にこの日が来た。これからフレールンへ向かうのだ。メンバーはシャリーと、、、


「おう、よろしくなお前さん」

「可愛いでやんすねぇ(ニヨニヨ)そこそこおっきいし…(ニヨニヨ)よろしくでやんす」


この男二人だ。

片方はがっしりした身体つきに加え、スキンヘッドにスカーフェイスというロマン溢れる奴だ。さらにシャリーの試験官をしたとか。コッツというらしい。


もう片方は、チャラそうな見た目のひょろっとしたにいちゃんだ。多分強いんだろうな。ずっとニヨニヨしているが。シャリーの体を舐め回すような視線を送りながら、ずーっとニヨニヨしているが!名前はポーンだ。


「おいお前、キモい。主に全てが。シャリーがドン引きしてるぞ?」

「えっ、いや別にそこまでドン引きは……してますけど…」

「いいじゃないですかちょっとくらい。なんですか兄貴、そのおんにゃのこの肩を持つんで?」

「うっさい。おら、そろそろ出るんだから待ってろ。全く…」


コッツはポーンの兄貴分らしい。なにやら言い合っているがどちらも笑ってるので大丈夫だろう。


その間に準備を終えたシャリーが、


「お待たせしました。じゃあ出発しましょうか」

「「おうよ」」







こんな感じで今3人(と一体)は歩いて(浮いて)いる。


…あのコッツって奴ヤバいな。スッゲェ強いじゃん。コッツはブーメランの二刀流(刀じゃないのに二‘刀’流とはこれいかに)で戦うらしい。ポーンはナイフと小斧だ。素早く動いて相手を翻弄するのが得意…というより好きらしい。


あれ?このパーティって意外とバランスいいんじゃね?


ポーンが飛び込んで撹乱して、コッツが的確にブーメランを当てていく。そしてシャリーが魔法でとどめを刺す…


うん、強い。俺いらないじゃん。


あっ…そうでした俺そもそも認識されないから連携できないんだったね。俺はソロオンリーかぁ…ちょっと残念だ。


「「「「グゥルァアアアア゛!!!!!‼︎!」」」」


うっせぇ!


魔物達の咆哮が聞こえた。位置は……上か!


さて、それではお2人のお手並み拝見といこうか。










結論から言おう。一瞬で終わった。


まぢでつおいなこいつら。


襲ってきたのはビッグバードの大群

コッツのデュアルブーメランで4体が斃され、軌道を変えて戻ってきたブーメランにまた2体が貫かれた。

ポーンは、ピョーーンっと跳び上がるとナイフで一閃。ポロポロと首が落ちてくる。なんとか生き残った奴も近くにいる奴から順に小斧で潰れてゆく。シャリーは、魔法で2体だけ。実力差がえげつない。


3人はパーティを組んでいるので、シャリーにも経験値ががっぽり入る。俺は入っていないが、死体から奪えるので問題ない。いやぁ、ウマウマ。何もしてないのに楽だわー。寄生最高!


はっはっは、もっと頑張って死体を量産してくれたまえ。


思考回路がクズだけど、パーティに入ってからシャリーが俺の存在を完全に忘れてるから寂しいんだよちくしょう!


そのまま3人(と寄生霊)の旅は続いた。


















「お父さん!!!!お母さん!!おばさん!おじいさん!長老、みんな…」

「おいおい、これは…人間の仕業か?」

「そうみたいでやんすねぇ。これやった奴、マジで許さん。」


シャリーの元気が目に見えて無くなっていく。コッツさんは冷静に分析している…が、拳を握り締めている。ポーンもいつもの語尾が消えて怒りを露わにしている。


そりゃそうだろうな。フレールンはひっどい状態だった。


『全員何度も斬りつけられて死んでるな…で、殺した後に火を放った、と。』


俺は犯人に対して憤慨しなかった。何でこんなことをしたのか、と怒らなかった。

普通に納得してしまった。あいつならこれくらいやりかねないと。俺を殺した勇者ならば、と。

さっき目を通した日記には、


勇者が現れ、精霊の護りを貸して貰えないかと頼みにきた。しかし、精霊の護りは我らでは取りに行けない上に隠し場所を明かす訳にもいかないのでお引き取り願った。


みたいな文章が書かれていた。これだけで大体予想がつく。

さらにもう一つ、死体だ。

俺の死体も、何度も斬りつけられていた。丁寧に燃やされていた。


確定だろう。あのクソ野郎…いつかぶち殺してやる。


問題はこの事実をシャリーに伝えるかどうかだ。

伝えた場合、シャリーは勇者に対して怒るだろう。復讐を決めてもおかしくない。だが、今までの勇者への信頼と板挟みになって心が壊れる可能性も否定できない。それに、俺の復讐について教える…つまり巻き込む事になるし、信じてもらえるとも思えない。

よし決めた。ここは隠しておく事にしよう。


シャリーはその場に蹲って泣いている。そっとしておいてやる方がよさそうだな。残りのお2人さんは調査を始めた。


「俺も、何かないか探してみるか。』


散策開始だ。でも何もないしなぁ…お2人は本棚から本を出しているが読めないようだ。あ、他のとこ行った。


ん?待てよ?何であの本棚だけ焼け残ってるんだ?

しかも読めないって、燃えてないはずなんだからありえないだろ。件の本を手にとって(念力で持ち上げて)みる。


『……!まさか、とは思ったが本当に…』


これは間違いない。

慣れ親しんだ文字、今までずっと使ってきた懐かしの【日本語】

そして、まさかこんな形で出会うとは思いもしなかった。


『お前も、【日本人】か?って、そうだよな』

-うん、僕はタグ。本名は 皆山 悟 だ-


この時俺は、死後初めて日本人に出会った。













-そんなこんなで僕はこの本の中に入って、日本人を待っていたのさ。まさかもう勇者の手にかけられた幽霊が来るとは思ってなかったけどね-


タグ--皆山 悟は、俺のような召喚者ではなく、転生者だったらしい。名前のタグはtha Almighty Godの頭文字をとって t a gとしたんだそうだ。

持っていたスキルは *全知全能 が、この本に入った時、消えてしまったようだ。


死因は、大量出血。

なんと俺と同じく勇者に殺され、同郷の日本人に 勇者に気を許すな という事を教える為に本に入って待っていたらしい。手遅れだったが。


『お前もまぁ、よく本に入って待とうなんて思ったよな。しかも意味なかったみたいだし。』

-意味はあるさ。君が僕の代わりに勇者に復讐してくれるんだから。-

『ん?俺は俺の復讐をするだけだぞ?』


なんで他人の復讐まで兼ねなきゃなんないんだよ。


-勿論対価は払うさ。僕は本の封印が解けた時点で昇天が決まるからね。-

『対価だと?何を払うつもりだ?』


もう死んでるくせに一体どうすると言うのか。というかこいつもうすぐ消えんの?


-ふふ、記憶だよ。-

『は?』


記憶?え、記憶?意味わかんない。どゆこと?


-僕は全知全能のスキルを失った。でも、その時得た知識は僕の記憶としてここにある。それを君にプレゼントしよう。そのかわり、タグとしても、勇者という存在に復讐して欲しい。-

『そういう事か。」

-理解してもらえたかな?-


俺はこの世界について殆ど何も知らない。その中で知識を得ることはなによりも大事だ。断る理由がない。

こいつ…だからさっきあんなに断言したのか。あ、なんかこいつ薄くなってきたな。もう、消えるんだな。勇者に殺されて、その事を伝えようと必死にこの世界に留まって…


しゃーなしか。


『……わかった。おっけーだ。この俺が、ゼロ--霊崎 零がお前の分も復讐してやる。お前の生きた証、記憶も俺が受け継ぐ。だから安らかに眠れ。』

-そう言ってくれると嬉しいよ。君に僕の復讐と記憶を託そう。受け取ってくれ-


ぽわ〜んと青白い光の玉が俺に向かって飛んできて……スルンッと中に入り込んできた。


その瞬間、頭の中に凄まじい量の情報が流れ込んでくる。


-ふふ、すごいだろう?僕の記憶の全てだ。うぐっっ、ぐぅ…ふぅ、もうそろそろ限界かな?復讐、頼んだよ-

『頼まれた。だからさっさと逝け。無駄に留まろうとしても苦しいだけなんだろう?眠い時は眠れ』

-眠らないさ、君の復讐、しっかりあの世で見ているよ。-

『そうか、じゃあ頑張んないとなぁ?』

-そうだね、納得しないうちに追いかけてきたら呪うから-

『そうならないようにやるさ』

-やってくれる-

『おう』

-うん-

『…長いな!限界の後長いな!』

-ははっ、もう行くさ。それじゃあね-

『ああ、じゃあな』

-最後の最後に話した相手が幽霊で、逆によかったのかもしれないなぁ…ありがとね、新しい、親友君---------


逝った。ったく、新しい親友、か。会って1時間もたってないぞ?勝手に決めやがって。同意くらいさせろ。


俺の親友との短過ぎる出会いは、俺に覚悟を決めさせた。


今までは迷っていた。人を殺しても、何も感じない自分に怯えていた。勇者を殺していいものなのか、決心がつかなかった。俺だけの復讐で、この世界の英雄を消す。出来るかわからなかった。


だけど、この復讐はゼロとタグの復讐だ。1人増えるだけで、変わるもんだな。


だから殺す。待っていろクズ。


怨めしや、勇者。化けて出てやる。


これが俺の、俺達の覚悟だ。お前が行ったんだから、ちゃんと見てろよ?


俺はタグの記憶を辿っていった。もう、完全に他の奴のことは忘れていた。人のこと言えねぇ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ