>幕間<シャリーちゃんサイドのお話_後編
おはよーございまーーーーす!
流石に叫ぶのはまずいので心の中に留めておく。
昨日はなんでかギルドから引き離されたんでしたっけ。あんな所何度も行きたくないから昨日で終わらせようと思ったのに…
ゼロさんは幽霊だから寝なくていいらしい。羨ましい!だって寝ない間何でもできるって事じゃないですか!きっと魔法の研究でもしてたんだろうなぁ…
あの人は隙間時間に魔法やスキルの練習をいきなり始めることがあるのだ。かなり怖い。
…
…
…っう!
「やっぱり汗くs…………………はい。」
言わせてくれなかった
仕方がないので中に入ると…
凄かった。もうとにかく活気があった。汗臭さがどうでもよくなるほどに。
みんながみんなニコニコと楽しそうに笑っている。私も冒険者になれば…ってさっきならないって言い切ったばかりなのに言えませんよね…
『これはすごいなぁ。人が多くて探しずらい、情報屋はどこだ?………………あそこか。』
ゼロさんは興味がすぐに失せたのかスタコラと歩いて(浮いて)ゆく
頑張って追いついたと思ったらすぐに指示が出た。ゼロさんは私以外の人とはお話ができないらしい。きっと方法があるはずだ!と意気込んでいたがその練習をしているところを見たこと、無いんですが…
全く、人使いが荒いなぁ!
………………………………………………。
勇者様はフレールン…私の故郷に向かったそうだ。2週間前という事だからもういないかもしれないけど…あってみたい。だって勇者様ですもん!
情報屋の人はバッヂをくれた。なんとこれを見せるだけで安くしてくれるらしい。しかも今回はタダ!
なんて優しい人なんだろう!
「それではいい旅を」
礼には礼を。私はちゃんと礼儀もある。
『おい、フレールンってなんだ?』
ゼロさんはフレールンすら知らないらしい。
いつもいつも私の事馬鹿にしてくる癖に馬鹿はそっちじゃ無いですか!
いきなりへんなものが目に入る。
至急求ム!
内容:精霊の里の調査 定員:3人 報酬:銀貨30枚 依頼主:精霊使いの会
詳細:最近いきなり精霊が呼べなくなりました。精霊が召喚出来ないと仕事が出来ません。何かあったはずです。誰かフレールンへ出向いて調べてきてください。よろしくお願いします。
は、はは…
なんだろうな、これ
帰らないと!早く、早く戻って確認しないと!あ…で、でも今は戻れないし…でも行かなきゃ!行かなきゃ!どうしよう!?どうやっていこう!?あああああああああああ!?お、落ち着かないと?
ふぅ〜、ふぅ〜!
えっと、個人的には帰れないから…っっ!!
これは依頼!これを受ければ!もう後には引けない!
「私、やっぱり冒険者になってきます!」
受付嬢さんに冒険者になりたい旨を伝えるとすぐに通してくれた。
この後、冒険者試験があるらしい。ああもう、こんなことしてる暇ないのに…!
ゼロさんは外で待っているらしい。しかも試験に武器が必要だと言って武器屋のナイフを盗んできてしまった。余計なお世話だ。その数秒の遅れで取り返しのつかない事になるかもしれないのに。
「おい、こっちだ。」
「はい、出来るだけ早くお願いします。」
「わかったわかった。さっきからそれしか言わねぇな?ほらついたぞ」
試験内容は実戦だ。部屋の中心で案内してくれた男と向き合う。
「今から始まるのは実戦試験だ。ルールは…」
「そんなことはどうでもいいので早く始めてください」
「一応規則なんだが…後なんでそんなに急いでる?」
「行きますよ?《アイシクルストライク》」
「っち!いきなりかよ!ルールくらい言わせろよな」
「まだまだぁ!《アイシクルストライク》」
無我夢中でアイシクルストライクを放つ。詠唱破棄が出来ていることなど気にしない
「なんでそんなにすぐクールタイムが終わるんだよ!クソが!一応自己紹介だ…俺はコッツだ、よろしくな喰らえぇ!」
男…コッツはどこからか取り出してブーメランを投げつけてくる。が、しゃがんで躱す
「一個とは限らんですぜぇ!?」
もう一つブーメランを取り出し、投擲。今度は足元を狙ってくる
「ふっっっ…!」
今度はしゃがんだまま跳ねて飛び越える。
かと思えば一つ目が飛んでくる。∞ループだ
ベキッという音が腕から体の内部に響く
躱しきれずに腕を折られた。気にしない。
「《アイシクルストライク》《アイシクルストライク》《アイシクルストライク》」
三連打で抵抗する。
しかし魔力が切れかけて3発目が不発に終わる。
「魔力切れかぁ!馬鹿みたいに魔法を乱打してくるからだこんちくしょう!」
ブーメランをナイフで捌く…事が出来るわけがない。
「ぐふっ」
腹に綺麗に決まった一撃の次は…
「あうぅっ」
足を纏めて払われてその場に転ぶ。
「ほら、チェックメイトだ」
喉元にブーメランが突きつけられる。
マケタ
「………………降参です」
これじゃあ故郷を見に行くことすらできない
「……ぐすっ…」
「何泣いてんだよ」
「だって負けたんだから不合格で、不合格だったら…」
「なーに言ってんだ。お前は合格だよ。あそこまでとんでもない魔法の才能を見せつけられて不合格じゃぁ、誰も納得しねぇだろうよ」
不合格…………不合格?え、ごうかく?不合格じゃ無くて?
「…え?ほんとぅに?ほんとにごうかくなんですか?」
「ほらほら立てよ。そうさ、合格だ………なぁ、お前冒険者にはならないって明言してただろ?臭い臭いってさ」
「あ、あれは、そのぅ、ごめんなさい…」
…聞かれていた。一人で勝手に話していたようにしか見えなかったでしょう…
「あぁあぁ、責めてるわけじゃないから。嫌ってるものにいきなりなろうとした事が不思議でさ、よかったら聞かせてくれよ?」
そんなことで、コッツさんに故郷の事を話すことになった。
「ほほぉ、なるほどねぇ?お前さんはあそこのでなんだな。それでアホみたいに慌ててたわけだ。」
「はい…でもコッツさんに合格を頂きましたのですぐにでも依頼を受けてきます!」
「ああ、お前さんのランクだと受けさせてもらえないかもしれんからこれ持ってけ」
え、なにそのクシャッとなった紙、
「へへ…こいつは俺からの紹介状だ。これでもBランク冒険者なんだぜ?」
「そんなにすごい紙ならもっと大事にしてくださいよ…」
冒険者にはランクがあり、下から G、F、E、D、C、B、A、Sに分かれている。かの有名な守護者4人もSランクの冒険者らしい。
Bランクって事は上から3番目、かなり強い。こんなものもらっていいのかな?
「ま、頑張れよ。俺も仕事の準備しなきゃな」
「分かりました。今日はありがとうございました!」
「おうよ」
コッツさんと別れ、ゼロさんのところに向かう
…っと、忘れてた
「このナイフ、返さないとね」